20 / 23
第十九話
しおりを挟む
「全く、アイツらは何をやっておるのだ。」
「紺様。待ち焦がれた恋人同士が、再会してする事なんか決まっておりますよ。」
「ふむ。」
「せっかく元の姿で居ってやったと言うに。」
ーーぼふん。
離れの縁側でひとりと一匹で腰掛けていたが。
煙が立ちあっという間に、狐は黄金の美しい髪の人へと化けた。
「最近はずっとこちらの姿のままですからね。」
「お前に触れるのに、この姿の方が都合が良いからな。」
爪は暗く、色を塗ったような指先で狐は機嫌良さそうに妻の顎を引き寄せた。
「貴様も、充てられたようだなぁ?」
「そ、んな事は、御座いません...っ」
「何時迄も強情な愛い奴め。」
ーーーーー
「青海ぃー。神主って朝、早過ぎじゃね?」
「たわけ、お前ひとりがのんびりし過ぎだっ。」
また狐がくわっ、と口を開けて俺を叱る。
それを雪輪が嗜める。
あぁ。
あの偽巫女で、青海の弟で、紺の奥さんの名前。
元はセツワ、だったそうだが。
嫁入りを機にセツハと呼び名を改めたそうだ。
それでも紺はそんな事気にした風もなく、一声。
「セツ。」
そう呼ぶので、二人はお似合いだなと思う。
それにしても。
異界を作ったり、100年も同じ神主で全く歳を取らないなら。
今まで誰にも怪しまれなかったのか?
「大丈夫なのか、その辺。」
「抜かりないわ。似た様な集落は何処にでもある。」
「へぇ。」
「その最たる天塚神社によってもたらされた大結界だ。抜かりない。」
「ふーん。」
「お主も他人事では無いぞ。」
「え?」
狐は、やれやれと言った風で全く表情筋が豊かだなぁ。
「お主も歳を取らぬ。アレとまた情を交わしたのだろう。」
「そうだけど。なんで今更、」
紺が長々と、叱咤しながら説明してくれた経緯によると。
俺の苗字が関係しているらしい。
榊 鱗太郎。
その榊という苗字が、神と関わりのある者のみが持つ苗字らしい。
そして、鱗の文字。
俺もなんでこれなんだと思ったよ。魚の鱗って嫌じゃん。
けど、理由があった。
あぁ。
あぁ、そうだ。思い出した。
母さんが言うには、夢枕でお稲荷さんがそうしなさいって言った、って。
「まさかっ、あれお前か!?」
「そうだ。」
「お前、あの時言ったよな!?たまたま俺を...じゃあ、最初から。」
最初から俺は選ばれていた。
いやでも、最初と言うと事件列が合わない、だってその頃俺は産まれてないし、青海とだって会ってない。
だって青海は100年前のこの世に居て、あぁあ、訳が分からん。
「神の謀を人間が理解する日は来ぬ。」
「納得出来ません。」
「馬鹿を言うな。鱗紋は主様の一番好きな柄なのだ。アレは厄除け、厄落とし、再生、とピッタリな謂れが着いておる。」
「その代わり、俺の平穏な日々が初めからカウントされてなかったって事か。」
そっか。
そんなもんか。
生き道は決まってるってか?
あの日々は俺の人生の勘定に入ってないって?
「お前には青海波の紋が着いておるだろう。アレは弟君がお好きな柄であった。」
文句を言うな、罰が当たるぞと狐が叱るのでとりあえず口を噤んで、ポケットから引っ張り出す。
タプタプ。
生き字引に対抗し得る文明の叡智は、やっぱスマホだな。
「青海波、紋様、意味。」
「またネットか。」
「そう言う紺こそ、知ってるんだからな。お前最近、スマホゲームのオセロにハマってるって。」
「ただのオセロだっ、」
「いーや違うね、なんか駒が女の子とかキャラになってるオセロでだってセツから聞いたぞ。一日中タブレット抱え込んでゲームしてるってな。」
俺の勘定は帳尻が合いそうだ。
松様も、沼の側に社を建てて稲置様と同じ様に青海が毎日、祝詞をあげて祈っている。
すべての悪いこと
災いを招くこと
それから
不浄を招くことが起こったとしたら
どうかそれらを取り除き清めてくださいますように
ーーーーー
なぁ。
前世の記憶があんたには有るか?
もしかしたらそこは、座りの悪い穢れの土地で可愛いマツリ様ってのが居なかったか?
