【完結】【R18】沼に落ちたら恋人が出来ました。

mimimi456/都古

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第八話

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俺の歓迎会は、俺なしでも大いに盛り上がっているようだ。
まだどんちゃん騒ぎが聞こえる。
でも、この部屋だけは水を打ったように静かだ。


「あんた、その目はどうしたんだ。」

入り口に座したまま微動だにしない彼に、俺は話しかけた。

「これは。」

「言いにくいなら話さなくていい。ただ説明をしてほしいんだ。なんであんたは巫女じゃない?」


コトン、ともう一度飲んだ酒のカップを床に叩き付けた。

「えぇ、お話しします。」

門番の男は、巫女の兄で、先代巫女の息子で、この男こそが本当の巫女だ。

彼は淡々と語り始めた。
ニセ巫女の言う事件とは、この村にとって多大なる損害を出した。

ある日、彼は父と二人で山へ向かった。
二人は村の中で働くより、こうしている方が気が楽だった。
あそこにいるとどうしても、この二人には居心地が悪かった。

勿論、彼の父は巫女を無理矢理犯したりはしなかった。二人とも同意だった。
愛し合っていた。

でもそれはあまりにも不釣り合いで、あまりにも不利だった。
彼の父は孤児で先代の巫女とは歳の差も有った。
見た目は正に美女と野獣で、周りが勝手に抱いた悪い印象だけが一人歩きした。

でも巫女だけはいつも優しかった。
後に生まれた弟とも差異なく愛してくれた。
望まれて、愛されて生まれ、育っているのだと、彼の父は森の中でよく語って聞かせていた。

分かったか、と言う父に頷いて答えたその時。
物陰から突如、猪が現れたのだ。

ーーー巫女の子か。

猪は尋ねた。

彼はそうだ、と答えてしまった。


よく考えれば意地になっていた。
村では阻害されているが、彼は密かな使命を帯びていた。
それを知っているのは、母である巫女と父と腹違いのまだ幼い弟だけ。

すると、猪はあっという間に父を跳ね飛ばし、彼の目を抉っていったのだという。

彼の父はその時死んだ。
息子を襲った猪を共に引き連れて。

彼はほうほうの体で村へと走り帰った。
慌てて巫女のもとへ運び込まれた彼の目は、血が溢れ出ていたが、不思議なことに抉れてはいなかった。

ただ、真っ黒に淀み光を失っていた。

「母は俺にありったけのチカラを注いで数日後、死んでいきました。」

「嫌な話をさせた。」

「いいえ。」


村人は彼を許さなかった。
孤児の子は孤児になり、巫女に子を産ませた男は、その子供で以って巫女の命を奪った。

巫女は神に近い存在。
神の声を聞く唯一の存在。
そんな存在を失った今、誰一人この決定に異を唱える者はいなかった。

ーーー巫女は弟に引き継がれた。

彼は村の危険な仕事を率先してこなすようになった。父から受け継いだその圧倒的な体躯と武術で、せめて村の為になる様に願いながら。


「ふむ。」

「なぁ、この国で動物が喋るのは普通なのか?」

「そんな訳があるか。」

紺がクワッと大口開けて怒る。

そうだよね。そりゃそうだろうよ。
でもね、俺此処に来てから喋る動物が居るって二匹も聞いちゃったしね。
ちょっと俺の常識更新した方が良いのかなって思っちゃったぜ。


「お前、その右目今はどうなっておるのだ。」

「よく分かりません。」

「小僧、外してみよ。」

「え、俺⁉︎」

「お主以外に居らぬだろうが。」

そんなに怒んなくても良くない。
顎外れても知らないんだからな。

「はいはい、ちょっと失礼するぞ?」

俺は正座するオジサンの前に両膝をついて、その右目を覆っている黒の眼帯を外す。

「うわぁ…。」

「ふむ。見せてみろ。」

のそり、と動いた紺は唐突に、オジサンの膝に乗り上げて、更には顎に肉球を置き、右目をよく見ようとしてる。

おい、オジサン困ってんじゃん。
どうすんだよ。
俺は俺で、紺の横っ腹を掴んで真っ直ぐ立てるように支えてやっている。

俺も何してんだよ。
なんで狐支えてんだよ。

「うむ。」

うむ、じゃねえ。

「小僧。」

「はい。」

「お前、此奴と口吸いしてみろ。」

「いッ、!?」

俺だって、口吸いぐらい知ってるわ。
いやでも、ちょっと待て。

「接吻で、いいんじゃね…?」

「足りぬ。」

「いや、足りるって。」

「足りぬ。」

俺は未だに正座したオジサンの目の前で、狐を抱えたまま足りる足りないの争いを繰り返す。

「何故、口吸いなのか聞いてもよろしいですかお狐様。」

「ふん。そんな事も分からんのか。」

「申し訳ありません。」

オジサンは丁寧に頭を下げて答える。

「お前の目玉は確かに光は見えぬだろうが、何かが封印してあるようだ。それを解くのにお前たちの口吸いが要るのだ。分かったか阿呆め。」

「有難うございます。ではマツリ様こちらへ。」

言うや否やオジサンは狐を俺の手から奪って向こうへ放つと、今度は膝立ちの俺の腰を強く抱いてあっという間に口付けた。

「… …ふ、ぅ…ちょ、と…んんぁ、ふっ」

オジサンの口付けは優しくて上手だった。
大きな口がぱくりと、俺の口を覆うと唇に柔く吸い付いた。
吸って、舐めて、心地よさに俺が甘く鳴き始めたところで、オジサンの舌がぬるりと入ってきた。

「きもち…ぃ。」

でも強引な動きは何もなくて、俺の機嫌を伺うように軽く舌先で小さく触れ合うと、抵抗しない俺に鼻先を掠めてオジサンが囁いた。

「そうか。もっと舌を出せ。」

耳に響く低い声でそう言われて、俺は言う通りにべぇ、と舌を出すと、あっという間にオジサンの口に囚われた。

じゅるじゅる、と音を立てて俺の舌と唾液が吸われる。それだけじゃなかった。
オジサンは俺の腰を更に強く抱き寄せると、舌を絞り取る様に愛撫し始めた。

「ぃぁ、それ…ぃやらぁ。」

口吸いは俺が知らない程に下品だった。
まるで下肢の熱を含んだみたいに、自分の舌が上下運動で飲み込まれていく様を、俺は見ていられなかった。

ぎゅっと、目を閉じたその時。


「あ、兄上。目が見えてませんか!?」

「うそっ」

俺はオジサンの口が僅かに離れた隙に、厚い胸から退けぞって右目を覗き込む。

「見えてん…のか?」

「あ、あぁ。見える…がこれは何だ。力が湧いてくる様な。」

「小僧はどうだ。」

「俺は…なんか温かい。紺みたい。」

口吸いのせいだけじゃない。
触れ合った所からじんわりと力が、生気が漲って来る温かさがある。

これ、ほんとにずるい。

「やはり巫女はお主の方であったな。」

「申し訳ありません。」

「これまでのお告げはどうしておったのだ。」

「それは、兄様がこっそり教えてくれて。後日、皆にお触れを出していました。」

「余計な手間を掛けおって。」


ホン、とため息をついた紺。
それを見て更に謝る兄弟たちは一件落着のような
雰囲気を出している。

「あのー俺はどうしたら良いの?
なんで俺、まだガッチリ抱え込まれてんの?」


人前であんな口吸いをしたばかりで、早く離れたい俺に紺は無情にも言い放った。

「小僧は其奴と情を交わせ。」

「… … なんて?」

「これからお主が担う御役目には、其奴の力が要る。彼の神が遣い寄越してきた力だ。巫女の力と相まってお主を癒す筈だ。」

紺はそれだけ言うとスタスタと扉を開けて出て行った。器用に爪の先で開けたのか。
それを見た偽巫女までもが、オジサンに視線を送り去っていった。

俺は、視線を上げて自分を抱きしめる男を見た。

「マジ?」

「申し訳ありません。」

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