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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
カズンの眼鏡と聖剣装備実験
「よし。ルシウス様も来たことだし、本格的にトオンの飯マズ対策を話し合うとしよう」
す、と中指で黒縁眼鏡のブリッジを押し上げて仕切り直したのはカズンだ。
「カズン、その眼鏡ってヨシュアさんが着けてたやつだろ?」
以前彼が古書店二階の宿の部屋にいた頃はなかったはずだ。
アイシャの元婚約者クーツに扮したトオンの国王即位時に、謁見しに来た鮭の人の顔にあったと記憶している。
眼鏡のある今は、最初に出会った頃と比べると以前より切れ者っぽい印象がある。小道具の妙だ。
「元々僕の持ち物でな。アケロニアを出奔するときヨシュアに預けてたんだ。僕が戻るまで持ってろって言って」
「眼鏡なくて困らなかったの?」
「レンズに度は入っていないのだ。差別化のために装着してただけだし」
差別化? とトオンが首を傾げたので、カズンはユーグレンを見て示した。
「子供の頃は並んでると周りによく間違えられたんだ」
「確かに二人はよく似てるけど」
何も知らない者なら、二人が並んでいるところを見たら兄弟と思っただろう、というぐらい似ている。
カズンはアケロニア王国の先々王の末息子で、ユーグレンは現国王の息子で王太子だ。
二人は親戚で、歳はユーグレンのほうが数ヶ月上だそうだが、関係としてはカズンが大叔父にあたるという。
アケロニア王族は、色の濃い黒髪と黒目を持った、端正な顔立ちが特徴らしい。この二人も同じ男のトオンから見ても、なかなかの男前。
違いがあるとすれば、カズンは中肉中背の標準的な体型だが、ユーグレンはそれより一回り以上体格が大きく、長身なことだろう。
どうもカズンはそんなユーグレンにややコンプレックスがあるようだ。再びこの旧カーナ王国に合流して以降、何かと羨ましげな言動をしているのをトオンもアイシャも見ている。
まず、カズンはトオンに自分のステータスを宙に表示させるよう指示した。
すべての数値を出す必要はない。飯マズ部分が表記されている部分だけだ。
「飯マズ解除のやり方は判明している。カーナ姫から僕が賜った聖剣をだな、トオンに持たせると……」
カズンは肩から提げていた革のホルダーから魚切り包丁を取り出した。どこからどう見ても柳葉包丁だが、ハイドワーフの名工が打った間違いない聖剣である。
「いいか、トオンのステータスを見てくれ。今は飯マズとあるが、僕の聖剣を持たせると」
「!?」
「嘘、あんなに何をしても変わらなかったのに……」
『飯マズ:母親の聖女エイリーから継承したバッドステータス。調理した料理が激マズになる(味付け時に付与)』
ステータス備考欄の飯マズ表記はそのままだったが、新たに付記が追加されていた。
『※現在、聖剣の装備効果により解除』
おお、と皆がどよめいた。
「カズン、トオン! どういうこと? いつこれがわかったの!?」
アイシャは隣のトオンに詰め寄った。自分が知らないうちに、いつこんな対策が判明したというのか。
あの飯マズ実験の日々の不毛な試練は何だったのか!
