▶︎【R18】天塚桃李〜四人の龍王様の嫁になりました〜

mimimi456/都古

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第二十九話 りんご

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「静粛に。」

本来厳粛な雰囲気で満たされている場が、今だけは陽だまりの猫を眺める様に皆がふわふわとした心地に包まれていた。


「みぃ!」

「あ、こら静かに。」

頬や頭を細く滑らかな指先が、美しい銀色の子虎をあやしている。
その指先に子虎がじゃれつけば、嬉しそうに緩む薄桃色の唇を皆が見ていた。

「美しいですな。」

「お綺麗な指先です。」

「この国に神聖な銀が3つもお出ましになられておるっ。」


感涙に咽び泣く年寄り、頭の硬い中堅、真新しい新人までも仙桃妃の神々しさにうっとりと息を漏らしていた。

「静粛に。」

それは義栄の側近・常秋が嗜めるまで続き漸く落ち着いた所で話が進み始める。
ゾロゾロを縄をつけ列を成して入場したのは、例の仙桃妃監禁に組した者たち。
それらには一千年の刑罰が与えられた。
収監されるのだ。
気晴らしの作業などは無くひたすらに閉じ込め、外部との接触を断つ。
勿論、仮出所などと言う物も無い。

そして首謀者であった元・議会長には更に二千年が追加。
議会長職の解任と、今後一切白珠宮への立ち入りを禁止された。

死なないだけマシだし人死が出るのは後味が悪い。
これで良いんだと思っていたが、彼等の罪状を詳しく聞く中で桃李はきゅっと口を結んだ。

「要らないのか?」

自室に戻って来た義栄は、ソファに座ったまま目の前の果物に手を付けていない桃李に声を掛ける。
何を気にしているのか見当は付いていた。

「隅々まで調べさせた。」

「うん。」

刑罰の千年二千年がここ天界に於いてどの位の罪なのかは、正直言って桃李には判断が付かなかった。
それでも刑罰の対象に放火が無かったのが気になっていた。

監禁されて出口のない部屋で火に包まれる恐怖を彼奴は知らない。
それなのに、放火の罪に問われないなんて嫌だと思った。

「結果、放火した事実は確認出来なかった。」

聞けば聞くほど、彼等の供述は''ほんとにちょっと監禁しときたかった"だけだと分かった。
そうでなきゃ、普通台所のある部屋にましてや包丁なんか置いておく訳がない。
縛って転がしておけば良いんだから。
軟禁の方が正しいかもな。

「でも火事は起きた。俺は、死ぬかと思ったんだ。」

膝の上でぷぅぷう眠る子虎の前足をなぞる。
裏の肉球はぷにぷにで、ほんの少しだけ気が紛れてくれる。
不安を誤魔化すのに大の字で眠る子虎は大いに活躍してくれている。

そんな子虎の腹に義栄が手を伸ばし、さりさりと撫でた。
そのまま隣に座ると目の前の皿からりんごを一欠片手に取った。

「麒麟を呼んだのには理由があった。」

「友康?そう言えば何でアイツが居たんだ?」

「麒麟はチカラを抑え込むのに長けている。」

「抑え込む。」

「そうだ。」

四龍はチカラを外へ向けるのに長けている。
仙桃妃は外のチカラを吸収するが、麒麟はチカラを内は留める事が出来る。

「前の仙桃妃が目覚めた時は、制御が追い付かず桃妃宮を丸々ひとつ潰したらしい。」

「えっ!?潰した!?」

「オレの所じゃないから詳しくは知らんが。地鳴りがして倒壊したと聞いた。」

「助かったのか?」

「麒麟が抑え込んだお陰でな。」

つまり。
俺のせいで火事は起きたって事か。

チカラに目覚めたお陰で子虎が生まれた。
こんなに可愛い子虎は義栄の願いを叶えてくれたし、俺もチカラが何なのかよく分からないけど。
俺にしか出来ない事だから、やりたいけど。

そのせいで死にそうな目に遭ったってのは、どうなんだよ。
怖すぎるし嫌すぎるだろ。
大体チカラって何だよ。

「痛っ、!?」

沸々と怒りと文句が溢れて悲しくなって来た時、額にビシリと指が飛んできた。

「口開けろ。」

しゃく、しゃく、しゃく。

「美味いか。」

「うんっ、」

ひとくち齧れば甘くて、美味しい果汁に釣られて。
もう一口、もうひと齧りであっという間にりんごを一欠片食べてしまった。

「果物は騰礼の所から持って来てる。あそこは食い物ならどこより美味い。」

「へぇ。」

「この林檎はお前が滞在したあの時に側にあった木の中で唯一実を付けたものだ。」

「はぁ。」

何が言いたいのか分からず腑抜けた声が出る。
けど、りんごは美味しいのでしゃくしゃく頂いていると、義栄がニヤッとした笑みを浮かべてこっちを見て来た。

「たった3日で林檎が実ると思うか?」

「お、思わないけど、此処で俺の常識は通用しないんだよ、!」

「お前が俺達から邪気を吸い、チカラを循環させると国力が上る。お陰で通常ならあり得ない速さと糖度で実ったのがそれだ。」

「だからなんだよ、」

あの時、あの3日とはつまり乱行大会の事だ。
桃李の中で忘れたい記憶No. 1になってしまったあの記憶が再び蘇って来る。
我を忘れ四人の男に続け様に抱かれ、強請り付け、言われるがままに痴態を晒した覚えが有る。

「お前がチカラに目覚めた今、木の一本所では無い恵がこれからやって来る。だからあの一度きりだ。お前がチカラの使い方を学ぶなら、今後二度とお前の意図しない所でチカラが働かないようにしてやる。」

だから気にするな、と続ける義栄はやっぱり優しい奴だと思う。
ちょっと傲慢な言い方をするだけで。

「やるだろ姫。」

そう言う所だぞ。
なんで選択肢が一個しかないんだ。
けど、自業自得って1番嫌な仕打ちだ。

だから選択肢はやっぱり一つで良いや。

「やる。教えてくれ義栄。」


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