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×異種族
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岩の中で眠る美しい少年。彼を見て感じたのは、初めての胸の高鳴りだった。欲しい、なんて人間に想うことでは無いかもしれない。その点で俺は勇者失格だろう。
魔界の門を閉じたのは1年近く前のこと。各地に残った強力な魔物を討伐するための旅だ。仲間たちの体調も万全で、この地にいるのはそれほど強くない敵である。驕っているわけではないけれど、それなりに楽な任務の予定だった。
道中視界を遮るほどの大雨の中で不運なことに、いや、幸運なことに仲間からはぐれた俺は雨を凌ぐために近くの洞窟に飛び込んだ。
その洞窟の奥からは仄かな明かりが漏れていて、導かれるように奥へ進んだとき、彼を見つけた。
その美しさにひと目で心を奪われた。その身体は壁に埋め込まれていたが、微かな呼吸で彼の生を伝えている。生きているなら助けなければと岩に剣をつきたてたけれど、一向に削れない。
音に気づいたのか少年は目を開けると、夜のような深い紺色の瞳をこちらに向けた。
「だれ?」
「俺はビル、冒険者だ。君は?」
「……フェザー。なにしてたの?」
「困ってるのかと思って、助けようとしてた」
少年は驚いたように目を見開いたあと、何度か瞬きをした。
「あり、がと。でも無理だよ」
「どうして?」
「これ、呪いなんだ。悪い魔女の呪い」
「呪い?」
「うん。僕の種族はね、薬になるんだって」
言われて初めて、彼が人間ではないことに気づいた。耳が少しだけ尖っている。
「痛みにも鈍いし、少しくらい切られてもすぐ再生するから」
「そん、な……」
「でもその魔女も見なくなってどれくらいだろ。死んだのかな」
淡々と語っていた彼だったけれど、いきなり咳き込みだした。苦しみを和らげるために何かできることは無いかと頭を撫でてみる。彼の口からこぼれたのは無数の花弁だった。
「え?」
「……っごほ、あー、さいあく」
「大丈夫?」
「だいじょうぶじゃない」
「そうだよな。ちょっと乱暴だけど、そこから出すね」
「剣もないのに?」
「うん。実は特殊な魔法が使えるんだ。秘密だよ」
これが呪いというのなら、たぶん《聖なる光》が効くんじゃないかと当たりをつけて、右手に力を込める。剣を使っては彼に傷をつけてしまうかもしれないから、細心の注意を払って隙間に手を入れる。彼の様子を気にしながら岩を手前に崩せば、豆腐のように呆気なく崩れ去った。
作業を続ける中で彼は何度か花を吐いた。急いで彼の身体を助け出すと、彼は一糸まとわぬ姿で倒れ込んできた。抱きとめながら外套で彼をぐるぐる巻にする。少し見えた肌は白く、触れた感触は吸い付くようで、艶めかしさすら感じた。顔に熱が集中するのがわかる。
「ありがと……」
「いや、それより身体はどうだ?」
「んー、動けない、かな。もう随分歩いてないから、立ち方もわかんない」
困ったように泣きそうな目で見上げる。吸い込まれそうになるが、そんな場合ではないと頭を振って彼を抱え上げた。
「とにかく一度街に戻ろう」
「……人間の?」
「あぁ、あー、そうか。とりあえずフードを被っててくれ。俺の家に連れて行くよ」
街には先の貢献で与えられた屋敷がある。管理は信用できる使用人たちに任せているから、客はいつ来ても大丈夫なはずだ。口も堅い。
「うぇっ、げっ、ごほ……っはぁ、いい、けど」
話すのも辛そうなので彼の頭にフードを被せ、洞窟の外に出る。空はすっかりと晴れ渡り、虹がかかっていた。
魔界の門を閉じたのは1年近く前のこと。各地に残った強力な魔物を討伐するための旅だ。仲間たちの体調も万全で、この地にいるのはそれほど強くない敵である。驕っているわけではないけれど、それなりに楽な任務の予定だった。
道中視界を遮るほどの大雨の中で不運なことに、いや、幸運なことに仲間からはぐれた俺は雨を凌ぐために近くの洞窟に飛び込んだ。
その洞窟の奥からは仄かな明かりが漏れていて、導かれるように奥へ進んだとき、彼を見つけた。
その美しさにひと目で心を奪われた。その身体は壁に埋め込まれていたが、微かな呼吸で彼の生を伝えている。生きているなら助けなければと岩に剣をつきたてたけれど、一向に削れない。
音に気づいたのか少年は目を開けると、夜のような深い紺色の瞳をこちらに向けた。
「だれ?」
「俺はビル、冒険者だ。君は?」
「……フェザー。なにしてたの?」
「困ってるのかと思って、助けようとしてた」
少年は驚いたように目を見開いたあと、何度か瞬きをした。
「あり、がと。でも無理だよ」
「どうして?」
「これ、呪いなんだ。悪い魔女の呪い」
「呪い?」
「うん。僕の種族はね、薬になるんだって」
言われて初めて、彼が人間ではないことに気づいた。耳が少しだけ尖っている。
「痛みにも鈍いし、少しくらい切られてもすぐ再生するから」
「そん、な……」
「でもその魔女も見なくなってどれくらいだろ。死んだのかな」
淡々と語っていた彼だったけれど、いきなり咳き込みだした。苦しみを和らげるために何かできることは無いかと頭を撫でてみる。彼の口からこぼれたのは無数の花弁だった。
「え?」
「……っごほ、あー、さいあく」
「大丈夫?」
「だいじょうぶじゃない」
「そうだよな。ちょっと乱暴だけど、そこから出すね」
「剣もないのに?」
「うん。実は特殊な魔法が使えるんだ。秘密だよ」
これが呪いというのなら、たぶん《聖なる光》が効くんじゃないかと当たりをつけて、右手に力を込める。剣を使っては彼に傷をつけてしまうかもしれないから、細心の注意を払って隙間に手を入れる。彼の様子を気にしながら岩を手前に崩せば、豆腐のように呆気なく崩れ去った。
作業を続ける中で彼は何度か花を吐いた。急いで彼の身体を助け出すと、彼は一糸まとわぬ姿で倒れ込んできた。抱きとめながら外套で彼をぐるぐる巻にする。少し見えた肌は白く、触れた感触は吸い付くようで、艶めかしさすら感じた。顔に熱が集中するのがわかる。
「ありがと……」
「いや、それより身体はどうだ?」
「んー、動けない、かな。もう随分歩いてないから、立ち方もわかんない」
困ったように泣きそうな目で見上げる。吸い込まれそうになるが、そんな場合ではないと頭を振って彼を抱え上げた。
「とにかく一度街に戻ろう」
「……人間の?」
「あぁ、あー、そうか。とりあえずフードを被っててくれ。俺の家に連れて行くよ」
街には先の貢献で与えられた屋敷がある。管理は信用できる使用人たちに任せているから、客はいつ来ても大丈夫なはずだ。口も堅い。
「うぇっ、げっ、ごほ……っはぁ、いい、けど」
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