27 / 39
×獣人 side勇者
しおりを挟む
勇者としての旅を続けている中で、共に冒険していた仲間の一人、弓使いが呪いを受けた。すぐに死に至る呪いではなかったけれど、目が見えなくなった。放置すれば失明の危険もあるという。
解呪するのに必要なアイテムを仲間で手分けして探すことにした。俺は『生命の実』と呼ばれる樹の実を求めて、獣人の森へ足を踏み入れた。
森に入ってすぐのことだ。誰かに見られている気配を感じだ。嫌な視線ではないため、休憩するふりをして伺えば、獣人の子どもたちが興味津々といった様子でこちらを見ている。
こんなに簡単に出会えるのか。なんとなく笑ってしまって、気づかないふりをした。
進むうちにたくさんいた獣人の子どもたちは数を減らした。けれど、一人だけ熱心についてくる子どもがいた。離れすぎないように気をつけながら進む。木陰から見えるしっぽと耳が愛らしかった。
嫌な気配がする。肌が粟立ち、本能の部分が警戒を告げてくる。剣に手をかけ意識を研ぎ澄ませる。
がさと音がする。まずい。慌てて獣人の子どもを見れば、背後に巨大な魔獣が迫っていた
「危ない!」
叫ぶと同時に走り出し、小さな体をこちらに引き込む。胸で抱きとめると同時に、巨体に剣を突き刺した。血飛沫を上げ巨躯を横たえる。動かないのを確認して子どもに意識を向けた。
「大丈夫か?」
びくびくと怯えた様子を見せたあと、きゅんきゅんと鳴いた。どうやら怖かったらしい。小さな頭をそっと撫でてやる。獣の耳にも興味を惹かれたが、あまりいじるのは良くないだろう。子どもの体に異常がないことを確認してそっと離した。
『くーん。がぅがぅ。「みもざ」』
かろうじてわかった言葉は恐らく子どもの名前だろう。目線を合わせてこちらも名乗る。
「俺はヴァイン」
「ゔぁいん?」
たどたどしく口にされた言葉は己の名前だ。首肯して、立ち上がった。先を進もうと足を向けると、袖が引かれた。バツが悪そうに俯く姿に苦笑して小さな手を取る。
二人で並んで歩く。自分より少し高い体温。腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く姿は幼子そのもので、なんとなく笑ってしまった。
ミモザがきゅんきゅんと鳴いている。何かを伝えたいのはわかるが、意思の疎通はできない。
「すまない。君の言葉がわからないんだ」
がうがうとしきりに鳴くので、行きたい方向を指差してみる。ミモザは何かを考えたあと、不意に、俺の手を引いて走り出した。
こちらに気を使っているのか、ちらちらと振り返りながら徐々にスピードを上げていく。
一際大きな樹の前に到着したのは、空が赤くなり始めた頃だった。
俺の手をパッと離すと、ミモザはするすると樹を登っていく。じっくりと樹の実を選んで二つもぎ取りまた降りてきた。
この季節に実をつける樹は他にない。この樹が生命の樹なんだろう。ミモザがまたふんふんと鳴きながら実を差し出してくれる。驚いてそれを受け取り礼を言う。
「ありがとう」
仲間のためにも大切に持ち帰らなければ。ミモザの頭を優しく撫で、アイテムボックスに収納する。俺の行動を見ていたミモザは残念そうな顔をして、悲しげに鳴いた。なんとなく罪悪感が込み上げる。
ミモザは一緒に食べたかったのだろう。けれどここで消費することはできない。
ぱっと輝いた顔でミモザはこちらを見ると、手にしていた実を半分に割った。一口齧ったあと、こちらに差し出してくる。しっぽがぶんぶんと振られていることにこの子は気づいているのだろうか。可愛らしくなり思わずミモザの頭を撫でた。
ミモザは不満げに首を振り、実を口元に押し付けてきた。その手から一口齧る。あまりにも嬉しそうに笑うから、この実を食べてからでも遅くないかと、受け取った。二人並んで樹の実を食べる。
空には一番星が輝いていた。
解呪するのに必要なアイテムを仲間で手分けして探すことにした。俺は『生命の実』と呼ばれる樹の実を求めて、獣人の森へ足を踏み入れた。
森に入ってすぐのことだ。誰かに見られている気配を感じだ。嫌な視線ではないため、休憩するふりをして伺えば、獣人の子どもたちが興味津々といった様子でこちらを見ている。
