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第三章 異世界転移の謎を解け!
その頃、日本では~side 八十神の異世界回想1
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会社のある新橋に着いてもまだ八時前だった。
新橋や近くの銀座にも神社は様々あるが、そう焦ることもない。
サラリーマン街で昼はどこの飲食店も満員だが、朝は空いていて入りやすい店が多い。
新卒の頃から利用している喫茶店でモーニングを取ることにした。
トーストと茹で卵、ミニサラダ、ホットコーヒーのセットだ。以前は五百円ワンコインだったが今では値上げして六百円。時代の流れを感じる。
ぶ厚いトーストは半分にカットされ、こんがり焼けてバターが蕩けている。
この店はほんの少しだけ塩が振りかけられていて、その塩梅が絶妙だった。
店内に客の姿はまばらだ。空いていた窓際の席へ座り、次第に増えていく新橋の通りを眺める。
……う。ここ、よく御米田と来たとき座った席じゃないか。
というより、最初に同期入社の僕をこの店に誘ってきたのが御米田なのだ。
『俺、朝は米派だけどここのトーストがめちゃくちゃ美味くてさ!』
豪快に笑ってトーストにかぶりつき、案外器用に茹で卵を剥いていた姿が思い出される。
もっと早く、自分を思い出せていたら。
御米田とまた一緒にこの喫茶店に来ることもあっただろうに。
地球はなぜか、エネルギーが低い。
正確には人間のエネルギー、僕たちは魔力と呼ぶ力が低い。
というより、自分たちの持つ能力の発揮度が低いというほうがより正確か。
不思議な制限のある世界だ。特にこの日本という国に顕著だった。
今の僕の見たところ、自分の潜在能力の5%も使えていればいいところだ。
モーニングを食べ終えてもまだ出社まで時間がある。
コーヒーをお代わりして、しばし思索に耽ることにした。
そもそもの始まりは、百年後のアケロニア王族に勇者へと覚醒した者が出たことによる。
勇者は異世界では、この世界で言うところの救世主に近い特殊な存在だ。
黄金の魔力を持ち、邪や魔といった人類悪ともいえる邪悪を、本当の意味で救える者をそう呼ぶ。
彼は魔に落ちて自分の親を殺した仇を、多くの聖賢の助けを得て、大聖女や剣聖、異世界の僕・ジオライドの主君だったアケロニア王国の王らと共に打ち倒した。
問題は、倒したはずの魔が最後の悪足掻きで王を害そうとしたことだ。
だが、気づいた勇者が咄嗟に王を庇った。
そして倒れて、――そのまま目覚めず今も眠ったままだった。
王が勇者を連れてアケロニア王国に戻り、鑑定スキルの特級持ちが調査したところ、勇者の魂に欠けがあり、原因が前世の遺骨にあると判明した。
何か正体不明の邪気の影響があり、それが異世界で打ち倒した魔とおかしなリンクを起こしてしまったらしい。
遺骨を浄化すれば、勇者を昏睡させている主な原因が取り除けるだろうとの見立てが出た。
勇者が日本からの異世界転生者だとは、王家は早いうちに把握していた。
その前世の祖母にあたる人物が、かつてど田舎領と呼ばれるアルトレイ公領の僻地の村で行方不明になっていた大公令嬢クーティアだとも。
幼かった彼女が老年期に再び転移して戻ってきていたことも記録に残っていた。百年前の話である。
だが、勇者の前世の遺骨は日本に残してきたままだ。
じゃあどうするか? どうしようもない。
転移も転生もコントロールできない現象だ。意図的に異世界を行き来する魔法は存在しないのだ。
王家としても数少ない直系王族を失いたくはなかった。
親戚である王を始めとして、誰もが勇者を救うため頑張っていた。
そして何も手立てが見つからないまま四年が経過して。
このまま目覚めなければ、半年も経たずに勇者が死亡すると本人のステータスに表示されるようになった頃。
王が、誰にも相談せず独断で『夢見の術』を用いて勇者を救う道を探し続けていたと、我々側近は告白されることになった。
しかも、悪いことに。
『夢見を行う魔力を得るため、個人資産をほぼ使い果たした。このままでは私は遠からず国庫に手を付けてしまうだろう。……どうしたものか?』
王よ。その相談、いくら何でも遅すぎやしませんか。
夢見の術。
そのような魔法があること自体、我々側近は初耳だった。
聞けば、古のハイエルフが心の病を癒すために開発した魔法とのこと。
夢の世界を通じて、今いる世界とは別の世界へと飛べるのだという。
夢の中で起こした行動や、得た成果は夢から覚めたとき、現実に一部が反映されることがあるという。
この術を使って、王は勇者が倒れてからひたすら、勇者を救う手立てを探し続けたと言った。
勇者の仲間に、歌聖の称号持ちのウーパールーパーの魚人がいた。
王は即位のとき、多くの神人や聖剣の祝福を受けたが、そのとき下賜された大剣に祝福を込めた神人の一人だ。
その歌聖殿が夢見の術を得意としていた。
また王と親しく、勇者たちと戦っていた数年前はよく共に遊ぶ仲だったそうだ。
王はその頃に歌聖殿から夢見の術を習っていたという。
ところがこの夢見の術は、ハイエルフが開発しただけあって魔力をとにかく大量に消費する。
それこそ歌聖殿のような神人でなければ扱えないほどだ。
もちろん、優秀とはいえ王にもそこまでの魔力はない。
だが、なければ外部から調達すればいい。
代わりに、魔力源になる魔石や魔導具を、王族の個人資産でひたすら買い集めては夢見に注ぎ込んだ。
結果、四年で資金が尽きたと恐る恐る我々側近に白状したというわけで。
相談。相談が遅い……!
