【完結】【R18】 二人の主人と三人の家族

mimimi456/都古

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本編'24

2月19日

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この仕事を選んだのは他でもなく。
自分の家を自分で建てたかったからだ。
その割に一級を取らなかったのは、自分には創造力が欠けていると気付いたからだ。

一応、講義を取ったお陰で二級を持っている。
俺でもおおまかな線を引く事は可能だ。

自分の家の時は、あれこれと湧いて来たんだがな。

せっかくの昼休みも、普段なら仕事をしている所だが。
今日はホワイトボードに外出、と書いて来た。

訪ねたのはバス会社だ。
一昨日、良悟が後ろから押されたと言う件について説明を仰ぎに来た。
普段なら掛けない圧を今回は意図的に掛けていく。

待っていたのは、お偉いさんとあの時の運転手。

「映像を拝見しました。運転手さんも声を掛けていただいた様で、こちらも安心致しました。ありがとうございます。ところでーー」

全く別のバス運行会社が明らかにしたアンケートが有る。
あれこれ調べ尽くして、これが一番使えそうな資料だった。
使わないに越した事は無いが。


「この女性、初めてではありませんよね。」

人は普通、誰かが転べば無意識にそちらに目をやるものだ。
ましてや降車中の出来事だ。
他にも転んだ良悟に驚いて目を向けた人は何人も居た。

「おかしいんですよ。振り向きもせず、追い抜き様酷い言葉を浴びせる余裕すら見せている。支払いも定期を使う程だ。この女性、常連ですよね。其方そちらはこの事態について何処まで把握されていますか。」

「申し訳ありませんが、そう言う事は電話でもお伝えした通り個人情報になりますので。」

「承知しております。ですので、こちらも警察へ被害届を提出しようと考えております。押されただけなら事故と言う事も考えましたが。暴言もとなるとこれは話が変わってきます。明らかに意図的に人を選んで犯行に及んでいる。お分かりですね。」

「いや、それはちょっと、落ち着いてくださいよ、」

「ですから、お伺いしています。其方はこの事態について何処まで把握されていますか。」

「あの詳しい者を、呼んで来ますのでっ、」

「是非。私もあまり時間がありません。長引く様でしたらまた後日。馴染みの弁護士を連れて参りますので。一応、こちらお渡ししておきます。」


さて。ここまで既に20分。
名刺交換をしっかり済ませ、今度は弁護士の名刺まで差し出され、上役は堪らず逃げ出したか。
あと20分で戻らないと、休憩時間が終わる。
やっぱり弁当にしてもらうか。

どうにも最近、愛妻弁当が羨ましくて仕方ない。

慌しい様子で現れたのは、今の運転手の前にあのエリアを巡回していた運転手らしい。
お偉いさんはもう出てこないのか。
だが、この二人は話が通じそうだ。

二人とも既婚者で、片方は娘が居そうだがもう片方は赤ん坊か。
まだ指輪が綺麗だ。
営業のお陰で妙な観察眼が備わってしまったが、これなら使える。

聞けば今回の件、やはり良悟が初めてでは無かった。
他にも女子高生や、サラリーマンが押されるのを見たと運転手は言う。
只、膝をついて転んだのは良悟だけの様だ。
他はたまたま手すりを掴んだり、運良く転ばなかっただけだ。

「我々に出来るのは、声掛けくらいなもので。実際、被害者となる方から声が上がらない限りは。若しくは、救急車でも呼ぶ様な事態にならなければ。特にこちらから出来ることは何も...。」

だろうな。何処もそんなものだ。
だから、こうして声を上げに来た。

「これで堂々と注意出来ます。」

深々と頭を下げる二人に、俺が言う事は無い。
只、あの上司では使い物にならないだろう。
もう少しだけ発破を掛けておくか。

「会いたい人に会う為にあの子は、あのバスに乗っていました。」

「え?」

「あ、の...」

「タクシーを使うと言う手も有りましたが。あの路線の、バスから流れる風景が好きで、パニック発作を起こす可能性を抱えながら少ない頻度ですが、あのバスを利用させて頂いています。」

散歩好きな黒柴は、小雨も暴風もなんのそのだ。
だが、痛い思いをしたならどうだろうな。

「私はお二人に期待しています。同じ様な乗客はあの子だけではありせん。バスの運転手を夢見る子供はまだ大勢居る筈ですよ。勿論、夢を叶えられなかった大人もそうして乗っている筈です。」

出してもらったお茶を飲み干して、来た時と同じ圧を掛けて腰を折りバス会社を出た。

4分押したか。
タバコ買いたかったんだがなぁ。仕方ない。
声を出してスマホへ指示を出す。

「和己へメッセージを送る。内容、確率21%、送信。」

ーーーーー

スマホが鳴った。
陸也からだ。

「21%か、思ったより高いな。」

あいつは、説得が上手い。
また誰か誑かしたんだろ。

100あるうちの21。
2割を超えたな。

明日は半分が、明後日には更にその半分が今日の事を良くあるクレームだと思う。
その数は日増しに減り、例えゴリラの様な男が圧を掛けたとして。
そこに夢と希望と命が乗っているとして。
どれだけの人が誠意を見出せるのかは知らないが。

今後、本人はタクシーにすると言ってる。

ーー決めた。今度からタクシーで行く。

良悟が、"決めた"と言うからには何か心境の変化でも無い限りは変わらない。

また何時かはバスに乗るかも知れないけど、頑固だから当分は無いな。
只でさえ、俺達が嫌がるせいで偶にしか乗らないのに。
その度に傷付けられたら困るんだよ。

漸く持ち直してきた所だ。
もし次があれば、俺達は本気で良悟を軟禁する。

我慢したんだ。
判断の付かない狼狽える子を、朝から夕方まで寄り添って大丈夫だよと声を掛ける。
毛布でまん丸にした肩と頭を撫でてだ。
あんまり可愛いからうっかり"お外は危ないよ"と囁く所だった。
想像するだけで心臓が跳ね上がる様な気分で、酷く甘い誘惑に晒された。

俺だけじゃ無い。
陸也だって遅い飯を食いながら、片膝に良悟を乗せて腰を抱いていた。
風呂嫌いになって唸る良悟を笑いながら宥めて、歯磨きをさせ、手を繋いでベッドに行く。

