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第十話
しおりを挟む俺はまだ膝の上に居た。
それで、またあの恥ずかしいキスを受けていた。
舌をべぇと伸ばしてそれがオジサンに、じゅるじゅると唾液まで味わわれる。
そのまま舌を全部咥えられて、
唇で扱かれるんだ。
「んふ、ふぅぅ…っん」
すごく下品なのに、すごく気持ち良い。
さっき知ったばかりの口吸いに夢中になっていると、今度は服の中に手が入ってきた。
腹と脇腹を撫でた手は、するりと俺の肌を這ってあっという間に背中まで辿り着くとトントン、とあやし始めた。
「ふ…んぅ、なぁに?」
まるで赤ん坊にするような手付きは優しい。
「どうだ。怖くはないか?」
「ぁ、ふぇ?」
唐突に甘い声が振ってきた。
優しくて甘い。
これは俺だけに見せる声、なのか。
なんで、こんな甘いんだ。
俺、なんかしたか…いや、今からだよな?
俺はこう言うのに疎い自信がある。
思わずカチンと固まった俺にオジサンが声をかけた。
「なんだ。こういうのは大事にしたいだろう?」
「ぉ、は…なのか」
「なんだ?」
固まった唇で、もう一度紡ぎ直す。
「あんたにとってこれは…大事な事なのか?」
今度はオジサンが固まる番だった。
だって、おかしいじゃないか。
見ず知らずの俺との行為の何が大事なんだ?
ーーー記念か?
しょうがない、“必要事項”って奴だろ?
強制ミッションとか、チュートリアルとかそう言うものだ。
別に大事にする必要が何処にある?
「その様子…どうやら本気で聞いているんだな。」
オジサンがじっと俺を見る。
俺も意味が分からなくて見つめ返す。
「仕切り直しだ。」
オジサンは唐突に俺の服を正し始めた。
「ぇ…なんで。シしないのか?」
「今日はな。」
「なんで。俺、あれ好きなのに。」
唐突にシないなんて、俺は悲しくて、思わずさっきまで吸われていた唇を触る。
「ぇぁ、っん!?」
「ちゃんと感じていたのか。」
オジサンは突然、正した服の上から俺の胸の先を擦った。
「シないって言った…んぅ。」
抗議の声はオジサンのキスに阻まれた。
あれ、キスはするのか?
今度は触れ合うだけのキスと、舌を絡めるだけのキスだった。
それだけでも十分気持ちいいキスの合間には、不思議な力が流れ込んでくる。
少量ずつだが、言うなら俺のHPを回復させてくれるみたいな力が流れ込んでくるのだ。
これが巫女の力?
「好きなんだろう。やめるか?」
俺たちは、ひたすらキスをした。
一体どのくらいの時間キスしてたのか分からなくなってきた頃、ふと気が付いた。
それは“練習”だった。
何のって、そりゃあ。
「力を送り合う練習?」
「そうだ。もう出来ているぞ。」
「ぇ、わかんない。」
「大丈夫だ、もう出来てる。」
本来、巫女との行為は力の受け渡しの効果をより高めるために行われるものだった。
肌なら少し。
唾液ならもっと。
体内となると更に。
それはこれから祟り神を祓うという、鱗太郎にとってはなくてはならない行為なのだ。
もう出来ている、と青海は言うけれど。
それを意識的にやるとなると少し問題だった。
俺たちはその“練習”をキスでするものだから、俺がすぐに脱線してキスに夢中になってしまう。
その度にクスリと鼻先が触れる距離で笑い合って、これじゃダメだ、と言って手から力を流すのにやっぱり上手くいかなくて結局キスをして。
気付いたら、お互いの名前を呼び合って俺は首にしがみついていた。
「青海…っ。」
乗っていた青海の下肢も明らかな反応を示していた。俺も男だから分かる。
俺の尻に当たってる硬いものは青海が俺に興奮してる証拠。
「こら動くな。」
「イヤだ。」
俺は悪戯のように腰を揺らした。
そういえば、最後にシたのは何時だったかなと思う。
別に恋人とかセフレなんて居なかったけど、俺も男だから“一人遊び”くらいする。
その時は、こうやって腰を揺らして慣らしていく。
服越しでも青海のモノは硬くて多分俺が持ってたオモチャより大きい。
「んふふっ。」
「鱗太郎…っ、くそっ、!」
「あ、ひぅっ、!?」
人のモノで勝手に遊んでいた俺にバチが当たった。怒った青海は容赦なく俺の腰を掴んで下から打ち付けた。
