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×占い師
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軽快な足取りで店を出ていく少女。その背中を見送って、優しい気持ちと同時にどこか切なさを感じる。
「……はぁ。やっぱり恋する女の子はいいわぁ」
先程まで使用していた水晶玉を何気なく撫でてみると、写し出されたのは彼女のキラキラした未来。この未来が訪れるかどうかは本人次第だけれど、できるなら叶えてほしい。
「幸せになってね」
そっと溢してもう一度撫でると、それはただの水晶に戻る。両手で抱えて棚に戻すと、タイミングよくドアが来客を告げた。
「いらっしゃい、子羊ちゃん。今日はどんなお悩み?」
意識した柔らかい表情で、入り口に近い方の椅子に新しいお客様を手招いた。
ここに訪れる子は多くて三回程度で願いを叶えてる。その後別の悩みができた子には、もちろん別の占いで問題を解消できるように寄り添っている。
けれど目の前に座る勇者・ラグドールはすでに十回近くこの店を訪れていた。
「今日はどんなお悩み? いつものあの子?」
「……あぁ」
ラグドールが目当てにしている子は相当鈍いのか、それとも彼が言葉足らずなのか、おそらくはその両方のせいで、まだ恋愛成就に至っていない。気落ちしているようなので、まずは世間話から。
「前回は東に行ったのよね?」
「あぁ。『虹の渓谷』に二人で行った」
占星術で良いとされた方角にあるパワースポットだ。そこで告白でも、とアドバイスしたのは憶えている。あの時は下見のために二人で渓谷に行き、告白の練習までした。
『バーミラ、ここにお前と来れて嬉しい』
『ふふ、私もよ。でも普通のお嬢さんにはこの渓谷は厳しいんじゃない?』
『ん? あ、いや。強い、から』
『そう? ならいいけど』
『……お前のことが好きだ』
(突然? 練習かしら)
『ありがとう。私も貴方のこと好ましく思ってるわ。でも本番ではもう少しタイミングを考えたほうがいいわね』
そんなアドバイスまでしたのにうまくいかなかったのか。
「告白、しなかったの?」
「いや」
「返事はどうだったの?」
「タイミングを考えろ、と」
練習のときと同じ失敗をしてしまったらしい。それは確かに落ち込みたくもなるな、と頷いて、今日は水鏡を用意する。これはまだ使ったことがなかったはず。
「これまでプレゼントしたり、デートしたりだったかしら」
「あぁ」
「今日はその子との相性でも見てみましょ」
「わかった」
準備をしながら世間話程度に今までのことを振り返る。挨拶から始まり、デートや会話内容等々。占い結果から導いたアドバイスで彼も実行してはいるようだけど、結果は散々。
「プレゼントも渡してるんでしょ?」
「言われたものは渡してる」
「気に入ってもらえてないの?」
「気に入ってくれてるだろ?」
「え、そりゃ、おこぼれで貰ってるもの。私は気に入ってるけど……」
ふと、手を止める。なんだか少し違和感があった。占い師の勘とでもいうのだろうか、見逃してはいけない些細なズレ。
「……そういえば、その子のことちゃんと聞いたことなかったわよね。どんな子なの?」
「どんな……見た目は、美しい。中性的とでもいうのだろうか、男女から好かれるのではないか?」
「……そう」
「性格は芯がしっかりしている。自分を貫く姿勢は見ていて気持ちがいい。それに人のことをとても考えていて誠実だ。誰かの幸せのためにいつも頑張っている」
「そんな風に見えてるのね」
「特に瞳が好ましい。宝石のような綺麗な赤色で、まっすぐに前を見つめている。その視線の先に居たいと思う」
「その人の名前……教えてくれる?」
「バーミラだが」
最後まで聞いて、深く息を吐いた。脱力感がすごい。気づかなかった私も悪いとは思う。けれど、もう少しくらい態度に出してくれてもいいんじゃないだろうか。椅子の背もたれに全体重を預けて天を仰ぐ。この際行儀なんて気にしてられない。
「……勘弁してよ。私、自分のことは占わないって決めてるの」
「占うのは俺のことだろ?」
「私たちのことよ。そうね、口説きたいなら次は自分の気持ちで、貴方の見せたい場所に連れてって。そこでプロポーズでもされたら、グラっと来ちゃうんじゃない?」