もしそんな記憶があるのなら。
あんたはもしかしたら。
お引越し組なのかもな。
ようこそ、今世へ。
さぁ、俺と松様に胸糞悪い話を置いていけ。
そんで隣の稲置様に頭を撫でてもらうと良い。
側にいる狐の毛並みはもふもふで、その嫁はかなりの美人だ。
俺は、そうだな。
只の神社に嫁いだ男の嫁だよ。
俺の夫も見てくれはかなり良い。
出くわすだけでも奇跡の稲置神社だ。
ぜひ、寄ってみてくれ。
完
ーーー
ここまで読んでくれてありがとうございます。
お陰でやっと完結させられました。
「紺様。待ち焦がれた恋人同士が、再会してする事なんか決まっておりますよ。」
「ふむ。」
「せっかく元の姿で居ってやったと言うに。」
ーーぼふん。
離れの縁側でひとりと一匹で腰掛けていたが。
煙が立ちあっという間に、狐は黄金の美しい髪の人へと化けた。
「最近はずっとこちらの姿のままですからね。」
「お前に触れるのに、この姿の方が都合が良いからな。」
爪は暗く、色を塗ったような指先で狐は機嫌良さそうに妻の顎を引き寄せた。
「貴様も、充てられたようだなぁ?」
「そ、んな事は、御座いません...っ」
「何時迄も強情な愛い奴め。」
ーーーーー
「青海ぃー。神主って朝、早過ぎじゃね?」
「たわけ、お前ひとりがのんびりし過ぎだっ。」
また狐がくわっ、と口を開けて俺を叱る。
それを雪輪が嗜める。
あぁ。
あの偽巫女で、青海の弟で、紺の奥さんの名前。
元はセツワ、だったそうだが。
嫁入りを機にセツハと呼び名を改めたそうだ。
それでも紺はそんな事気にした風もなく、一声。
「セツ。」
そう呼ぶので、二人はお似合いだなと思う。
それにしても。
異界を作ったり、100年も同じ神主で全く歳を取らないなら。
今まで誰にも怪しまれなかったのか?
「大丈夫なのか、その辺。」
「抜かりないわ。似た様な集落は何処にでもある。」
「へぇ。」
「その最たる天塚神社によってもたらされた大結界だ。抜かりない。」
「ふーん。」
「お主も他人事では無いぞ。」
「え?」
狐は、やれやれと言った風で全く表情筋が豊かだなぁ。
「お主も歳を取らぬ。アレとまた情を交わしたのだろう。」
「そうだけど。なんで今更、」
紺が長々と、叱咤しながら説明してくれた経緯によると。
俺の苗字が関係しているらしい。
榊 鱗太郎。
その榊という苗字が、神と関わりのある者のみが持つ苗字らしい。
そして、鱗の文字。
俺もなんでこれなんだと思ったよ。魚の鱗って嫌じゃん。
けど、理由があった。
あぁ。
あぁ、そうだ。思い出した。
母さんが言うには、夢枕でお稲荷さんがそうしなさいって言った、って。
「まさかっ、あれお前か!?」
「そうだ。」
「お前、あの時言ったよな!?たまたま俺を...じゃあ、最初から。」
最初から俺は選ばれていた。
いやでも、最初と言うと事件列が合わない、だってその頃俺は産まれてないし、青海とだって会ってない。
だって青海は100年前のこの世に居て、あぁあ、訳が分からん。
「神の謀を人間が理解する日は来ぬ。」
「納得出来ません。」
「馬鹿を言うな。鱗紋は主様の一番好きな柄なのだ。アレは厄除け、厄落とし、再生、とピッタリな謂れが着いておる。」
「その代わり、俺の平穏な日々が初めからカウントされてなかったって事か。」
そっか。
そんなもんか。
生き道は決まってるってか?
あの日々は俺の人生の勘定に入ってないって?
「お前には青海波の紋が着いておるだろう。アレは弟君がお好きな柄であった。」
文句を言うな、罰が当たるぞと狐が叱るのでとりあえず口を噤んで、ポケットから引っ張り出す。
タプタプ。
生き字引に対抗し得る文明の叡智は、やっぱスマホだな。
「青海波、紋様、意味。」
「またネットか。」
「そう言う紺こそ、知ってるんだからな。お前最近、スマホゲームのオセロにハマってるって。」
「ただのオセロだっ、」
「いーや違うね、なんか駒が女の子とかキャラになってるオセロでだってセツから聞いたぞ。一日中タブレット抱え込んでゲームしてるってな。」
俺の勘定は帳尻が合いそうだ。
松様も、沼の側に社を建てて稲置様と同じ様に青海が毎日、祝詞をあげて祈っている。
すべての悪いこと
災いを招くこと
それから
不浄を招くことが起こったとしたら
どうかそれらを取り除き清めてくださいますように
ーーーーー
なぁ。
前世の記憶があんたには有るか?
もしかしたらそこは、座りの悪い穢れの土地で可愛いマツリ様ってのが居なかったか?
もしそんな記憶があるのなら。
あんたはもしかしたら。
お引越し組なのかもな。
ようこそ、今世へ。
さぁ、俺と松様に胸糞悪い話を置いていけ。
そんで隣の稲置様に頭を撫でてもらうと良い。
側にいる狐の毛並みはもふもふで、その嫁はかなりの美人だ。
俺は、そうだな。
只の神社に嫁いだ男の嫁だよ。
俺の夫も見てくれはかなり良い。
出くわすだけでも奇跡の稲置神社だ。
ぜひ、寄ってみてくれ。
完
ーーー
ここまで読んでくれてありがとうございます。
お陰でやっと完結させられました。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる