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×道具屋の息子
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彼のために何ができるんだろう。
村を救いに来てくれた勇者様。その背中を見ながらぼんやりと考える。
彼の案内は村長の息子であるヒルマイナが担当することになった。道具屋の息子である僕、クウェイルは、荷物持ちとして同行することをヒルマイナから命じられた。
勇者様とヒルマイナの後ろを魔法使いと格闘家の二人が、更に後ろを白魔道士が歩く。僕は最後尾で少し大きめのアイテムボックスを背中に担いでいる。
魔法道具であるアイテムボックスは重さが全く無い。大小様々なサイズがあり、大きさに比例して容量が異なる。
(ヒルマイナはどうして僕を連れてきたんだろう)
ヒルマイナなら自分で軽々と持てたはずだ。そうすれば一行の歩みももっと速かったと思う。知らずため息が口をついて出た。
「ここらで休憩にしませんか?」
ヒルマイナがみんなに声をかけた。歩き始めてそろそろ一時間、いい頃合いだろう。
ヒルマイナに命じられる前に昼ごはんの準備を始める。アイテムボックスからお弁当やお茶を取り出して順に手渡せば、勇者パーティの面々に感心された。
「アイテムボックスですか、便利ですね」
「販売してるのか?」
「はい。この大きさのものは流石に売り出してはいませんが、肩掛け程度ならご用意してます」
白魔道士と格闘家に声をかけられて笑顔で答える。営業っぽくなってしまったが、道具に興味を持ってくれるのは純粋に嬉しい。
「クウェイル、こっちにもちょうだい」
ヒルマイナがムッとしたように声を荒げたので、僕は無意識にびくついてそちらへ向かう。勇者様とヒルマイナにもそれぞれお弁当を手渡しそっと離れた。
「お弁当、ありがと」
魔法使いは無表情だけれど、毎回お礼を言ってくれるから、いい人なのかもしれない。思わず照れ笑いを浮かべると、小さい子どもにするように頭を撫でられた。ぺこりとお辞儀して離れる。
僕は何もできないお荷物だから、みんなから離れて食事するようにヒルマイナには言われていた。僕らは幼馴染で、彼はどんくさい僕をよく助けてくれる。ヒルマイナの見えるところに居ないだけで歩き回って探してくれるくらいだ。
ぼんやりとお弁当をつつく。いつもは家族と食べるか、荷運びでも従業員と食べているので、一人で食べるのはなんだか味気ない。
「隣座っていい?」
「え?」
声のする方を見上げれば、そこには勇者様がいた。あわあわと周りを見るが、ヒルマイナは勇者パーティの他のメンバーと話していて気づかないようだ。
「ど、どうぞ……」
断る勇気もなくて、僕はなるべく体を小さくする。
「ありがとう」
勇者様はお弁当持ったまま僕の隣に座る。蓋を開けてゆっくりと食べだした。僕ももそもそと箸を動かす。
「ねぇ」
「ふぇ、はい。なんですか?」
「そんなにかしこまらなくていいよ」
勇者様は笑いながら柔らかい口調で続ける。
「せっかくこうして一緒に歩いてるんだ。君とも話をしたいなって思っただけだから」
そっと手を握られた。なんだか顔が近い、ような気がする。
「あ、そのぉ、あの、光栄です……でも僕なんか、そんな」
「ふふ、怖がらないで。俺の名前はアルバトロス、勇者です。君の名前を教えてほしいな」
「ご、ごごご存知なのでは?」
「知ってるけど、君の口から聞かせて?」
「ぼ、くはクウェイル、でひゅ」
緊張しすぎて舌がうまく回らない。いつもはこんなことないのに、勇者様の距離が近くて、内臓が口から飛び出しそうだ。都会の人はみんなこうなんだろうか。
「クウェイル、君と仲良くなりたい」
ふんわりと優しく微笑まれて、僕の心臓は壊れちゃうんじゃないかってくらいどきどきと煩かった。そんな僕を、ヒルマイナが見ていることに気づかなかった。
村を救いに来てくれた勇者様。その背中を見ながらぼんやりと考える。
彼の案内は村長の息子であるヒルマイナが担当することになった。道具屋の息子である僕、クウェイルは、荷物持ちとして同行することをヒルマイナから命じられた。
勇者様とヒルマイナの後ろを魔法使いと格闘家の二人が、更に後ろを白魔道士が歩く。僕は最後尾で少し大きめのアイテムボックスを背中に担いでいる。
魔法道具であるアイテムボックスは重さが全く無い。大小様々なサイズがあり、大きさに比例して容量が異なる。
(ヒルマイナはどうして僕を連れてきたんだろう)
ヒルマイナなら自分で軽々と持てたはずだ。そうすれば一行の歩みももっと速かったと思う。知らずため息が口をついて出た。
「ここらで休憩にしませんか?」
ヒルマイナがみんなに声をかけた。歩き始めてそろそろ一時間、いい頃合いだろう。
ヒルマイナに命じられる前に昼ごはんの準備を始める。アイテムボックスからお弁当やお茶を取り出して順に手渡せば、勇者パーティの面々に感心された。
「アイテムボックスですか、便利ですね」
「販売してるのか?」
「はい。この大きさのものは流石に売り出してはいませんが、肩掛け程度ならご用意してます」
白魔道士と格闘家に声をかけられて笑顔で答える。営業っぽくなってしまったが、道具に興味を持ってくれるのは純粋に嬉しい。
「クウェイル、こっちにもちょうだい」
ヒルマイナがムッとしたように声を荒げたので、僕は無意識にびくついてそちらへ向かう。勇者様とヒルマイナにもそれぞれお弁当を手渡しそっと離れた。
「お弁当、ありがと」
魔法使いは無表情だけれど、毎回お礼を言ってくれるから、いい人なのかもしれない。思わず照れ笑いを浮かべると、小さい子どもにするように頭を撫でられた。ぺこりとお辞儀して離れる。
僕は何もできないお荷物だから、みんなから離れて食事するようにヒルマイナには言われていた。僕らは幼馴染で、彼はどんくさい僕をよく助けてくれる。ヒルマイナの見えるところに居ないだけで歩き回って探してくれるくらいだ。
ぼんやりとお弁当をつつく。いつもは家族と食べるか、荷運びでも従業員と食べているので、一人で食べるのはなんだか味気ない。
「隣座っていい?」
「え?」
声のする方を見上げれば、そこには勇者様がいた。あわあわと周りを見るが、ヒルマイナは勇者パーティの他のメンバーと話していて気づかないようだ。
「ど、どうぞ……」
断る勇気もなくて、僕はなるべく体を小さくする。
「ありがとう」
勇者様はお弁当持ったまま僕の隣に座る。蓋を開けてゆっくりと食べだした。僕ももそもそと箸を動かす。
「ねぇ」
「ふぇ、はい。なんですか?」
「そんなにかしこまらなくていいよ」
勇者様は笑いながら柔らかい口調で続ける。
「せっかくこうして一緒に歩いてるんだ。君とも話をしたいなって思っただけだから」
そっと手を握られた。なんだか顔が近い、ような気がする。
「あ、そのぉ、あの、光栄です……でも僕なんか、そんな」
「ふふ、怖がらないで。俺の名前はアルバトロス、勇者です。君の名前を教えてほしいな」
「ご、ごごご存知なのでは?」
「知ってるけど、君の口から聞かせて?」
「ぼ、くはクウェイル、でひゅ」
緊張しすぎて舌がうまく回らない。いつもはこんなことないのに、勇者様の距離が近くて、内臓が口から飛び出しそうだ。都会の人はみんなこうなんだろうか。
「クウェイル、君と仲良くなりたい」
ふんわりと優しく微笑まれて、僕の心臓は壊れちゃうんじゃないかってくらいどきどきと煩かった。そんな僕を、ヒルマイナが見ていることに気づかなかった。
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