新橋や近くの銀座にも神社は様々あるが、そう焦ることもない。
サラリーマン街で昼はどこの飲食店も満員だが、朝は空いていて入りやすい店が多い。
新卒の頃から利用している喫茶店でモーニングを取ることにした。
トーストと茹で卵、ミニサラダ、ホットコーヒーのセットだ。以前は五百円ワンコインだったが今では値上げして六百円。時代の流れを感じる。
ぶ厚いトーストは半分にカットされ、こんがり焼けてバターが蕩けている。
この店はほんの少しだけ塩が振りかけられていて、その塩梅が絶妙だった。
店内に客の姿はまばらだ。空いていた窓際の席へ座り、次第に増えていく新橋の通りを眺める。
……う。ここ、よく御米田と来たとき座った席じゃないか。
というより、最初に同期入社の僕をこの店に誘ってきたのが御米田なのだ。
『俺、朝は米派だけどここのトーストがめちゃくちゃ美味くてさ!』
豪快に笑ってトーストにかぶりつき、案外器用に茹で卵を剥いていた姿が思い出される。
もっと早く、自分を思い出せていたら。
御米田とまた一緒にこの喫茶店に来ることもあっただろうに。
地球はなぜか、エネルギーが低い。
正確には人間のエネルギー、僕たちは魔力と呼ぶ力が低い。
というより、自分たちの持つ能力の発揮度が低いというほうがより正確か。
不思議な制限のある世界だ。特にこの日本という国に顕著だった。
今の僕の見たところ、自分の潜在能力の5%も使えていればいいところだ。
モーニングを食べ終えてもまだ出社まで時間がある。
コーヒーをお代わりして、しばし思索に耽ることにした。
そもそもの始まりは、百年後のアケロニア王族に勇者へと覚醒した者が出たことによる。
勇者は異世界では、この世界で言うところの救世主に近い特殊な存在だ。
黄金の魔力を持ち、邪や魔といった人類悪ともいえる邪悪を、本当の意味で救える者をそう呼ぶ。
彼は魔に落ちて自分の親を殺した仇を、多くの聖賢の助けを得て、大聖女や剣聖、異世界の僕・ジオライドの主君だったアケロニア王国の王らと共に打ち倒した。
問題は、倒したはずの魔が最後の悪足掻きで王を害そうとしたことだ。
だが、気づいた勇者が咄嗟に王を庇った。
そして倒れて、――そのまま目覚めず今も眠ったままだった。
王が勇者を連れてアケロニア王国に戻り、鑑定スキルの特級持ちが調査したところ、勇者の魂に欠けがあり、原因が前世の遺骨にあると判明した。
何か正体不明の邪気の影響があり、それが異世界で打ち倒した魔とおかしなリンクを起こしてしまったらしい。
遺骨を浄化すれば、勇者を昏睡させている主な原因が取り除けるだろうとの見立てが出た。
勇者が日本からの異世界転生者だとは、王家は早いうちに把握していた。
その前世の祖母にあたる人物が、かつてど田舎領と呼ばれるアルトレイ公領の僻地の村で行方不明になっていた大公令嬢クーティアだとも。
幼かった彼女が老年期に再び転移して戻ってきていたことも記録に残っていた。百年前の話である。
だが、勇者の前世の遺骨は日本に残してきたままだ。
じゃあどうするか? どうしようもない。
転移も転生もコントロールできない現象だ。意図的に異世界を行き来する魔法は存在しないのだ。
王家としても数少ない直系王族を失いたくはなかった。
親戚である王を始めとして、誰もが勇者を救うため頑張っていた。
そして何も手立てが見つからないまま四年が経過して。
このまま目覚めなければ、半年も経たずに勇者が死亡すると本人のステータスに表示されるようになった頃。
王が、誰にも相談せず独断で『夢見の術』を用いて勇者を救う道を探し続けていたと、我々側近は告白されることになった。
しかも、悪いことに。
『夢見を行う魔力を得るため、個人資産をほぼ使い果たした。このままでは私は遠からず国庫に手を付けてしまうだろう。……どうしたものか?』
王よ。その相談、いくら何でも遅すぎやしませんか。
夢見の術。
そのような魔法があること自体、我々側近は初耳だった。
聞けば、古のハイエルフが心の病を癒すために開発した魔法とのこと。
夢の世界を通じて、今いる世界とは別の世界へと飛べるのだという。
夢の中で起こした行動や、得た成果は夢から覚めたとき、現実に一部が反映されることがあるという。
この術を使って、王は勇者が倒れてからひたすら、勇者を救う手立てを探し続けたと言った。
勇者の仲間に、歌聖の称号持ちのウーパールーパーの魚人がいた。
王は即位のとき、多くの神人や聖剣の祝福を受けたが、そのとき下賜された大剣に祝福を込めた神人の一人だ。
その歌聖殿が夢見の術を得意としていた。
また王と親しく、勇者たちと戦っていた数年前はよく共に遊ぶ仲だったそうだ。
王はその頃に歌聖殿から夢見の術を習っていたという。
ところがこの夢見の術は、ハイエルフが開発しただけあって魔力をとにかく大量に消費する。
それこそ歌聖殿のような神人でなければ扱えないほどだ。
もちろん、優秀とはいえ王にもそこまでの魔力はない。
だが、なければ外部から調達すればいい。
代わりに、魔力源になる魔石や魔導具を、王族の個人資産でひたすら買い集めては夢見に注ぎ込んだ。
結果、四年で資金が尽きたと恐る恐る我々側近に白状したというわけで。
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