勇者かける

青空びすた

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×冒険者

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 オレたちが目的地近くの都に辿り着いたのは、夜も近い夕暮れ時だった。森で一晩過ごすことにならなくてよかったと胸を撫で下ろす。
 しかし、入口近くにいくつかある宿はどこも満室で、少しずつ夜の帳が下りてきた。これは本格的にまずいと、オレは相棒の顔を伺う。ヴァーミリオンの顔にもなんとなく焦りが見える。
 この宿が最後だ。ここも満室ならあとは娼館か、連れ込み宿か。身震いして足早に宿のカウンターへ向かった。

「うちもだいたい満室だなぁ……。あ、いや」
「空いてるのか?」
「夫婦部屋ならある、が、ベッドはセミダブルだ」
 静寂が場を支配する。連れ込み宿とどっちがマシか天秤にかける。呻くオレを無視してヴァーミリオンはさっさと部屋を決めてしまった。先を行く彼を追いかける俺の背中に、店主が部屋を汚すなよ、なんてにやけづらで忠告してきた。

 部屋に入れば聞いた通りのセミダブルベッド。男二人で寝るにはやはり広さが足りない。装備を外しながらも、どうしても目線がベッドに行く。屋根があるだけマシだとため息を飲み込んで、今夜はソファで寝る決意をする。
「隣に酒場があったな」
「あったあった! 夕飯はあそこにしようぜ」
 最低限の装備で扉に向かう。名物が楽しみで跳ねるように歩けば隣でヴァーミリオンが笑った。
「なんだよー」
「別に」
 拗ねたふりをしてみるが、彼の笑顔につい顔が緩む。ヴァーミリオンはオレのほっぺをふにふにと揉む。
「間抜け顔」
 意地悪なことを言ってるのにあんまりにも優しい顔をするから、なんとなく照れてしまう。
「腹減った!」
 ふいと赤い顔を隠してダッシュで外に出た。

 それなりに豪華な夕食に舌鼓を打ち、地酒を勧められて舐める程度に嗜んで、ふわふわとした気分で部屋に戻った。二口三口しか呑んでいないのに、自分でわかる程度に酔っ払っている。
「風呂はやめとこうな」
「……うん」
 酒場に行く前にシャワーを浴びておけばよかった。なんて後の祭り。上着を脱ぎ捨てソファに脱力する。そんなオレの世話をヴァーミリオンは甲斐甲斐しく焼いてくる。
「水飲むか?」
「のみたい」
 彼は頷いてコップに注いだ飲料水をオレの口元に持ってきた。大人しく口を開けばゆっくり傾けられてこくりこくりと喉を鳴らす。
「もう少しだけ起きてろ」
「わかった……」
 舟を漕ぎながら必死で返答する。ヴァーミリオンは手早くお湯とタオルを用意して、オレの服を慣れた手付きで脱がせた。優しく拭われて思わず息が漏れる。気持ちいい。
 体がさっぱりして、服も着替えさせてもらって、いよいよ睡魔は限界だった。
「ほら、ベッド行こう」
「……だっこ」
「いいよ」
 軽々と抱き上げられて体を預ける。心地よさにこのまま眠りたくなった。けれどそれはほんの一瞬ですぐに柔らかな布団に包まれる。なんとなく寂しくて、力の入らない手でヴァーミリオンの袖を掴んだ。
「いっ……しょに……」
「わかってる。先に寝てな」
 額に優しく口づけられていよいよ安心して意識を手放した。

 目が覚めたのは翌朝だった。昨晩の記憶はしっかりとある。羞恥に身悶えていれば、背中から優しく抱きしめられた。
「おはよう、シーシェル」
「おはよ、ヴァーミリオン」
 恥ずかしいことをしたのはオレだけだ。思わず顔を覆ってしまう。そんなオレにはお構いなしで、ヴァーミリオンはオレの頬に口づける。
「あいさつは?」
「……うん」
 顔は熱いままだけれど、お返しにオレからもキスを贈る。ヴァーミリオンは満足そうにしっかりとオレを抱きしめた。
「今日は何するんだ?」
「しばらくはここを拠点にするからまずは家探し、だな」
「待て、どれくらいいるつもりなんだ?」
「はっきりとは決まってない」
 オレはヴァーミリオンについていくだけなので、基本的に文句はない。けれど報連相はきっちりしておいてほしい。なんとなくいたたまれない気持ちになって、体の向きを変えて彼の胸に顔を埋める。
「まだ寝るか?」
「ゆっくりでいいなら」
「いいよ」
 本当は風呂に入りたい気もするが、許可が出たから寝てしまおう。そんなオレを他所にダブルベッドもいいな、なんてヴァーミリオンが呟いた。
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