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第三章 異世界転移の謎を解け!
その頃、日本では~side 八十神の異世界回想4
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その後、王と竜殺しの君は二人だけで夜を徹して話し合いをしたようだ。
どんな話をしたかは定かでない。だが何か王に決意を促すものだったようだ。
翌日、憔悴しながらも毅然とした王は朝一で神殿へ向かい、神殿誓約の祈願を行った。
自分の人生で重要なものを世界の理に捧げ、報いとして力を引き出す儀式のことだ。
『愛を捨てるから勇者を救う力を我に』
王の決断を皆が知った。
最愛の君より勇者を取ったのだ。
竜殺しの君への重い感情を世界の理への生贄に捧げ、王はネックになっていた夢見のための莫大な魔力を得た。
王が孤立していた間も、勇者の仲間たちは彼を救うため研究を続けていたそうだ。
夢見の術も以前よりアップデートされていた。
彼らは王の誓約とその結果を見届けて、数日だけ滞在してすぐ帰国していった。
竜殺しの君はずっと王の側にいて話し合いをしていたようだが、何を話していたか王が教えてくれることはなかった……
ともあれ彼らからの情報提供を得て、王とジオライドは再び夢見を行った。
今の僕がいるのは、最新、恐らく最後になるだろう夢見の中だ。
以前の夢見と違うのは、睡眠時にしか行えなかった夢見を覚醒時に行えるようになったことだ。
このお陰で僕たちはアケロニア王国で通常の生活を送れるようになった。
また魔力消費を抑えるため、夢見の中の自分が本体を忘れる設定が必要だと教えられた。
この設定が肝だ。大まかな設定だけ行って、あとは夢見が自然と展開するよう委ねた方が結果が良いらしいのだ。
そもそも地球は魔力のない世界だ。
そのせいで人々のエネルギーが低く、王も夢の中で自分がアケロニア国王との認識を常には保てなかったと聞く。これはジオライド=僕も同じだ。
王とジオライドはそれぞれ同じ〝勇者が前世で暮らしていた異世界の日本〟に向かう基本設定をした。
目的はそれぞれ別だ。
王は親戚である勇者の前世を把握し、現世の勇者に影響を及ぼしている遺骨を確保する。
百年前の大公令嬢の日本での孫〝御米田ユウキ〟として。
僕は既にこれまでの夢見で、日本では御米田ユウキの会社の同僚〝八十神アキラ〟の存在を確立させていた。
自分は王のサポートだ。できるだけ近くにいて王が目的を果たせるよう動く。同じ会社に新卒で入社してからの数年が勝負となる。
行った設定は、『御米田ユウキを田舎のもなか村に帰省させること』。
最初は良かったんだ。同期だからすぐにそこそこ仲良くなった。
入社後も御米田は必ず年に数回もなか村に帰省して社内で土産を配っていたし。毎回同じもなか饅頭やもなか煎餅だった。
だが、あの野口穂波と付き合い初めてから、まったく帰省しなくなった。
そこでジオライドがあらかじめ設定していた目的が発動したんだろう。
「……やるべきことはやった、けど……」
そろそろお代わりしたコーヒーも残り少ない。カップの底に残る液体をじっと見つめて呟いた。
友人だったはずの御米田のコンペ企画を盗んで、女も奪った。けどそんな設定、ジオライドはしていなかった。
本当なら御米田と一緒に自分も休暇に合わせて、もなか村に行くはずだったんだ。そういう設定をしていた。
もなか村には龍脈という強い土地の力の流れが走っている。
その力を利用して、御米田と僕、二人が揃ってもなか村の御米田の祖母の家に到着したら、遺骨とともにアケロニア王国に転移する〝設定〟のはずだった。
それも百年前などではなく、今の王とジオライドのいる時代にだ。
そうしたら夢見の中の分身の御米田と僕は『夢から醒める』。夢見はそこで完了するはずだった。
