異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

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第三章 異世界転移の謎を解け!

side 王女様と男爵家の三男1

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 わたくしはグレイシア・アケロニア。

 アケロニア王国の若き国王の二つ年上の姉、先王の王女である。現在は王姉おうし殿下と呼ばれることが多い。

 数年前に王都の学園を卒業した、まだ二十歳そこそこの小娘だが王族には違いない。親や弟からの「結婚しろ」猛勢を交わしつつも日々謙虚に生きておる。

「グレイシア先輩。私、近衛騎士辞めますので後はよろしく頼みますね」
「は? お前、研修期間が終わったばかりだろう。なにを馬鹿なことを申すか」

 ある日、王族の近衛騎士のリースト男爵令息ユカリオンが辞表を提出してきた。
 この男はわたくしの学園時代の後輩でもある。今年学園を卒業して、優秀だったから近衛の団長が近衛騎士に引き抜いた男だ。

 青みがかった銀髪に 湖面の水色ティールカラーの瞳を持つ、麗しの美貌の青年だ。
 まあこの一族は皆ほとんど同じ色味と容貌で王宮の各部署や騎士団にもいるから、いい加減見慣れた顔である。わたくしの可愛い後輩令嬢もこの顔だったのでな。

 背丈は成人男子の平均ぐらいだが、とにかく強い。魔法剣士だが素手でも脚でも戦えるし、頭のキレも良い。大変便利な男ではあるが……

「おい待て、お前まだ近衛騎士になって間もないだろうが」

 まだ十八歳の優秀な魔法剣士を慌てて引き留めようと理由を聞いて驚いた。
 ユカリオンの可愛がっている末の弟ユキリーンが行方不明になったとは聞いていた。麗しの美青年がここのところ萎れて覇気がなかったのはそのせいだ。

 その後の調査で誘拐されたと判明したという。――奴隷商に。

 わたくしは背筋が凍るような感覚を覚えた。
 リースト一族は麗しの美貌と高い魔力を持つ、魔法の大家の一族だ。
 まだ学生だったほんの数年前には、わたくしの大事な後輩だった本家の令嬢オデットが同じように誘拐されて、――行方不明のままなのだ。

 誘拐だけでも大ごとだが、なお悪いことにユカリオンの弟ユキリーンは学園で悪質ないじめに遭っていたらしい。
 こやつらリースト一族は先にも述べたように、青銀の髪と 湖面の水色ティールカラーの瞳を持つ美貌が特徴だ。世界にこの一族だけの色味である。
 ところがユキリーンは外から嫁いできた母方の髪色と目の色をしているそうだ。それが原因で母親の不義の子とレッテルを貼られていたそうなのだ。

 なんとも呆れたことである。わたくしはユカリオンの家族の集合した絵姿を見せてもらったことがある。
 確かに末子ユキリーンは青銀の髪の家族の中、姉兄たちの中で一人だけ母親と同じショコラブラウンの髪色だった。

 ――だが顔はユカリオンや父親、姉や兄らとほとんど同じ麗しの美貌だ。これを母親の不貞の子と見るには無理がある。

「弟をいじめた同級生たちに制裁に行ってきたんですよ。そしたらまあ呆れたことに、ただの〝構ってちゃん〟たちでした」

 要は美しい同級生に構ってほしくて、わざとユキリーンに侮辱的な言葉を吐いていたと。
 しかもそれが伯爵家と子爵家のそれぞれ嫡男たちだったと聞いて、さすがのわたくしも呆れてしまった。

「一応聞いてやる。制裁とは何をした?」
「全員、親たちの前でぶん殴って反省文を書かせました。その足でまとめて神殿に連れて行き、神殿誓約を行わせました」
「どんな内容で?」
「自分たちがしたことと、以後同じことを絶対にユキリーンを含む他者にやらないこと。ついでに『以後の人生は善い人間になります』と誓わせました」
「誓約を破った場合の罰則は?」
「世界のことわりから天罰が落ちますけど?」
「よくもまあ、そこまでやりおるものよ」

 この行動力と対応は見事なものだ。
 男爵令息のユカリオンが自分の家より高位の貴族家の令息たちをぶん殴っただけなら、裁判沙汰になりかねない。

 しかし、加害者たちに反省を促し、神殿誓約まで結ばせた。その内容も妥当なところだ。これならばどこからも文句は出ないし、出せもしない。

 ついでに親たちから多額の慰謝料もぶん取ってきたというが、それはまあ良かろう。
 どうせ父親の男爵に丸ごと預けて、自分の贅沢に使うことはないだろうからな。



「じゃあ私、弟探しの旅に出ますので」
「まあ待てユカリオン。わたくしにもちょうど王命が下ったところだ。ほれ」

 わたくしは若くして即位した弟王からの指令書を見せてやった。
 まあ、わたくしが用意した書類に無理やりサインさせたものだがな。抵抗はあったが弟ごとき赤子の手を捻るようなものよ。姉に逆らう弟など許さぬゆえ。

「異世界から帰還した行方不明王族の消息確認……ですか?」
「そう。百年ほど前にアルトレイ公領で当時の大公令嬢とその親戚たちが行方不明になっていた。彼女たちが突如現れたと現地の領主から報告があったのだ」
「はあ、アルトレイ公領ってど田舎領ですよね。うちのご本家ほどじゃないけど美味い鮭が獲れるとこだ。それで?」
「あそこは隣国との境界にある。隣国側に奴隷商の活動が認められた。ど田舎村に侵入してちょうど退けたと報告が来ている」
「!?」
「わたくしは現役の王族として、帰還した王族の確認をしに行かねばならぬ。これから護衛の騎士団を結成するのだが、我はこれでも一国の王女ぞ? 腕の立つ騎士はどれだけいても足りぬ」

 ここまで言えば、あとはわかるな?
 ユカリオンはすっと跪いて騎士の礼を取った。

「先輩。いえ、グレイシア王姉殿下。どうか私も護衛団の末席にお加えください」
「近衛騎士の辞表は取り消しするか?」
「それはそのままで。道中、できるだけ自由に動きたいので」

 かくしてようやく王都を出立できたのが十一月の中旬だ。
 馬車なら一ヶ月以上かかる距離を、騎馬で飛ばして二週間。

 異世界から元大公令嬢たちが村ごと転移してきてから、半年以上が経過していた。
 しかも到着してみれば元大公令嬢は老衰で床に伏せているというではないか。

 間に合ってよかった。とりあえず判断の遅かった弟王と重臣たちは王都に戻ったらきりきり締め上げねばならぬな。覚悟しておれ。





※ユキリーンのお兄ちゃんが強火のモンペすぎる件(未来で魔王と呼ばれる聖剣の聖者と似たタイプ)

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