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第三章 異世界転移の謎を解け!
俺、めちゃくちゃ腹減った
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それから王様は、意識を失ったままのカズアキを腕に抱いて、小さな子供に寝物語を聞かせるような穏やかな声で語りかけた。
「カズアキよ。ピザは出前より店で食べたり、自分で作ったりするほうが美味いぞ。ほら、自宅の近くに大型の商店があるのだろう? アルバイトの帰りに寄ってピザ用ソースやチーズを買うのだ」
「え、王様?」
なんか庶民的なことを言い出したぞ。
「私たちはこの子が転生した勇者から、前世の話を聞いたことがあるのだ。本人は気にしていなかったが……問題のある家族に生まれたのだなと皆、心を痛めていた」
問題ありありだべ。そうか、来世まで持ち越しちまったのか。
「本来なら、転生してまで前世の記憶を持ち越すことはない。よほど心を傷つける家庭で育ったのだと。……今回の夢見で全容を把握できたことだけが幸いだったな」
それから少しずつ睡眠学習させるような感じで、王様はカズアキの耳元に囁き続けた。
「具はオイルツナ。黒オリーブもなかなかだ。おお、お前が帰宅する夜遅い時刻には商店の商品も大幅値引きになる。サーモンや甘海老の刺身をのせて焼けばとても豪華なシーフードピザになるのでは?」
おいやめろ。聞いてるだけで涎が出てきそうだ。美味そう!
うう、夕飯の前だったからマジで腹が減ってるんだけど!?
「お前の仕事が終わる時間にはギリギリ、帰り道のラーメン屋が開いているぞ。トン……豚骨だったか? 夜遅いから追いニンニクは控えたほうが良いだろう……。代わりに煮卵を追加して焼豚丼のセットだ。なに、まだ若いのだ。重い夜食でも問題なく消化できよう。煮卵の黄身は半熟だ。焼豚に甘辛いとろっとした黄身を絡めて白飯とともに豪快にかっ込むのだ。あとは家に帰って風呂に入り眠るだけ。至福の余韻は夢うつつまで続くであろう」
「………………」
勘弁してけろ。めちゃくちゃ美味そうだべ!
王様の低い落ち着いた声がまた良い感じの飯テロレポで、想像を掻き立てて食欲を刺激する。
この話の内容を聞く限り、王様はカズアキが高校進学して事故で死ぬまでを知っていると見た。
俺も葬式の後の騒ぎから、カズアキが家でどんな境遇だったかを知っている。
王様の腕に抱かれたままのカズアキの呑気な寝顔に、俺もまた語りかけ始めた。
「カズ君。お前はファミレスでバイトするんだ。仕事が終わると賄いを二百円で食べられる。帰りにコンビニでおにぎりやサンドイッチ買うより安いぞ」
かつてカズアキの日記には、自分が早く帰宅しないと母親の家事が片付かないからと毎回慌てて自転車を飛ばして帰宅したことが書かれていた。
そのせいで、バイトならお得な賄いの食事を一度も食ったことがなかったのだと。……毒叔母はお前が帰宅する時間なんて気にもしてなかったのにな。
お前がシャワーを浴びた後の浴室だって洗うのは翌日通いで来るハウスキーパーだ。叔母じゃない。
「おおそうだ、その時刻の控え室には、これから仕事のご年配たちがいる。お前は同年代より年上受けが良いから話も弾むことだろう」
少し考えて、俺はカズアキの家庭問題にも踏み込んでみることにした。
どこまでカズアキの無意識に浸透するかはわからないが、やらないよりマシだ。睡眠学習的な感じで。
「バイトを始めたら朝飯のとき、叔母さんにこう言うといい。『お母さん、僕、バイト先で仕事上がりに夕飯食べてくるから、僕の分はこれまで通り用意しなくていいよ』って。念のためって感じで軽く、サラッとな」
そうしたら、仕事が忙しくて家を叔母に任せきりでも、朝飯だけは家族と必ず取っていたという叔父が違和感に気づくはずだ。
カズアキが残した日記には、毒叔母がバイト帰りのカズアキに何も夕飯や夜食を用意せず、カズアキをハブった家族だけで外食を繰り返していたことも書かれていた。
叔母が、旦那の叔父さんを毎回どのように言いくるめてカズアキ抜きの外食に行っていたかもカズアキの日記には書かれていたんだ。
反抗期だから仕方ないと言って、手を変え品を変え説明してたらしいが、こんなばあちゃん似で家族思いのど天然っ子に反抗期など来るか!
