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土の神殿へ
土の神殿へ⑥
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公爵のお椀を受け取り、隣の席から空になった器も奪い取り、それぞれにオーク汁を注ぐ。
普段、給仕は使用人にさせているマリなのだが、自分の作った料理は出来るだけ自分で盛り、振る舞う様にしている。人の口に入る物を作っている以上、最後まで責任を示したい感じだ。
試験体066にご飯を盛ってもらったのも、そういう感覚を分かってほしいと思ったからだ。
二人にお椀を返すと、再びモリモリと食べてくれる。気持ちの良い食べっぷりだ。それを見ていると、昼間の出来事の所為で下がり気味だった気分が上向く。
だからなのか、らしくも無い言葉が口から出ていた。
「二人が居てくれて良かった……かも。私一人だけだったら、セバスちゃんを奪われた後、不貞腐れてキャンプカーに引き篭もるだけだったな」
(うげ……)
言葉にしてしまった後ではもう遅い。照れ隠しに、オーク汁を豪快にあおる。
「マリさんに限って、それは無さそう……」
「うん。マリちゃんは僕達が居なくても、どうにかしてセバス君を助けようと行動していたと思うよ。無駄に内気な子アピールされても、反応に困る」
「なにそれ……、私にだって繊細なところはあるんですけどっ」
側に居てくれた事に感謝しただけなのに、何故だか微妙に貶されている。この二人はマリの神経がザイルで出来ているとでも思っているのだろうか?
「怒らないで。これでも褒めてるんだよ。僕が土の神殿までの道中を楽しんでいられるのは、君がシッカリしてくれているからだ。誰にでも出来る事じゃない」
「う……うん……んん?」
テーブルの向かい側の、多くの女を落としてきたであろう笑顔。マリは反射的に頷いてしまう。しかし、彼の言葉を反芻すると、何かが引っかかる。
(それっぽい事言ってるけど、結構自己中!!)
思わず半眼になってしまうマリである。
「ところでさ、え~と、試験体君?」
「はい……」
「マリちゃんの料理から何か感じられない?」
ギクリとする。何かヤバイ効果でもあったんだろうか?
「実は、マリさんに出された料理を食べると毎回、ちょっと身体の変化がある気がしている……。体が軽くなるんだ。食べ慣れない物ばかりだから、そのせいなのかと思っていたけど……」
「やっぱりそうか。何だろうね、コレ。実は昨日親戚と飲みすぎて、二日酔い気味だったんだけど、マリちゃんの料理を食べたらスッキリしている」
「このオーク汁に使った味噌は、二日酔い予防に効果があるはずだよ。二日酔いになってしまってからでもちょっとは効くのかな?」
食材それぞれが持つ効用については、まだ勉強中なので、他人に語るのは少々自信が無い。
「食材の効用だけなのかな? マリちゃんの料理は、どこか魔法染みた効果がある気がする。口に入れた瞬間体内の様子が変わるというか……」
「ああ、言われてみると、そんな気も……」
公爵と試験体066は、料理を作った本人を置いて、勝手に納得してしまっている。
「そんな事言われても……。アンタ、一緒に料理してたんだから、私が特殊な事をしてないのは分かるでしょ?」
「一般的な料理の仕方がわからないから、どうとも言えない……」
まぁ、その通りなんだろうけど、証人として使えないのは、ガッカリだ。思わず「もっと普通を学んで!」と返してしまった。
「マリちゃんが無意識に何かしているという事なのかな。良い効果だから、深刻に考えなくてもいいのかもしれないけど」
「私、将来は食に関する職に就きたいの! 自分が作った物の事、もっと知りたいよ!」
「そうなんだね。だったら……エイブラッドに聞くのが一番かもしれない。この乗り物の進み具合なら、明日にでも神殿に着くだろうしね」
「エイブラッド……って誰?」
「さっき言った、土の神殿に居る、僕を嫌っている大神官様だよ! 僕が魔法学校に通っていたいた時の同級生でもあるね」
これから会いに行こうとしている相手の名前だったらしい。それにしても、元同級生から嫌われているという事は、在学中に何かトラブルがあったのだろうか? ちょっと気になる。
「その人と何かあったの?」
「ん~。単に逆恨みされているだけ。彼が好きだった子が、僕に好意を抱いていたみたいで、彼と一緒にいる時に告白されたんだよね。僕の好みじゃないから、ふったけど」
「なるほど。それは確かに逆恨みなのかな……。エイブラッドさんにとっては大事件だったんだろうけど」
