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第三章 異世界転移の謎を解け!
side 王女様と男爵家の三男2
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リースト男爵家の三男、ユカリオンの得意技はお家芸の魔法剣――ではない。
弟語りだ。
ど田舎領の領主から、百年前に行方不明になっていた大公令嬢を含む三名とその家族が村ごと異世界転移してきた――
そんな信じられない報告が王家に上げられたのは、事件発生の翌月上旬だった。
すぐ調査に向かうべきだったのだが、ど田舎領は過去に件の大公令嬢だけでなく、歴史的に何人も王族や貴族が行方不明になっている曰く付きの場所だ。
誰も調査に行きたがらず、わたくしの弟王も消極的で誰もがなあなあに時が過ぎるのを待ち続けて五ヶ月。
近衛騎士のリースト男爵令息ユカリオンの弟が隣国の奴隷商から逃亡してど田舎村で保護された。
次いで、同じ奴隷商にわたくしの学園での後輩も囚われているとの報告を見て、もういてもたってもいられなかった。
希望者を募って調査団を結成する時間も惜しかった。王族のわたくしと護衛騎士十数名でまず現地に向かうことにしたわけだが……
王女とはいえ、わたくしは馬の扱いには慣れていた。
しかし馬で長距離移動ができても、王族の女が野宿するわけにもいかぬ。
夕方には必ず町や村で止まって馬を休ませ、宿を取る必要があった。
その宿での夕食時、ユカリオンの定番の持ちネタが『可愛い末っ子語り』なのである。
下の弟ユキリーンが生まれるまでの末っ子で上の姉や兄たちに構われまくっていたのがユカリオンという男だ。
何と言えばよいのか、リースト一族とは大変情の深い一族で身内の結束が固い。
社交界では必ず、その麗しの美貌の持ち主どもが集まっては仲良く歓談する姿を見ることができる。
……頼むからもう少し他の貴族たちとも仲良くしてほしいのだが、どうでもいい他人より家族や一族のほうが百倍大事だと公言する連中だ。身内愛が強すぎる。
ユカリオンも姉や兄たちに構われて健やかに育っておった。
王都の集いでは、よく家族の腕に抱かれて愛らしく笑っていたものよ。
そんなリースト男爵家に末っ子ユキリーンが生まれたのは、ユカリオンが四歳の頃だ。
「……弟とは大変可愛いものでした。この子のためなら何でもしよう。幼な心に誓ったものです」
「いくら年下とはいえ、男兄弟がそんなに可愛いものなのか?」
「グレイシア様はわかっておられない。私とすぐ上の兄は五歳以上離れていて、少なくとも私は五年に渡ってリースト男爵家の末っ子だったのです」
「お、おお。そうだな?」
随分とムキになるではないか。
「今でも覚えております。あれは私が四歳になったばかりの頃。家族で招待されたご本家のサマーパーティーで、果汁を飲み過ぎてもよおしてしまった私」
「……なんの話なのだ?」
漏らしたとかそういう話か?
「使用人を捕まえて手洗い場の場所を聞いていたら、ひょいっと両脇から抱え上げられました。当時学園を卒業して成人したばかりの一番上の姉にです」
「……うむ?」
「そのまま女子用の手洗い場に連れて行かれて『ユカリオン、しーできる? しー?』と半ズボンを下ろされて放尿を促されたあの屈辱。おわかりですか!?」
「……おまえ、それ四歳の頃だろ? 幼児ではないか。それでしーはできたのか、しーは?」
「恥ずかしいやら情けないやらで漏らしそうになりましたが、根性で姉を個室から追い出して用足ししました。思えばあれが私の男としての自立心を促された最初の出来事だった……」
「姉君に持ち運ばれて虚無顔になってる幼いお前が浮かぶようだなあ」
リースト一族は四歳ともなればいっぱしの自我が確立される、早熟な血族ゆえな。
仮にも一国の王女相手に下ネタを淡々と話すこの男は、これでも国の騎士の中ではトップクラスの実力者だ。
そもそも下位貴族の男爵家の息子で近衛騎士に抜擢されるほどだ。実力は群を抜いている。
「しかし弟が生まれて私にも姉の気持ちがわかりました。末っ子は可愛い。どんなことでもしてやりたいし、面倒を見てやりたいって気持ちに自然となるんです」