「叔父さんがお前のことを気にかければ、少しは叔母さんも態度を改め……るといいなあ。もっと早くお前の境遇がわかってたら、うちの親父、自分が引き取ったのにってすげえ後悔してたんだ」
そしたら本当の兄弟になれて、今ごろ毎日楽しくやってたと思うぜ。
一緒に旅行したり、もなか村に帰省したり。
……この異世界転移だって、一緒だったかも。
身体がドームの外、また次元の狭間に引っ張られる力を感じ始めた。
そろそろまた元の世界に戻る時間のようだ。
最後にひとつだけ。
今なら世界の強制力とやらに邪魔されずに聞ける気がした。
「王様。あんたの名前って?」
前に夢で会ったときは聞けなかった。
王様はフッと(俺と同じ)男前な顔で笑うと、カズアキを抱いたまま厳かに名乗った。
「我が名はユーグレン。アケロニア王国の国王にして賢者ユーグレンなり」
賢者ってファンタジー世界では定番のレアジョブじゃないか。
王様だからワイズキング。俺の前世? はそもそもチートの男だったわけだ。
そりゃあ、あの虹色キラキラの神人三人組がチートをくれないわけだ。
――俺は元々チートを備えた魂の持ち主だったのだから。
ドームの外へと引っ張る力がますます強くなる。
俺は王様からカズアキを返してもらって、再び次元転移に戻ろうとした。
とそのときだ。
「お待ちください、オコメダ氏ー!」
壁際に控えてた給仕? の男が目の前に滑るように駆け込んできて、その場で俺に向かって平伏した。
「お、王はやめておけと申されましたが、謝罪! 謝罪だけはさせてください!」
「えっと。どちらさまで?」
こんな金髪に青い目の派手な美形男、見た覚えは……いや、見覚えあるわ。これって。
「ジオライドと申します! 王と共にニホンにおりました! ヤソガミがご迷惑をおかけして申し訳ありません! ニホンへ戻られましたら今度こそお役に立ちますので! 絶対に!」
「八十神てめえかー!!!」
「詳しくはヤソガミ・アキラにお聞きください!」
最後の最後にぶっこんでくるんじゃなーい!
※飯テロ描写たのしい。某流行病の味覚障害なおってよかったですべ😭
つまり勇者君、おぼろげに覚えてた前世の美味しかったもの語りを王様にしまくってたという(でも本人が食べれてたかは謎)
「カズアキよ。ピザは出前より店で食べたり、自分で作ったりするほうが美味いぞ。ほら、自宅の近くに大型の商店があるのだろう? アルバイトの帰りに寄ってピザ用ソースやチーズを買うのだ」
「え、王様?」
なんか庶民的なことを言い出したぞ。
「私たちはこの子が転生した勇者から、前世の話を聞いたことがあるのだ。本人は気にしていなかったが……問題のある家族に生まれたのだなと皆、心を痛めていた」
問題ありありだべ。そうか、来世まで持ち越しちまったのか。
「本来なら、転生してまで前世の記憶を持ち越すことはない。よほど心を傷つける家庭で育ったのだと。……今回の夢見で全容を把握できたことだけが幸いだったな」
それから少しずつ睡眠学習させるような感じで、王様はカズアキの耳元に囁き続けた。
「具はオイルツナ。黒オリーブもなかなかだ。おお、お前が帰宅する夜遅い時刻には商店の商品も大幅値引きになる。サーモンや甘海老の刺身をのせて焼けばとても豪華なシーフードピザになるのでは?」
おいやめろ。聞いてるだけで涎が出てきそうだ。美味そう!
うう、夕飯の前だったからマジで腹が減ってるんだけど!?
「お前の仕事が終わる時間にはギリギリ、帰り道のラーメン屋が開いているぞ。トン……豚骨だったか? 夜遅いから追いニンニクは控えたほうが良いだろう……。代わりに煮卵を追加して焼豚丼のセットだ。なに、まだ若いのだ。重い夜食でも問題なく消化できよう。煮卵の黄身は半熟だ。焼豚に甘辛いとろっとした黄身を絡めて白飯とともに豪快にかっ込むのだ。あとは家に帰って風呂に入り眠るだけ。至福の余韻は夢うつつまで続くであろう」
「………………」
勘弁してけろ。めちゃくちゃ美味そうだべ!
王様の低い落ち着いた声がまた良い感じの飯テロレポで、想像を掻き立てて食欲を刺激する。
この話の内容を聞く限り、王様はカズアキが高校進学して事故で死ぬまでを知っていると見た。
俺も葬式の後の騒ぎから、カズアキが家でどんな境遇だったかを知っている。
王様の腕に抱かれたままのカズアキの呑気な寝顔に、俺もまた語りかけ始めた。
「カズ君。お前はファミレスでバイトするんだ。仕事が終わると賄いを二百円で食べられる。帰りにコンビニでおにぎりやサンドイッチ買うより安いぞ」
かつてカズアキの日記には、自分が早く帰宅しないと母親の家事が片付かないからと毎回慌てて自転車を飛ばして帰宅したことが書かれていた。
そのせいで、バイトならお得な賄いの食事を一度も食ったことがなかったのだと。……毒叔母はお前が帰宅する時間なんて気にもしてなかったのにな。
お前がシャワーを浴びた後の浴室だって洗うのは翌日通いで来るハウスキーパーだ。叔母じゃない。
「おおそうだ、その時刻の控え室には、これから仕事のご年配たちがいる。お前は同年代より年上受けが良いから話も弾むことだろう」
少し考えて、俺はカズアキの家庭問題にも踏み込んでみることにした。
どこまでカズアキの無意識に浸透するかはわからないが、やらないよりマシだ。睡眠学習的な感じで。
「バイトを始めたら朝飯のとき、叔母さんにこう言うといい。『お母さん、僕、バイト先で仕事上がりに夕飯食べてくるから、僕の分はこれまで通り用意しなくていいよ』って。念のためって感じで軽く、サラッとな」
そうしたら、仕事が忙しくて家を叔母に任せきりでも、朝飯だけは家族と必ず取っていたという叔父が違和感に気づくはずだ。
カズアキが残した日記には、毒叔母がバイト帰りのカズアキに何も夕飯や夜食を用意せず、カズアキをハブった家族だけで外食を繰り返していたことも書かれていた。
叔母が、旦那の叔父さんを毎回どのように言いくるめてカズアキ抜きの外食に行っていたかもカズアキの日記には書かれていたんだ。
反抗期だから仕方ないと言って、手を変え品を変え説明してたらしいが、こんなばあちゃん似で家族思いのど天然っ子に反抗期など来るか!
「叔父さんがお前のことを気にかければ、少しは叔母さんも態度を改め……るといいなあ。もっと早くお前の境遇がわかってたら、うちの親父、自分が引き取ったのにってすげえ後悔してたんだ」
そしたら本当の兄弟になれて、今ごろ毎日楽しくやってたと思うぜ。
一緒に旅行したり、もなか村に帰省したり。
……この異世界転移だって、一緒だったかも。
身体がドームの外、また次元の狭間に引っ張られる力を感じ始めた。
そろそろまた元の世界に戻る時間のようだ。
最後にひとつだけ。
今なら世界の強制力とやらに邪魔されずに聞ける気がした。
「王様。あんたの名前って?」
前に夢で会ったときは聞けなかった。
王様はフッと(俺と同じ)男前な顔で笑うと、カズアキを抱いたまま厳かに名乗った。
「我が名はユーグレン。アケロニア王国の国王にして賢者ユーグレンなり」
賢者ってファンタジー世界では定番のレアジョブじゃないか。
王様だからワイズキング。俺の前世? はそもそもチートの男だったわけだ。
そりゃあ、あの虹色キラキラの神人三人組がチートをくれないわけだ。
――俺は元々チートを備えた魂の持ち主だったのだから。
ドームの外へと引っ張る力がますます強くなる。
俺は王様からカズアキを返してもらって、再び次元転移に戻ろうとした。
とそのときだ。
「お待ちください、オコメダ氏ー!」
壁際に控えてた給仕? の男が目の前に滑るように駆け込んできて、その場で俺に向かって平伏した。
「お、王はやめておけと申されましたが、謝罪! 謝罪だけはさせてください!」
「えっと。どちらさまで?」
こんな金髪に青い目の派手な美形男、見た覚えは……いや、見覚えあるわ。これって。
「ジオライドと申します! 王と共にニホンにおりました! ヤソガミがご迷惑をおかけして申し訳ありません! ニホンへ戻られましたら今度こそお役に立ちますので! 絶対に!」
「八十神てめえかー!!!」
「詳しくはヤソガミ・アキラにお聞きください!」
最後の最後にぶっこんでくるんじゃなーい!
※飯テロ描写たのしい。某流行病の味覚障害なおってよかったですべ😭
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