一時期はそのベッドでさえも怖がった。
床の上やソファの方がよく眠れていたが、例外がひとつ。
陸也の膝の上なら爆睡だった。

あいつのあの時の目はヤバかった。
その内、首か頬に食い付くんじゃないかと俺でも心配した位だ。

「良悟ー」

「なーにー?」

「キスしたいなぁー」

「ふっ、分かった。」

洗濯物を畳む丸い頭と可愛い背中が笑って揺れてる。
陸也の下着をタオルと一緒に畳んでる。
そう言うところが可愛いんだよねぇ。

まぁ、俺のは良悟と一緒だから。
俺の勝ちな。


ーーーーー

2月20日 火曜日


1週間も抱かれてないのに。
全くやる気出ない。

面倒なんだ。

「和己。」

「なぁに?」

「なんか、やる気出ない。」

「そう。因みに何のやる気が出ないの?」

「セックス。」

そう言うと、皿を洗ってた和己がすっ飛んで来た。
俺は、洗濯物を畳んでる最中だから、そんなに飛んで来なくても逃げたりしない。

「お腹痛い?」

「痛く無い。」

「頭、は?」

あぁ、そっか。
そう言えばここ最近ずっと雨か曇りだった。
どうりで寝ても寝ても眠い筈だ。

「眠い。多分、天気のせいだと思う。」

「俺が抜いてあげるけど?」

「嫌。」

せっかくの休みなのに、昨日も眠くて。
今日も眠い。
ビーズもしたいのに。

寝て起きたら1日が終わる。

でも、ちょっとだけなら。

「和己。」

「な、っに、?」

「ちょっと揉ませて」

意外と、普通にしてればコイツらも柔らかい。
もにゅもにゅ。
もにっもにっ。ふみゅ。

「ぁ、っちょっと、元気になっちゃうよ良悟?」

「駄目。元気になったら触らない。」

「えぇーーっ、あぁ、やばいっ、優しくされたら勃っちゃう」

「ほんとだ。」

「ね?だからやめよ?」

「ん。ありがとう。」

一切の躊躇いもなくも無く、借りたチンコから手を離した。それの面倒を見る気力が今の俺には無い。

「それはそれでショック。」

「大丈夫、まだ勃ってない。」

「そうだけどぉ。」

「俺は和己がひとりでシてても構わない。おかずが俺なら。」

「そう?」

「ん。俺以外は駄目だ。俺が居ない時にシて。」

「大丈夫だよ良悟。俺のオカズはずっと良悟だけ♡」

「へぇ。」

興味無い。
黙々と畳み終えたタオルと、下着を持ってバスルームへ。
途中、陸也の部屋に寄る。
脱ぎ散らかしたパジャマを回収する為だけど、この部屋。

「陸也の匂いがする。」

パジャマからも。陸也の匂いがして、思わず握って抱き締めて吸った。

すぅーーーはぁぁ。

「好きっ」

満足するまで吸って、畳んでバスルームへ。
下着と一緒に置いておくと、陸也が楽になる。

なんか。身体むずむずして来た。

リビングへ行き徐に和己に聞いてみる。

「パジャマどこ?」

「俺の?」

「そう。貸して欲しい。」

「俺の部屋だと思うけど?」

「分かった。」

ドアが全開の和己の部屋に、パジャマは有った。
拾って抱き締めて匂いを嗅ぐ。

「和己の匂い、する。」

でもなんか足りなくて、いや。
何が足りないのかは分かってるけど、さっき畳んだばかりなのに。

ま、いいや。
俺の安眠の為に必要だ。
バスルームから陸也のパジャマを引っ張って来た。

二人の匂いがする。
握りしめて、枕代わりにしたら、よく眠れそう。

「良い匂い、する...っ。」

意識はあっという間に落ちて行った。

ーーーーー

会社ではなく、私用のスマホが鳴った。
和己か。

やっぱり眠れなくて、何か有ったのか

開いた画面には、俺達のパジャマを握りしめて眠る良悟の動画が映っていた。

「ん、っ、コホン」

慌てて付けっぱなしのイヤホンに繋ぐ。
会社でイヤーモニタが普及していて良かった。

少し煩い会社で聞こえて来たのは、極々小さな寝息だ。
すぅすぅ、と規則正しく。
見える限りでは健やかに眠っているな。

二人分のパジャマを部屋から持って来たのか。
ちゃんと眠れる様に。

「ふっ、」

あんな事があったのに、可愛い姿を見せてくれる。
体調管理を約束してから、よく昼寝をするようになっていた。
すると何故か、夜も眠れるようになったらしい。

良い子だ。すごく偉い。

プレゼントが要るな。何にするか。
そう言えばクライアントが、サンドアートが趣味だと言っていたな。

画面を素早く操作して、動画を保存。
和己に"良い寝顔だ"と返事をして、会社のPCでサンドアートの資料を探す。
何か家造りのアイデアになるかもしれない。
ならなくても、良悟の趣味に出来るかもしれない。

「千田先輩、それなんですか?」

「サンドアートというらしい。クライアントの奥様が趣味だと仰っていただろう。」

「これ、良いですね。窓枠にしたらどうですかね。」

「何処の窓にする?」

「えーっと、ここの小さいですけどーー」

帰ったらぐっすり昼寝出来た事を褒めてあげたい。

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