異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

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第三章 異世界転移の謎を解け!

side 王女様と男爵家の三男3~酒造りのヒント

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 その弟大好きな兄ユカリオンからは、ど田舎領への道中でとんでもない話も飛び出してきた。

 近衛騎士を辞めたことで恋人と別れたというのだ。

「お前、それは結婚予定の恋人ではなかったか? そこまでして弟を優先して良いのか?」
「誤解です。別に婚約してたわけじゃありませんでした。相手が一方的に乗り気だっただけで。事情を説明してなお『私と弟どっちが大事なの!?』とのたまう女でした。あのまま結婚してもトラブルが起こったでしょうから、お別れして正解だったと思いますね」
「格上の伯爵令嬢だったのだろう? もったいない」

 ユカリオンはこの顔だから当然モテる。
 モテ過ぎて逆に近寄り難いと遠慮されていて、ようやく交際に至った令嬢ではなかったか?

「恋人として大事にしてきたつもりでしたが、事件に巻き込まれた弟より恋人の自分のほうを大事にしろなどと。男爵家の子供は六人もいるのだから一人ぐらいいなくなっても支障はないはずだと言われました。それはまともな感性ではない。良いのです」

 そこまでキッパリさっぱり斬れるとは、潔い。
 というより、本当にそのようなことを口走る令嬢ならば、元々気の合わぬ相手だったか。
 しかしだ。

「……多分、相手のご令嬢はお前が近衛を辞める前に相談してほしかっただけだと思うぞ……?」
「その時間も惜しかったのです。まずはユキリーンをいじめた同級生たちに制裁が必要でしたから。それに近衛のままでいたら王家の皆様に迷惑をかけたでしょうから、やはり辞める必要がありました」
「……まあ、お前の中では筋の通った行動だったのだろうなあ」

 結局、恋人の伯爵令嬢とは話にならなかったらしい。相手の父親と話をつけてキレイに別れてきたそうだ。

 ……おまえ、それちゃんと綺麗に切れたと思ってるのは自分だけだぞ?

 後々禍根を残さぬよう、王都に帰還したらフォローせねばなるまい、なあ……?



  ☆ ☆ ☆



 なんだかすごく良い話を聞いた気がする。

 グレイシアさんの語るユキりんの兄貴が強火すぎた。

「お前の兄貴、すごいな。ユキりん」
「それ以上言わないでください……」

 どんだけブラコンなんだよっていう。

「んで、さすがに今は〝しー〟は一人でできるんだよな?」
「当たり前でしょう!」

 うはははは。むきになるユキりんがかわいい。弟キャラは年上に弄られるが定めよな!

「えーと。そんでユキりんの兄貴は今どこに?」

 そんなに強火で火事寸前のお兄ちゃんがいるなら、ユキりんも強引に連れ戻してしまいそうだが。
 ユキりんも不安そうにグレイシアさんを見つめているし、ピナレラちゃんは横に座ってユキりんの服の端を放さぬと言わんばかりに握り締めている。お婿しゃん候補だもんなあ。ユキ兄ちゃんは認めてませんけどね!?

「ここへの道中、奴隷商の残党の一部がいると連絡を受けてな。私がど田舎領に入るのを見届けてから追っていってしまった」
「ちょっと待ってください。もう真冬に入るのに分かれてしまったんですか」

 ど田舎領も冬にはかなりの雪が降ると聞いている。
 馬はさすがに雪が降った道は走れんだろ。

「再会できるのは雪解けの後かもしれんなあ」

 呑気なお姫さんだ。自分の護衛騎士なんだからちゃんと手綱付けておけよっていう。



 こんな馬鹿な話をしながらも、グレイシアさんは村長や勉さんとも挨拶したり、倒れて床から起き上がれないままのばあちゃんの見舞いに行ったりと王族の慰問を果たしていた。

「王都には王家の腕の良い医者がいる。文はすぐに書いて送るが、この雪の季節だ。こちらに到着するまでは時間がかかる」
「そうですか……。もうばあちゃんも年が年なんで。覚悟だけはしてるつもりです」

