ヘイそこのいっぺん死んだ彼女! 俺と一緒にドラゴン狩らない?

尾形モモ

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「え、あ、その……はい!」

 一瞬、躊躇ったもののレイチェルはミシェルのお願いを快く引き受ける。

 ミシェルの手によってコンパクトになったものの、獣臭いそれは重く一人で持つのは大変だろう。逡巡はしたもののレイチェルはそれを隠し、ミシェルから熊の肉の一部を受け取る。



 ――貴族令嬢だったレイチェルにとって、「死んだばかりの動物の肉を持ち運ぶ」というのは未知の体験だ。


 そこに抵抗がないわけではない。どことなく嫌な気分にはなるしそこそこ体力のいる行動でもある。
 だが、今のレイチェルは「ミシェルの仲間」でありミシェルもまた自分の、「ヘパイストスの加護」を信じて協力を仰いでくれたのだ。その期待に応えないわけにはいかない、むしろ応えたい。ミシェルは「ヘパイストスの加護」の力があるからといえ個人としてのレイチェルを、その功績を認めてくれた人間なのだから……腹を括ったレイチェルは熊の亡骸の一部を、しっかりと抱きしめる。その眼差しは幼児が初めて母親から手伝いを言いつけられたかのような、純粋で真剣な眼差しだった。

 そんな顔をしたレイチェルに、ミシェルは意外そうな顔を見せる。

「頼んでおいて、なんだけど……意外とあっさり引き受けてくれるんだね。結構、嫌がる人も多いのに……ひょっとして、こういうことをするのは初めてじゃないのかい?」

「え? いや、そういうわけではないんですけど……」

 レイチェルは自身の心情をどう表現しようか戸惑うが、それでもミシェルの目を真っすぐに見て答える、

「その、私はフェスタ―王子が私を『新しい仲間』だと言ってくれたことも、ミシェルさんが私の加護を認めて褒めてくださったことも、とてもすごく嬉しかったんです。だから……その気持ちに少しでも応えたいと思って。自分にできることなら、ぜひお力になりたいと思って……だから、その、お手伝いをしたいと考えているだけなんです」



 私の家族は、そんなこと誰も言ってくれなかったから。



 そう続けたくなったレイチェルだが、その言葉はぐっと飲み込む。

 ガーランド家内にいた頃の自分。その境遇に耐え切れず、自死を選んだが後悔したこと。それを淡々と話すのは、まだレイチェルには無理だった。きっと話し始めたら、感情が決壊しボロボロと涙を零してしまう……そう考えたレイチェルはミシェルの質問を拒むように、「他に運ぶものはありませんか?」と尋ねる。

「……うん、まぁとりあえずこれぐらいでいいかな。まずは君の『ヘパイストスの加護』が本物だったってことと、この戦利品の報告をしなければならないから……後は他に応援を呼んでから回収しよう。とにかく今は、フェスタ―王子に『君がすごかった』ってことを伝えなければいけないからね」



 そうと決まれば、急ごう。



 何かを察したのか、詳しくはレイチェルを詰問しようとしなかったミシェル。今のレイチェルにとってそれはミシェルなりの心遣いで、ひどくありがたいものであり――これから正式に「フェスタ―王子の仲間」として扱われることになるだろうレイチェルにとって大きな心の支えになっているようだった。
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