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夏休みは海で冒険なのだ(完結)

われ最強。そう思っていたかったのだ……

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 広場ではステータス鑑定が終わった子どもたちから、冒険者たち相手に攻撃や防御の訓練を始めていた。

「ぷぅ!(われも、われも訓練するー!)」
「ピーッ!(ぴ、ピアディ。待って、ほんと待って危ないよ!)」

 だが、ユキノがもふもふの前脚で捕まえるより、ピアディのほうが微妙に早かった。
 四つん這いのよちよち歩きなのに寸前でユキノの捕捉をかわして、子どもたちのもとに合流した。

「ピアディさま、あたしと対戦しよ!」
「ぷぅ(おっけーなのだ!)」

 まずは初心者の子ども同士で、今の実力を確認するため対戦することになった。

 ピアディの相手は就学前の五歳の女の子、金髪のツインテールとピンク色の瞳が可愛いサナちゃんだ。今日は若いパパと一緒に夏休み子ども冒険者教室に参加している。

 相手は子どもとはいえ、手のひらサイズのピアディよりはずっとずっと大きい。

「だがピアディ様は進化した種族ハイヒューマンだ。どんな攻撃が飛び出してくるかわからんぞ」
「皆、警戒を怠らぬように!」

 指導員の冒険者たちや保護者の皆さんが見守る中、対戦は開始した。

 じり、じり……と互いに少しずつ距離を詰めていく。
 サナちゃんは木の棒を武器に。
 ピアディは素手と素足のまま。

「ピュイッ(ピアディがんばれー。相手に軽く一発当てたら勝ちだよ!)」

 綿毛竜コットンドラゴンのユキノの声援が頼もしい。

 しかし、ここで問題が起きた。

 サナちゃんを敵として、ウルトラマリンのつぶらな瞳で睨んでいたピアディが、半透明の身体に玉のような汗をかき始めたのだ。
 そればかりか、ぶるぶると震え出してしまった。

「な、なんだ? ピアディ様の様子がおかしいぞ!?」
「ピーピッ!(ピアディ、どうしたの? 攻撃、攻撃だよ! 初級魔法なにか軽く、ほら!)」

「ぷぅ(ゆ、ユキノたんん……っ)」
「ピ!?(ピアディ、どうした!?)」

 そのままゆっくりと振り返ったピアディは、真っ青な瞳をうるうると涙で潤ませていた。

「ぷぅ(われ、魔法しらなかった)」
「ピャー!?(マジでー!?)」

「えーい、すきありー!」

 対戦相手の隙を逃さず、サナちゃんがぽこん、と軽く木の棒でピアディを打った。
 本当に軽く、ちょっと突っついたぐらいの力加減。

 その衝撃で、ピアディはこてっと仰向けにひっくり返り、柔らかなお腹がむき出しとなってしまった。

「そこまで! 勝者、東地区のサナちゃん!」
「わーい!」

 女の子サナちゃんはパパと勝利を喜び合ったが、負けたピアディはそれどころではない。
 ひっくり返ったままきゅう~と目を回してしまっていた。

「ピイイイイ!(ピアディー! ピアディ、死んじゃだめだー目を開けてー!)」


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