なのに御米田が今いるのは百年前のアケロニア王国のど田舎村だ。
奴の祖母が本来の大公令嬢だった時期とも百年ずれている……
結果から見れば、あの野口穂波から御米田を引き剥がし、もなか村へ戻してアケロニア王国に転移するきっかけを作った。
時期のずれ以外の目的は果たしたことになるが……自分も御米田もあの女に振り回され過ぎた。
野口穂波か。お互い相性は良くなかったよな、御米田。彼女は邪や魔のような悪とまでは言えなかったが……
ジオライドや異世界を思い出した今ならわかる。
良い人間と関係を持てば大雑把ながら運が上がる。相手の魔力の良い影響を受けるからだ。
下がるなら、それはそもそも持つべきではなかった縁だ。あれはそういう女だったんだろう。
今までの御米田の恋愛遍歴を思い出してみる。とはいえ僕が知っているのは入社後の五年ほどのことだけだが。
基本的に誠実な男だから、どんな交際相手にでも真摯だ。
だが、心底から情熱を捧げたい相手ではなかったのだろう。続いても一年ほど。あの野口穂波が一番長かったか。
『俺、本気で誰かのこと好きになったことって、なくてさあ』
いつだったか、居酒屋で差し向かいで飲んだときそんなことを言っていた。
彼の本体にあたる王は、己の最愛への愛を生贄にした。恐らくその影響が御米田の恋愛観に反映されていると見た。
もっとも、そのせいで来るもの拒まず女を切らしたことはなかったようだが。
ジオライドや僕からしたら、頼むからあの麗しの竜殺しの君タイプはやめておけ、あれ以外なら誰でもいいという気持ちだ。
確かに美貌の人だったし悪人でもなかったが、勇者しか見ていない人を愛し続ける、それはとても辛いことだろう……
……王ももう自分を誤魔化すことはやめて、自分の本音に向き合うべきだ。
かといって本命と添い遂げることも難しいのが何とも。アケロニア王族は数が少ないのだから、正妃だけでなく側妃や愛妾もできるだけ多く娶って子孫を作って欲しいところだ。
「すいません。お勘定を」
僕は長い思索に一区切りつけて、冷めたコーヒーを飲み干して席を立った。
→八十神は退職前に鈴木と出くわした……
どんな話をしたかは定かでない。だが何か王に決意を促すものだったようだ。
翌日、憔悴しながらも毅然とした王は朝一で神殿へ向かい、神殿誓約の祈願を行った。
自分の人生で重要なものを世界の理に捧げ、報いとして力を引き出す儀式のことだ。
『愛を捨てるから勇者を救う力を我に』
王の決断を皆が知った。
最愛の君より勇者を取ったのだ。
竜殺しの君への重い感情を世界の理への生贄に捧げ、王はネックになっていた夢見のための莫大な魔力を得た。
王が孤立していた間も、勇者の仲間たちは彼を救うため研究を続けていたそうだ。
夢見の術も以前よりアップデートされていた。
彼らは王の誓約とその結果を見届けて、数日だけ滞在してすぐ帰国していった。
竜殺しの君はずっと王の側にいて話し合いをしていたようだが、何を話していたか王が教えてくれることはなかった……
ともあれ彼らからの情報提供を得て、王とジオライドは再び夢見を行った。
今の僕がいるのは、最新、恐らく最後になるだろう夢見の中だ。
以前の夢見と違うのは、睡眠時にしか行えなかった夢見を覚醒時に行えるようになったことだ。
このお陰で僕たちはアケロニア王国で通常の生活を送れるようになった。
また魔力消費を抑えるため、夢見の中の自分が本体を忘れる設定が必要だと教えられた。
この設定が肝だ。大まかな設定だけ行って、あとは夢見が自然と展開するよう委ねた方が結果が良いらしいのだ。
そもそも地球は魔力のない世界だ。
そのせいで人々のエネルギーが低く、王も夢の中で自分がアケロニア国王との認識を常には保てなかったと聞く。これはジオライド=僕も同じだ。
王とジオライドはそれぞれ同じ〝勇者が前世で暮らしていた異世界の日本〟に向かう基本設定をした。
目的はそれぞれ別だ。