「わかった」
真剣な眼差しで頷くラグドール。実はだいぶ絆されてるなんて、まだしばらくは秘密にしていよう。
「……はぁ。やっぱり恋する女の子はいいわぁ」
先程まで使用していた水晶玉を何気なく撫でてみると、写し出されたのは彼女のキラキラした未来。この未来が訪れるかどうかは本人次第だけれど、できるなら叶えてほしい。
「幸せになってね」
そっと溢してもう一度撫でると、それはただの水晶に戻る。両手で抱えて棚に戻すと、タイミングよくドアが来客を告げた。
「いらっしゃい、子羊ちゃん。今日はどんなお悩み?」
意識した柔らかい表情で、入り口に近い方の椅子に新しいお客様を手招いた。
ここに訪れる子は多くて三回程度で願いを叶えてる。その後別の悩みができた子には、もちろん別の占いで問題を解消できるように寄り添っている。
けれど目の前に座る勇者・ラグドールはすでに十回近くこの店を訪れていた。
「今日はどんなお悩み? いつものあの子?」
「……あぁ」
ラグドールが目当てにしている子は相当鈍いのか、それとも彼が言葉足らずなのか、おそらくはその両方のせいで、まだ恋愛成就に至っていない。気落ちしているようなので、まずは世間話から。
「前回は東に行ったのよね?」
「あぁ。『虹の渓谷』に二人で行った」
占星術で良いとされた方角にあるパワースポットだ。そこで告白でも、とアドバイスしたのは憶えている。あの時は下見のために二人で渓谷に行き、告白の練習までした。
『バーミラ、ここにお前と来れて嬉しい』
『ふふ、私もよ。でも普通のお嬢さんにはこの渓谷は厳しいんじゃない?』
『ん? あ、いや。強い、から』
『そう? ならいいけど』
『……お前のことが好きだ』
(突然? 練習かしら)
『ありがとう。私も貴方のこと好ましく思ってるわ。でも本番ではもう少しタイミングを考えたほうがいいわね』
そんなアドバイスまでしたのにうまくいかなかったのか。
「告白、しなかったの?」
「いや」
「返事はどうだったの?」
「タイミングを考えろ、と」
練習のときと同じ失敗をしてしまったらしい。それは確かに落ち込みたくもなるな、と頷いて、今日は水鏡を用意する。これはまだ使ったことがなかったはず。
「これまでプレゼントしたり、デートしたりだったかしら」
「あぁ」
「今日はその子との相性でも見てみましょ」
「わかった」
準備をしながら世間話程度に今までのことを振り返る。挨拶から始まり、デートや会話内容等々。占い結果から導いたアドバイスで彼も実行してはいるようだけど、結果は散々。
「プレゼントも渡してるんでしょ?」
「言われたものは渡してる」
「気に入ってもらえてないの?」
「気に入ってくれてるだろ?」
「え、そりゃ、おこぼれで貰ってるもの。私は気に入ってるけど……」
ふと、手を止める。なんだか少し違和感があった。占い師の勘とでもいうのだろうか、見逃してはいけない些細なズレ。
「……そういえば、その子のことちゃんと聞いたことなかったわよね。どんな子なの?」
「どんな……見た目は、美しい。中性的とでもいうのだろうか、男女から好かれるのではないか?」
「……そう」
「性格は芯がしっかりしている。自分を貫く姿勢は見ていて気持ちがいい。それに人のことをとても考えていて誠実だ。誰かの幸せのためにいつも頑張っている」
「そんな風に見えてるのね」
「特に瞳が好ましい。宝石のような綺麗な赤色で、まっすぐに前を見つめている。その視線の先に居たいと思う」
「その人の名前……教えてくれる?」
「バーミラだが」
最後まで聞いて、深く息を吐いた。脱力感がすごい。気づかなかった私も悪いとは思う。けれど、もう少しくらい態度に出してくれてもいいんじゃないだろうか。椅子の背もたれに全体重を預けて天を仰ぐ。この際行儀なんて気にしてられない。
「……勘弁してよ。私、自分のことは占わないって決めてるの」
「占うのは俺のことだろ?」
「私たちのことよ。そうね、口説きたいなら次は自分の気持ちで、貴方の見せたい場所に連れてって。そこでプロポーズでもされたら、グラっと来ちゃうんじゃない?」
「わかった」
真剣な眼差しで頷くラグドール。実はだいぶ絆されてるなんて、まだしばらくは秘密にしていよう。
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