 俺は、ど田舎村の水や飲食物が薄っすら光るほど良い魔力に満ちていることや、その力を生かした酒造りを行ってることも説明した。
 するとグレイシアさんから意外な話を聞くことになった。

「そのニホンシュとやらをベースにしたポーションを作っておるのか。酒を醸すのであろ? わたくしの学生時代、魔導具研の者たちが面白い道具を作っておったぞ」

 さらさら紙にペンで図解してくれたものを見ると、二重になった太めの瓶だ。
 内側の瓶の表面と、外側の瓶の裏面に金属コーティングが施されている。
 金属の線で外側がぐるぐる巻きになっていて蓋に付いた魔石に接続され、魔力を流して中の瓶に入れた液体を温めるようになっていた。
 この構造……見た目はだいぶ違うが、魔法瓶か!

「果汁と酵母を入れて保温しておくと、一晩で発酵して酒になる。翌日、冷やして酵母と粕を漉せば出来上がりだ」



 グレイシアさんの説明を、隣町にカズアキとユキりんが行く際に同行して魔導具師を訪ねて話してみると、

「ああ、それね。少量だから目こぼしされてる密造酒製造用の魔導具だ」

 職人肌の魔導具師のおやっさんも知っていた。
 聞けば収入の少ない世帯で自分たちが飲む分を作る程度なら、お上も仕方ないと見て見ぬふりしてるそうで。
 ど田舎村でも各家庭でビールやワインの自家製酒を作ってるが、あれはちゃんと領主の男爵が許可して専用の酵母を販売してるところが違うらしい。

 未許可の酵母を使うと雑菌が繁殖してしまったり、飲めるエタノールじゃなくて有毒なメタノールができてしまう。
 メタノールは元の世界でも戦時中、密造酒で民間が密かに作っては危険に気づかず飲んで、大勢死んだ記録が日本でも残ってるぐらいヤベエ代物だ。
 だから酵母も醸造も国が法律で定めて管理するわけだな。

 おやっさんによると、グレイシアさんが描いた魔導具の仕組みは炊飯器で作れる甘酒やどぶろくと同じだ。
 ただ熱を加え過ぎないよう、魔石の魔力で酵母を刺激して発酵させるところが違う。

「新種の酒を開発する際の時短にも使われるんだ。取り付ける魔石や、作用させる魔力を変えて工夫してみるといいよ」

 その場でおやっさんに、醸造用の魔法瓶型魔導具を瓶の在庫がある分だけ製作してもらった。一リットルほどの容量のものを七つだ。

 グレイシアさんが言ってたように学生でも作れるぐらいだから、基本の材料費はお安かった。
 高かったのは魔石と、接続する部分に使うミスラル銀なるレア金属だった……大金貨が数枚吹っ飛んだ。今の俺が男爵から毎月支給される報酬の数ヶ月分。
 だけんど異世界転移してきてから、大して金を使う機会もなかったから問題なく支払いはできた。あー貯蓄してて良かっだべ……!

 この魔導具を使うことで、通常一ヶ月から二ヶ月かかる日本酒造りが一回につき最短三日で造れるようになった。

 一度に七本分作れるからトライアンドエラーをやりまくれる。

 魔石を調達したり、ユキりんやカズアキを始めとした魔力使いたちに協力を頼んだりと、奔走しまくってついに日本酒は完成した。

 もなか村産の酵母と米、ど田舎村の水。
 二つの異世界の素材を使ったハイブリッド日本酒『異界最中もなか』一号が完成したときには、十二月はそろそろ終わろうとしていた――





※ユキリーンのお兄ちゃんは御米田たちと違って、毒女と縁があってもキッパリ切れる男(っょぃ)
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