王は親戚である勇者の前世を把握し、現世の勇者に影響を及ぼしている遺骨を確保する。
百年前の大公令嬢の日本での孫〝御米田ユウキ〟として。
僕は既にこれまでの夢見で、日本では御米田ユウキの会社の同僚〝八十神アキラ〟の存在を確立させていた。
自分は王のサポートだ。できるだけ近くにいて王が目的を果たせるよう動く。同じ会社に新卒で入社してからの数年が勝負となる。
行った設定は、『御米田ユウキを田舎のもなか村に帰省させること』。
最初は良かったんだ。同期だからすぐにそこそこ仲良くなった。
入社後も御米田は必ず年に数回もなか村に帰省して社内で土産を配っていたし。毎回同じもなか饅頭やもなか煎餅だった。
だが、あの野口穂波と付き合い初めてから、まったく帰省しなくなった。
そこでジオライドがあらかじめ設定していた目的が発動したんだろう。
「……やるべきことはやった、けど……」
そろそろお代わりしたコーヒーも残り少ない。カップの底に残る液体をじっと見つめて呟いた。
友人だったはずの御米田のコンペ企画を盗んで、女も奪った。けどそんな設定、ジオライドはしていなかった。
本当なら御米田と一緒に自分も休暇に合わせて、もなか村に行くはずだったんだ。そういう設定をしていた。
もなか村には龍脈という強い土地の力の流れが走っている。
その力を利用して、御米田と僕、二人が揃ってもなか村の御米田の祖母の家に到着したら、遺骨とともにアケロニア王国に転移する〝設定〟のはずだった。
それも百年前などではなく、今の王とジオライドのいる時代にだ。
そうしたら夢見の中の分身の御米田と僕は『夢から醒める』。夢見はそこで完了するはずだった。
なのに御米田が今いるのは百年前のアケロニア王国のど田舎村だ。
奴の祖母が本来の大公令嬢だった時期とも百年ずれている……
結果から見れば、あの野口穂波から御米田を引き剥がし、もなか村へ戻してアケロニア王国に転移するきっかけを作った。
時期のずれ以外の目的は果たしたことになるが……自分も御米田もあの女に振り回され過ぎた。
野口穂波か。お互い相性は良くなかったよな、御米田。彼女は邪や魔のような悪とまでは言えなかったが……
ジオライドや異世界を思い出した今ならわかる。
良い人間と関係を持てば大雑把ながら運が上がる。相手の魔力の良い影響を受けるからだ。
下がるなら、それはそもそも持つべきではなかった縁だ。あれはそういう女だったんだろう。
今までの御米田の恋愛遍歴を思い出してみる。とはいえ僕が知っているのは入社後の五年ほどのことだけだが。
基本的に誠実な男だから、どんな交際相手にでも真摯だ。
だが、心底から情熱を捧げたい相手ではなかったのだろう。続いても一年ほど。あの野口穂波が一番長かったか。
『俺、本気で誰かのこと好きになったことって、なくてさあ』
いつだったか、居酒屋で差し向かいで飲んだときそんなことを言っていた。
彼の本体にあたる王は、己の最愛への愛を生贄にした。恐らくその影響が御米田の恋愛観に反映されていると見た。
もっとも、そのせいで来るもの拒まず女を切らしたことはなかったようだが。
ジオライドや僕からしたら、頼むからあの麗しの竜殺しの君タイプはやめておけ、あれ以外なら誰でもいいという気持ちだ。
確かに美貌の人だったし悪人でもなかったが、勇者しか見ていない人を愛し続ける、それはとても辛いことだろう……
……王ももう自分を誤魔化すことはやめて、自分の本音に向き合うべきだ。
かといって本命と添い遂げることも難しいのが何とも。アケロニア王族は数が少ないのだから、正妃だけでなく側妃や愛妾もできるだけ多く娶って子孫を作って欲しいところだ。
「すいません。お勘定を」
僕は長い思索に一区切りつけて、冷めたコーヒーを飲み干して席を立った。
→八十神は退職前に鈴木と出くわした……
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