勿論、服は着てる。
下着だって履いてるのに。
理性が飛んだ俺たちは互いに熱い息を吐きながら、無我夢中で腰を振って唾液も全部を分けた。
そうして順番に性を吐いた俺たちは、少しだけ理性を取り戻した。
「は、ぁ…鱗、太郎っ、」
「な、にっ?」
「水を持って来る。その内に落ち着いておけ。」
「ん…っ。」
ぜいぜい、と肩で息をしながら何とか返事をする俺に、触れるだけのキスを落として行く。
「うわぁ。」
下着も服も脱がなかったから、完全に汚してしまった。ドロドロのびちょびちょで気持ち悪い。
とにかくこれじゃ落ち着かない。
唯一向こうから持ってきた物だったのに。
着てたTシャツもズボンもパンツもダメにしてしまったな。
バッサバサと脱いでいくと、その途中で青海が戻ってきた。
「あぁ、丁度着替えていたか。」
差し出されたのは朱色をした麻の服。
頭からバサッと被って尻が隠れるくらいの貫頭衣と、同じ色のズボンにはベルト代わりの紐も着いていた。
「これ可愛いな。あとそのコップも。」
「気に入ったか?」
「うん。」
てっきり水を飲む器と言ったら竹筒の水筒だと思ったのに、意外にも出てきたのはマグカップみたいに取っての付いた食器だった。
あと、酒を飲むのもこんな感じの言うならビールジョッキみたいな形をしてた。
それがきちんと磨かれていて、少し丸みがあってフォルムが可愛いのだ。
それに、ベルトがわりの紐の先にもキーホルダーみたいなのが着いてて、赤と青の絵の具みたいなのが塗ってある。
成程、これで結べば解けにくいって事か。
「これもしかして動物の骨?」
絵の具が塗られているのは円柱の土台部分だけだ。それ以外の所の感じ、多分骨だ。
でも俺の知ってる形じゃない。
俺が見たのはナイフみたいに曲がった形だけどなんて言うか、綺麗な円錐形をしてる。
そうして喋る合間にも青海は甲斐甲斐しく俺の体を拭っていく。
「それはあの猪の牙から頂いた。」
「うっそ、面影ないけど…っ!?」
目を向いて驚く俺が面白かったらしい。
青海はまた肩を震わせて笑うと、大切な事を教えてくれた。
「父の形見として作った物だ。大した物は何も残していかなかったからな。」
写真も動画も画家もいないこの場所で、思い出と言えるのもは自分の記憶か、遺された品しか無いという事か。
俺は親不孝だけど、3年前に死んだじいちゃんの写真を実はスマホの写真に入れてる。
あと、不謹慎かもだけど遺影の写真も。
何でか、あれ見てるとじいちゃんに励まされてるような気がして。
俺は度々それを見てた。
死んだじいちゃんには出来ない事が、俺にはまだ出来るんだから。
じいちゃんが励ましてくれるなら、生きて色んな事をしても良いんだって気になって。
それで、俺は今まで頑張って来られたんだ。
そのスマホも、家に置いてきたから。
此処には無い。
もう遺影の顔も見れないんだから、俺にもこの猪の牙がどれくらい大事かって事くらい分かる。
「そんな大事なもの、俺に貸して大丈夫なのか。」
「貸すんじゃない。」
「あ、良かった」
「お前に贈りたい。」
「いや、でもこれ、大事な形見だろ、」
「大丈夫だ。」
「大丈夫じゃねぇよ、大事に取っとけよ。」
一体何処をどう見たら大丈夫、なんだ。
大体、形見を他人に渡すなんて言語道断だぞ。
親父さん天国で泣いてるぞ!?
「大丈夫だ、もう一つある。」
そう言って、首から引っ張って見せてくれたのは、立派な牙の形をそのまま残したネックレスだった。
「うわぁ。」
ぐっと反り返った大きな牙は、とてもそこらの猪と同等には見えない。
宴の席で村長が声高に自慢してきたのは、これの半分も無い大きさだった。
「触っても良い?」
「先ずは服を着てからだ。そのままでは風邪をひく。布団に入って暖かくなったら触ってくれ。」
「分かった。」
その晩、俺たちは同じ布団で一緒に寝て。
俺は久しぶりに誰かの人肌を感じながら眠りにいついた。
あ、紺は狐だからノーカンだ。
そもそも人肌じゃないし。
「おやすみ青海。」
「鱗太郎も。」
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