こんなに簡単に出会えるのか。なんとなく笑ってしまって、気づかないふりをした。
進むうちにたくさんいた獣人の子どもたちは数を減らした。けれど、一人だけ熱心についてくる子どもがいた。離れすぎないように気をつけながら進む。木陰から見えるしっぽと耳が愛らしかった。
嫌な気配がする。肌が粟立ち、本能の部分が警戒を告げてくる。剣に手をかけ意識を研ぎ澄ませる。
がさと音がする。まずい。慌てて獣人の子どもを見れば、背後に巨大な魔獣が迫っていた
「危ない!」
叫ぶと同時に走り出し、小さな体をこちらに引き込む。胸で抱きとめると同時に、巨体に剣を突き刺した。血飛沫を上げ巨躯を横たえる。動かないのを確認して子どもに意識を向けた。
「大丈夫か?」
びくびくと怯えた様子を見せたあと、きゅんきゅんと鳴いた。どうやら怖かったらしい。小さな頭をそっと撫でてやる。獣の耳にも興味を惹かれたが、あまりいじるのは良くないだろう。子どもの体に異常がないことを確認してそっと離した。
『くーん。がぅがぅ。「みもざ」』
かろうじてわかった言葉は恐らく子どもの名前だろう。目線を合わせてこちらも名乗る。
「俺はヴァイン」
「ゔぁいん?」
たどたどしく口にされた言葉は己の名前だ。首肯して、立ち上がった。先を進もうと足を向けると、袖が引かれた。バツが悪そうに俯く姿に苦笑して小さな手を取る。
二人で並んで歩く。自分より少し高い体温。腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く姿は幼子そのもので、なんとなく笑ってしまった。
ミモザがきゅんきゅんと鳴いている。何かを伝えたいのはわかるが、意思の疎通はできない。
「すまない。君の言葉がわからないんだ」
がうがうとしきりに鳴くので、行きたい方向を指差してみる。ミモザは何かを考えたあと、不意に、俺の手を引いて走り出した。
こちらに気を使っているのか、ちらちらと振り返りながら徐々にスピードを上げていく。
一際大きな樹の前に到着したのは、空が赤くなり始めた頃だった。
俺の手をパッと離すと、ミモザはするすると樹を登っていく。じっくりと樹の実を選んで二つもぎ取りまた降りてきた。
この季節に実をつける樹は他にない。この樹が生命の樹なんだろう。ミモザがまたふんふんと鳴きながら実を差し出してくれる。驚いてそれを受け取り礼を言う。
「ありがとう」
仲間のためにも大切に持ち帰らなければ。ミモザの頭を優しく撫で、アイテムボックスに収納する。俺の行動を見ていたミモザは残念そうな顔をして、悲しげに鳴いた。なんとなく罪悪感が込み上げる。
ミモザは一緒に食べたかったのだろう。けれどここで消費することはできない。
ぱっと輝いた顔でミモザはこちらを見ると、手にしていた実を半分に割った。一口齧ったあと、こちらに差し出してくる。しっぽがぶんぶんと振られていることにこの子は気づいているのだろうか。可愛らしくなり思わずミモザの頭を撫でた。
ミモザは不満げに首を振り、実を口元に押し付けてきた。その手から一口齧る。あまりにも嬉しそうに笑うから、この実を食べてからでも遅くないかと、受け取った。二人並んで樹の実を食べる。
空には一番星が輝いていた。
0
あなたにおすすめの小説
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
冷凍睡眠からおれを目覚めさせたのは、異形頭でした
秋山龍央
BL
2412年。冷凍睡眠から目覚めたら、地球上に残っている人間はおれひとりになっていた。
三百年の眠りのあいだに、未知のウイルスと戦争により人類は宇宙シェルターへと避難していたのだ。
そんな荒廃した世界で、おれを目覚めさせたのは―― 黒い頭部に青白い光を灯す、異形頭の男だった。
人工機械生命体である彼は、この星における変異体と環境変化の記録のため地球上に残され、二百年以上も一人きりで任務を続けているという。
そんな彼と、行動を共にすることになった人間の話。
※異形頭BLアンソロ本に寄稿した小説に加筆修正をくわえたものになります
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる