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夏休みは海で冒険なのだ(完結)

われが創られた日のこと

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 皆の見守る中、王様と王妃様が二機の〝ゆりかご〟を触りながら状態を確認している。

『やはりそれぞれ、あと一回が稼働の限界であるな』
『この透明な器を修復できる術者が見つかれば良かったのですが……』

 話を聞いていると、どうやら二人はそろそろ寿命が近いらしい。
 二人の間には後継ぎの王子が一人きり。このままでは、王子に何か危険があれば魚人族の血が途絶えてしまう。

 そこで思い出したのが、この古代から伝わる魔導具の〝ゆりかご〟だったようだ。
 死期の近い王妃様の年齢ではもはや新しい子どもを産むには体力が保たない。
 けれど〝ゆりかご〟を使えば、両親の魔力を注ぎ込めば子どもが創れる。

『しかし陛下。ゆりかごから赤ちゃんややこが生まれるまでには何十年とかかると聞いております。その頃にはわたくしたちはもう……』

 いない、と王妃様が悲しそうに呟いた。

『確かに子が生まれる頃、我らは既にいないだろう。だが王子も親戚たちも、民もいる。きっと寂しい思いをすることはないだろう』

 王様は不安に震える王妃様の肩を抱いて、一緒に手を〝ゆりかご〟に伸ばすよう促した。

 二人の手の平にはそれぞれ、王様は鉄色の、王妃様はオレンジがかった夕焼け色に光る魔力の塊が生まれた。
 二つの色の違う魔力を混ぜ合わせてから、そっと深い紺色の液体の入っていたほうの〝ゆりかご〟に触れさせる。魔力の塊はすーっと、〝ゆりかご〟の透明なガラスの中に入り込み、封入された。

 すると、深海のように暗かった〝ゆりかご〟の中には、キラキラと小さな光が無数に点滅し始めた。

 王様と王妃様はそれぞれ〝ゆりかご〟の球体を抱き締めた後で台座に戻すと、名残惜しそうに何度も祭壇を振り返りながらも祭殿の間を出ていくのだった。






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