「落ち着け、アイシャ。まだ実験の最中だ。本当に飯マズが解除されてるかどうか、確かめてみようじゃないか」
言って、カズンはトオンから魚切り包丁を受け取ると、再び革のホルダーに収めた後でトオンにホルダーごと渡して肩から提げさせた。
――これで聖剣を装備したことになる。
次に、厨房からコーヒーセットを持って来た。
豆の入った保存瓶とコーヒーミル、ドリップ用の布とコーヒーポット。それに人数分のマグカップをお盆ごと。
それを見た皆がまたどよめいた。
「ま、まさかカズン……」
ユーグレンが声を震わせている。
「うむ。この状態でトオンに再びコーヒーを淹れさせる。聖剣効果で飯マズ解除されていたら、ふつうに飲めるコーヒーになるはずだ!」
ステータスは裏切らない、とドヤ顔するカズンに、皆は不安げな顔になった。
何せ飯マズコーヒーを先に飲んだ後なのだ。確かに宙に表示されたトオンのステータスでは飯マズ解除状態だったが……
す、と中指で黒縁眼鏡のブリッジを押し上げて仕切り直したのはカズンだ。
「カズン、その眼鏡ってヨシュアさんが着けてたやつだろ?」
以前彼が古書店二階の宿の部屋にいた頃はなかったはずだ。
アイシャの元婚約者クーツに扮したトオンの国王即位時に、謁見しに来た鮭の人の顔にあったと記憶している。
眼鏡のある今は、最初に出会った頃と比べると以前より切れ者っぽい印象がある。小道具の妙だ。
「元々僕の持ち物でな。アケロニアを出奔するときヨシュアに預けてたんだ。僕が戻るまで持ってろって言って」
「眼鏡なくて困らなかったの?」
「レンズに度は入っていないのだ。差別化のために装着してただけだし」
差別化? とトオンが首を傾げたので、カズンはユーグレンを見て示した。
「子供の頃は並んでると周りによく間違えられたんだ」
「確かに二人はよく似てるけど」
何も知らない者なら、二人が並んでいるところを見たら兄弟と思っただろう、というぐらい似ている。
カズンはアケロニア王国の先々王の末息子で、ユーグレンは現国王の息子で王太子だ。
二人は親戚で、歳はユーグレンのほうが数ヶ月上だそうだが、関係としてはカズンが大叔父にあたるという。
アケロニア王族は、色の濃い黒髪と黒目を持った、端正な顔立ちが特徴らしい。この二人も同じ男のトオンから見ても、なかなかの男前。
違いがあるとすれば、カズンは中肉中背の標準的な体型だが、ユーグレンはそれより一回り以上体格が大きく、長身なことだろう。
どうもカズンはそんなユーグレンにややコンプレックスがあるようだ。再びこの旧カーナ王国に合流して以降、何かと羨ましげな言動をしているのをトオンもアイシャも見ている。
まず、カズンはトオンに自分のステータスを宙に表示させるよう指示した。
すべての数値を出す必要はない。飯マズ部分が表記されている部分だけだ。
「飯マズ解除のやり方は判明している。カーナ姫から僕が賜った聖剣をだな、トオンに持たせると……」
カズンは肩から提げていた革のホルダーから魚切り包丁を取り出した。どこからどう見ても柳葉包丁だが、ハイドワーフの名工が打った間違いない聖剣である。
「いいか、トオンのステータスを見てくれ。今は飯マズとあるが、僕の聖剣を持たせると」
「!?」
「嘘、あんなに何をしても変わらなかったのに……」
『飯マズ:母親の聖女エイリーから継承したバッドステータス。調理した料理が激マズになる(味付け時に付与)』
ステータス備考欄の飯マズ表記はそのままだったが、新たに付記が追加されていた。
『※現在、聖剣の装備効果により解除』
おお、と皆がどよめいた。
「カズン、トオン! どういうこと? いつこれがわかったの!?」
アイシャは隣のトオンに詰め寄った。自分が知らないうちに、いつこんな対策が判明したというのか。
あの飯マズ実験の日々の不毛な試練は何だったのか!
「落ち着け、アイシャ。まだ実験の最中だ。本当に飯マズが解除されてるかどうか、確かめてみようじゃないか」
言って、カズンはトオンから魚切り包丁を受け取ると、再び革のホルダーに収めた後でトオンにホルダーごと渡して肩から提げさせた。
――これで聖剣を装備したことになる。
次に、厨房からコーヒーセットを持って来た。
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「ま、まさかカズン……」
ユーグレンが声を震わせている。
「うむ。この状態でトオンに再びコーヒーを淹れさせる。聖剣効果で飯マズ解除されていたら、ふつうに飲めるコーヒーになるはずだ!」
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