【完結】【R18】沼に落ちたら恋人が出来ました。

mimimi456/都古

文字の大きさ
10 / 23

第九話

しおりを挟む
「お前は、彼奴を恨んではおらぬのか。」

「恨むなんて。
そんな事は思い付きもしませんでした。ただ...兄が心配でした。私はよりも兄の方が大変な目に遭いましたから。」

満月の静かになった村で、狐の散歩に付き合って、巫女と偽っていた少年が共に村の外れを歩いていた。
ゆるいそよ風は二人の会話をその場だけに留めてくれている様だ。

「兄が猪に襲われるまで、私達は仲が良かったんです。私の父も含め五人で家族でした。兄も兄の父も私にとっては強いて頼もしい家族でした。」

「ふむ。」

「まだ兄をよく思っていない人もいますが、あれで面倒見が良いのですよ。せがまれてしぶしぶ受けた筈の槍の稽古も、今では親父と呼び慕う人までいるのです。」

ふふ、と少年が笑うのを狐は目を細めて見ていた。

「目が見えるようになって本当に良かったです。今代でいらっしゃる事は分かっていましたが、まさかマツリ様が治してくださるとは思いもしませんでした。ですが全ては神の思し召しだったのですね。」

少年は言葉を尽くして更に語る。
それは誰に聞かせるでもない、今までの誰にも言えない胸の内全てを吐き出す様に。

「あの猪も神様のお遣いの方だったのですから。
母も、兄も、兄の父も、私も...全ては必要な事だったのでしょう。」

「では、全てを心得ておるのだな。」

狐の無感情なセリフに少年はただ、微笑んだ。

「はい。
お狐様を謀った罰、謹んでお受け致します。」


少年は罪を犯した。
神の遣いである狐の言葉に逆らい、偽りのまま事を進めようとした。
鱗太郎が嘘を暴いた事で未遂に済んだが。

神の遣わせた子と交わる事が出来るのは、神に選ばれた巫女のみだ。

人の子は脆い。身も心も。
神の祝福を受けるには脆すぎるのだ。
だからこそ手順を、理を曲げぬ様に神は眷属を遣いに出された。

祝福の子が傷付かぬ様に。

「彼奴は、既にいくつも傷を負っている。」


紺は目の前で凛と立つ少年を見る。
この子供は今、こうして吐き出す事が出来ただけまだ良い。
守るべき兄が居てそれでこうも強く生きてこられたのだ。
不公だが、幸せな子だ。

だが、鱗太郎はどうだ。

彼奴の傷を受け入れる者は、未だ誰一人として現れては居ない。
その血を分けた家族でさえも。

「さて、神の言葉を曲げる程の信念を持つ子供。
貴様をどうしてくれようか。」

紺はその大きな口でニヤリと笑みを作った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

処理中です...