なるほど、しーの面倒を見てやったわけだな。うむ。
弟語りだ。
ど田舎領の領主から、百年前に行方不明になっていた大公令嬢を含む三名とその家族が村ごと異世界転移してきた――
そんな信じられない報告が王家に上げられたのは、事件発生の翌月上旬だった。
すぐ調査に向かうべきだったのだが、ど田舎領は過去に件の大公令嬢だけでなく、歴史的に何人も王族や貴族が行方不明になっている曰く付きの場所だ。
誰も調査に行きたがらず、わたくしの弟王も消極的で誰もがなあなあに時が過ぎるのを待ち続けて五ヶ月。
近衛騎士のリースト男爵令息ユカリオンの弟が隣国の奴隷商から逃亡してど田舎村で保護された。
次いで、同じ奴隷商にわたくしの学園での後輩も囚われているとの報告を見て、もういてもたってもいられなかった。
希望者を募って調査団を結成する時間も惜しかった。王族のわたくしと護衛騎士十数名でまず現地に向かうことにしたわけだが……
王女とはいえ、わたくしは馬の扱いには慣れていた。
しかし馬で長距離移動ができても、王族の女が野宿するわけにもいかぬ。
夕方には必ず町や村で止まって馬を休ませ、宿を取る必要があった。
その宿での夕食時、ユカリオンの定番の持ちネタが『可愛い末っ子語り』なのである。
下の弟ユキリーンが生まれるまでの末っ子で上の姉や兄たちに構われまくっていたのがユカリオンという男だ。
何と言えばよいのか、リースト一族とは大変情の深い一族で身内の結束が固い。
社交界では必ず、その麗しの美貌の持ち主どもが集まっては仲良く歓談する姿を見ることができる。
……頼むからもう少し他の貴族たちとも仲良くしてほしいのだが、どうでもいい他人より家族や一族のほうが百倍大事だと公言する連中だ。身内愛が強すぎる。
ユカリオンも姉や兄たちに構われて健やかに育っておった。
王都の集いでは、よく家族の腕に抱かれて愛らしく笑っていたものよ。
そんなリースト男爵家に末っ子ユキリーンが生まれたのは、ユカリオンが四歳の頃だ。
「……弟とは大変可愛いものでした。この子のためなら何でもしよう。幼な心に誓ったものです」
「いくら年下とはいえ、男兄弟がそんなに可愛いものなのか?」
「グレイシア様はわかっておられない。私とすぐ上の兄は五歳以上離れていて、少なくとも私は五年に渡ってリースト男爵家の末っ子だったのです」
「お、おお。そうだな?」
随分とムキになるではないか。
「今でも覚えております。あれは私が四歳になったばかりの頃。家族で招待されたご本家のサマーパーティーで、果汁を飲み過ぎてもよおしてしまった私」
「……なんの話なのだ?」
漏らしたとかそういう話か?
「使用人を捕まえて手洗い場の場所を聞いていたら、ひょいっと両脇から抱え上げられました。当時学園を卒業して成人したばかりの一番上の姉にです」
「……うむ?」
「そのまま女子用の手洗い場に連れて行かれて『ユカリオン、しーできる? しー?』と半ズボンを下ろされて放尿を促されたあの屈辱。おわかりですか!?」
「……おまえ、それ四歳の頃だろ? 幼児ではないか。それでしーはできたのか、しーは?」
「恥ずかしいやら情けないやらで漏らしそうになりましたが、根性で姉を個室から追い出して用足ししました。思えばあれが私の男としての自立心を促された最初の出来事だった……」
「姉君に持ち運ばれて虚無顔になってる幼いお前が浮かぶようだなあ」
リースト一族は四歳ともなればいっぱしの自我が確立される、早熟な血族ゆえな。
仮にも一国の王女相手に下ネタを淡々と話すこの男は、これでも国の騎士の中ではトップクラスの実力者だ。
そもそも下位貴族の男爵家の息子で近衛騎士に抜擢されるほどだ。実力は群を抜いている。
「しかし弟が生まれて私にも姉の気持ちがわかりました。末っ子は可愛い。どんなことでもしてやりたいし、面倒を見てやりたいって気持ちに自然となるんです」
なるほど、しーの面倒を見てやったわけだな。うむ。
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