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×獣人
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森に入ってきた人間の後をこっそり追う。木の陰に隠れてるからきっと気づかれてない。しっぽを揺らしながら慎重に気配を殺してついて行く。
「なぁ、ミモザ。もう帰ろーぜ」
「だって」
「ちび達も飽きたみたいだしさ」
そう言われて一緒に来た仲間たちを見る。確かにもう興味なさそうだ。僕はぷくっと頬を膨らませてそっぽ向く。
「みんなは先に帰ってて」
「暗くなる前に帰ってこいよ」
僕の頭を頭ぐしゃりと撫でて、友だちは仲間を連れて村に帰っていった。
僕はじっと人間の背中を見つめる。耳も欹てて心の中まで聞くように真剣に。あんなに綺麗な生き物は見たことがないんだ。大人たちは人間は怖い、悪い生き物だっていうけれど、それでも心惹かれる。
ざわりと森の空気が揺れた。良くないものの臭いがする。人間は気づいているだろうか? 再び様子を窺うが表情までは見えない。
ふと人間がこちらを見た。
『××××!』
何かを叫んでいるけれど、よくわからない。そちらに注意を払っていたから気づけなかった。真後ろから獣の息遣い。振り返ったときには大きな口が迫っていて、全部がゆっくりに見える。
ぐいと強い力で後ろに引っ張られた。ざしゅっと目の前で獣が貫かれる。
『×××××××?』
言葉尻から何かを確認されたんだと思う。何を言っているのかわからないから頷いておく。恐る恐る獣の方を見れば、すでに絶命していた。
「助けてくれてありがと」
人間は首を傾げて、僕の頭を撫でた。人間は僕に怪我がないことを確認して離れていった。
「僕はミモザだよ」
『×××ヴァイン』
「ゔぁいん?」
尋ねるとヴァインは首を縦に振ってまた歩き出した。なんとなく離れがたくて、追いかけてヴァインの服を握る。ヴァインは苦笑して僕の手をとった。
二人で並んで歩く。幼い子みたいに腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く。ヴァインは優しく笑っている。
「ヴァインは何がほしいの? この森に何をしに来たの?」
『××××。××××××××××××』
何かを言おうとしているけれど、やっぱりわからない。ヴァインは困ったように笑って森の奥を指差す。
「森の奥に行きたいの? あっちには生命の樹しかないよ。あ、生命の樹の実がほしいの? 昼の間に行かないといけないんだよ」
訪ねてみるけどヴァインは首を傾げるだけ。僕は勝手にそうだと決めつけて、森の奥へヴァインを引っ張っていく。
奥へ行くに連れてどんどん夜が近づいてくる。急がないと。僕が走り出したからヴァインも一緒に駆け出した。人間がついてこれるスピードで急ぐ。
生命の樹の前に到着したのは空が赤くなり始めた頃だった。よかった、間に合った。僕は樹に登って1番ツヤツヤした実と2番目に光ってる実をもぎとる。するすると降りてヴァインに綺麗な方を差し出した。
「この樹の実は夜になると死者の実になるから良くないんだって。朝まで待たなきゃいけないところだった」
『×××××』
ヴァインは驚いた顔で実を受け取ると、とても嬉しそうに笑った。僕の頭を撫でて、実を袋に収めてしまう。
「食べないの?」
ちょっと残念に思って、自分の手の中にある実を見た。もしかして毒でも警戒してるのかな。自分の実を半分に千切って彼の目の前で食べる。
残りの半分を差し出せば彼はまた笑って僕の頭を撫でた。
そうじゃないと僕は、首を振って彼の口元に実を近づける。しゃくりと涼しい音を鳴らしながら彼が食いついた。僕はそれに満足して並んで樹の実を食べた。
空には一番星が輝いていた。
「なぁ、ミモザ。もう帰ろーぜ」
「だって」
「ちび達も飽きたみたいだしさ」
そう言われて一緒に来た仲間たちを見る。確かにもう興味なさそうだ。僕はぷくっと頬を膨らませてそっぽ向く。
「みんなは先に帰ってて」
「暗くなる前に帰ってこいよ」
僕の頭を頭ぐしゃりと撫でて、友だちは仲間を連れて村に帰っていった。
僕はじっと人間の背中を見つめる。耳も欹てて心の中まで聞くように真剣に。あんなに綺麗な生き物は見たことがないんだ。大人たちは人間は怖い、悪い生き物だっていうけれど、それでも心惹かれる。
ざわりと森の空気が揺れた。良くないものの臭いがする。人間は気づいているだろうか? 再び様子を窺うが表情までは見えない。
ふと人間がこちらを見た。
『××××!』
何かを叫んでいるけれど、よくわからない。そちらに注意を払っていたから気づけなかった。真後ろから獣の息遣い。振り返ったときには大きな口が迫っていて、全部がゆっくりに見える。
ぐいと強い力で後ろに引っ張られた。ざしゅっと目の前で獣が貫かれる。
『×××××××?』
言葉尻から何かを確認されたんだと思う。何を言っているのかわからないから頷いておく。恐る恐る獣の方を見れば、すでに絶命していた。
「助けてくれてありがと」
人間は首を傾げて、僕の頭を撫でた。人間は僕に怪我がないことを確認して離れていった。
「僕はミモザだよ」
『×××ヴァイン』
「ゔぁいん?」
尋ねるとヴァインは首を縦に振ってまた歩き出した。なんとなく離れがたくて、追いかけてヴァインの服を握る。ヴァインは苦笑して僕の手をとった。
二人で並んで歩く。幼い子みたいに腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く。ヴァインは優しく笑っている。
「ヴァインは何がほしいの? この森に何をしに来たの?」
『××××。××××××××××××』
何かを言おうとしているけれど、やっぱりわからない。ヴァインは困ったように笑って森の奥を指差す。
「森の奥に行きたいの? あっちには生命の樹しかないよ。あ、生命の樹の実がほしいの? 昼の間に行かないといけないんだよ」
訪ねてみるけどヴァインは首を傾げるだけ。僕は勝手にそうだと決めつけて、森の奥へヴァインを引っ張っていく。
奥へ行くに連れてどんどん夜が近づいてくる。急がないと。僕が走り出したからヴァインも一緒に駆け出した。人間がついてこれるスピードで急ぐ。
生命の樹の前に到着したのは空が赤くなり始めた頃だった。よかった、間に合った。僕は樹に登って1番ツヤツヤした実と2番目に光ってる実をもぎとる。するすると降りてヴァインに綺麗な方を差し出した。
「この樹の実は夜になると死者の実になるから良くないんだって。朝まで待たなきゃいけないところだった」
『×××××』
ヴァインは驚いた顔で実を受け取ると、とても嬉しそうに笑った。僕の頭を撫でて、実を袋に収めてしまう。
「食べないの?」
ちょっと残念に思って、自分の手の中にある実を見た。もしかして毒でも警戒してるのかな。自分の実を半分に千切って彼の目の前で食べる。
残りの半分を差し出せば彼はまた笑って僕の頭を撫でた。
そうじゃないと僕は、首を振って彼の口元に実を近づける。しゃくりと涼しい音を鳴らしながら彼が食いついた。僕はそれに満足して並んで樹の実を食べた。
空には一番星が輝いていた。
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