異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
155 / 216
第三章 異世界転移の謎を解け!

俺、これまでのおさらいする

しおりを挟む
 夏が終わり、いよいよ秋に入った。

 大好きなスイカや枝豆の季節も終わり、秋の収穫期は忙しい。もなか村は米どころだからな。



 俺、御米田ユウキ二十八歳(独身)は日本の東北の奥地、もなか村から村ごと異世界転移してきた。
 村ごとといっても、うちの空ばあちゃん、親戚の村長と勉さんの三世帯四人しかいなかったのだが。

 転移先は異世界、円環大陸の北西部にあるアケロニア王国アルトレイ公領。――通称ど田舎領のど田舎村だった。

 転移してからいろいろあったなあ……まさかのばあちゃんがこの国の王族で大公令嬢だったこと。まだ子供の頃にダンジョン内に迷い込んでそのまま戦前の東北に転移してしまったそうなんだ。
 そもそも、もなか村とど田舎村はダンジョンと祠で次元が繋がっていて、かなり古い時代から互いの世界を行き来していた歴史があったようで。
 ど田舎村側のダンジョンが崩落して閉鎖されてからは、ど田舎村での行方不明者は出なくなっていたらしいが……

 親戚だった騎士団長と神殿神官が令嬢を追ってそのまま転移したはいいが、時間軸の捩れのせいで、ばあちゃんより年上だったのに年下の姿で転移してしまった。これも当時は大事件だったそうだ。
 この二人は片方はもなか村の村長になり、もう片方は足を悪くして生活保護を受けながらも、自分たちが異世界に帰還する術を模索し続けていた。

 そこに、仕事で失敗し女にも振られてションボリな俺が東京での勤め先を退職してUターン。
 何がきっかけになったものか、村ごと異世界転移して今に至る。

 今ではめんこい幼女のピナレラちゃん四歳に、訳あり美少年のユキリーン十四歳、それになぜか俺と同い年のはずの日本でとっくに事故死した従兄弟カズアキ十四歳まで合流して五人家族で仲良くやっている。



 最初に異世界転移してきたのは五月中旬あたり。
 今はもう夏も終わり九月も過ぎて十月に入った。俺たちはすっかりど田舎村に馴染んでいた。

 俺は王族で大公令嬢だったばあちゃんの孫ということで、ひとまず領主のブランチウッド男爵からど田舎村の村長役を任されている。
 やることといえば村の中の見回りと、男爵の仕事の手伝い、それに自分たちもなか村の農産物の手入れが主だ。

 これだけでも男爵から十分な報酬を貰っていたが、食べ盛り育ち盛りの子供たちも増えたことだし他にも収入の手段を増やしたいところだった。



 秋の東北といえば、――稲刈りである。

 村ごと転移してきたもなか村は、もう住民が一桁だけで俺たち三世帯しか住んでない廃村寸前のヤバヤバ村だった。

 俺たちが持ってる以外の田んぼや畑は隣町に移住した農家が通いで維持していたものだそうで……それを丸ごと転移でこっちの異世界に持ってきちまったものだから、転移後の俺たちはひたすら手入れと収穫に追われていた。
 もっとも、ど田舎村も農村だったから現地の村人たちに手伝ってもらって収穫物は保存や、男爵に頼んで販売できたのでロスは限りなく減らせたといっていい。

 話は戻すが稲刈りだ。一応もなか村には専用のコンバインがあった。
 コンバインは稲や麦の刈取・脱穀・選別の三つの機能を一つに合体させた農業機械をいう。田植え機やトラクターとよく混同されるが機械としては別物だ。
 自前で持ってたのは廃業した酒蔵のもなか酒造ぐらいだ。日本酒造りに使う酒米用だな。
 他は村が補助金を出して購入し、農家に貸し出していた。ばあちゃんも収穫期に借りてた口だ。

 もなか村には七台のコンバインが残っていたが、燃料のディーゼル軽油の残量が足りなくて動かせたのは二台のみ。
 軽油が切れたらもうコンバインは使えない。大抵の家電は異世界の魔石を使えば代替燃料になったが、残念ながらディーゼル軽油とは互換性がなかったようなのだ。惜しい。



 春に植えた稲は、異世界転移前のものだ。
 だが、転移後はど田舎村の川から引いた水ですくすくと育っていた。

 もなか村の固有品種ささみやびの稲刈りは九月末から十月頃まで。
 九月はまだ俺も慣れておらず大変だったがまだコンバインが使えたので楽だった。

 翌十月からはど田舎村で麦の収穫用に使ってた魔導具を米の稲穂用に改造してもらった。
 ベビーカーみたいな箱付きの手押し車で稲穂の実る田んぼを歩くと、稲穂を茎ごと刈り取って箱に収納していくものだった。
 当然ながらコンバインほどの馬力もなく、一度に刈り取れる量も限定的で、脱穀や選別はまた別の機械で行うことになる。

 こんな調子だからとてもじゃないが、カズアキ対策を考える暇がなかった。
 いつまた十四年前の日本に戻っちまうかと恐怖しながら、ひたすら稲刈りの日々だった。
 幸い、カズアキは俺や村人たちに混ざって収穫初体験ではしゃいでいて。まだまだ逆転移で戻りそうもなかったのだが……
 


 昼間はわかりづらいが、この稲がまた穂が実る前からよく光っていた。
 元からど田舎村そのものが魔力の豊かな土地で、そこにもなか村の米が合わさって相乗効果ですごいことになった。

 米はもちろん、精米するときに出る米糠こめぬかまですごかった。
 綿の布袋に包んで温泉でご婦人たちに使ってもらったら、顔の皺は伸びるし手足の染みも薄くなったと大絶賛だ。これは……売れるのでは!?

 ばあちゃんが作ってた糠床も増やしてみたら、糠漬けが美味すぎてヤバかった。
 風味も素晴らしく、保存もきくからと今では現地にあったピクルスなど酢の漬け物と一緒に、一気にど田舎領に広まったくらいだ。
 元々夏が短くて寒さの厳しい地域だから、糠床も傷みにくく扱いやすかったようだ。

 新米を収穫したら、御米田家の食卓はしばらく米主体になった。新米はそれだけでご馳走だからな。
 塩むすびに始まっておにぎり各種に、焼き飯や炒飯はもちろん、ちらし寿司に現地レシピのピラフやパエリヤも……

 もなか村に祀ってる祠に、元神官だったという村長が収穫した稲穂をお供えした。
 その後は村総出で何日も米料理でお祭り状態だった。

 ここに日本酒の最中もなかがあればなあと思った。
 やはり酒造りは頑張りたいところだ。




しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...