「まぁ、ね。それまでは仲良くしてたのに、こんなに簡単に友情が壊れるとは思わなかったな。彼は女性を信じられなくなって、神職に就く事に……。妖精になりたいんだってさ」
「あ、そう……。異世界って色々あるんだね」
「僕の情報だと、元の世界でも、同じみたいだけどね……」
「どうでもいいわ!」
分かってるんだか分かってないんだか不明な試験体066の肩をべしりと叩く。マリ達の様子を笑いながら見ていた公爵は、「あ……」と何かを思い出した様なそぶりをした。
「マリちゃん、エイブラッドに鑑定してもらうために、何か料理を作ってみない? あいつは甘い物が好きだから、賄賂にも使えるかも」
普段、給仕は使用人にさせているマリなのだが、自分の作った料理は出来るだけ自分で盛り、振る舞う様にしている。人の口に入る物を作っている以上、最後まで責任を示したい感じだ。
試験体066にご飯を盛ってもらったのも、そういう感覚を分かってほしいと思ったからだ。
二人にお椀を返すと、再びモリモリと食べてくれる。気持ちの良い食べっぷりだ。それを見ていると、昼間の出来事の所為で下がり気味だった気分が上向く。
だからなのか、らしくも無い言葉が口から出ていた。
「二人が居てくれて良かった……かも。私一人だけだったら、セバスちゃんを奪われた後、不貞腐れてキャンプカーに引き篭もるだけだったな」
(うげ……)
言葉にしてしまった後ではもう遅い。照れ隠しに、オーク汁を豪快にあおる。
「マリさんに限って、それは無さそう……」
「うん。マリちゃんは僕達が居なくても、どうにかしてセバス君を助けようと行動していたと思うよ。無駄に内気な子アピールされても、反応に困る」
「なにそれ……、私にだって繊細なところはあるんですけどっ」
側に居てくれた事に感謝しただけなのに、何故だか微妙に貶されている。この二人はマリの神経がザイルで出来ているとでも思っているのだろうか?
「怒らないで。これでも褒めてるんだよ。僕が土の神殿までの道中を楽しんでいられるのは、君がシッカリしてくれているからだ。誰にでも出来る事じゃない」
「う……うん……んん?」
テーブルの向かい側の、多くの女を落としてきたであろう笑顔。マリは反射的に頷いてしまう。しかし、彼の言葉を反芻すると、何かが引っかかる。
(それっぽい事言ってるけど、結構自己中!!)
思わず半眼になってしまうマリである。
「ところでさ、え~と、試験体君?」
「はい……」
「マリちゃんの料理から何か感じられない?」
ギクリとする。何かヤバイ効果でもあったんだろうか?
「実は、マリさんに出された料理を食べると毎回、ちょっと身体の変化がある気がしている……。体が軽くなるんだ。食べ慣れない物ばかりだから、そのせいなのかと思っていたけど……」
「やっぱりそうか。何だろうね、コレ。実は昨日親戚と飲みすぎて、二日酔い気味だったんだけど、マリちゃんの料理を食べたらスッキリしている」
「このオーク汁に使った味噌は、二日酔い予防に効果があるはずだよ。二日酔いになってしまってからでもちょっとは効くのかな?」
食材それぞれが持つ効用については、まだ勉強中なので、他人に語るのは少々自信が無い。
「食材の効用だけなのかな? マリちゃんの料理は、どこか魔法染みた効果がある気がする。口に入れた瞬間体内の様子が変わるというか……」
「ああ、言われてみると、そんな気も……」
公爵と試験体066は、料理を作った本人を置いて、勝手に納得してしまっている。
「そんな事言われても……。アンタ、一緒に料理してたんだから、私が特殊な事をしてないのは分かるでしょ?」
「一般的な料理の仕方がわからないから、どうとも言えない……」
まぁ、その通りなんだろうけど、証人として使えないのは、ガッカリだ。思わず「もっと普通を学んで!」と返してしまった。
「マリちゃんが無意識に何かしているという事なのかな。良い効果だから、深刻に考えなくてもいいのかもしれないけど」
「私、将来は食に関する職に就きたいの! 自分が作った物の事、もっと知りたいよ!」
「そうなんだね。だったら……エイブラッドに聞くのが一番かもしれない。この乗り物の進み具合なら、明日にでも神殿に着くだろうしね」
「エイブラッド……って誰?」
「さっき言った、土の神殿に居る、僕を嫌っている大神官様だよ! 僕が魔法学校に通っていたいた時の同級生でもあるね」
これから会いに行こうとしている相手の名前だったらしい。それにしても、元同級生から嫌われているという事は、在学中に何かトラブルがあったのだろうか? ちょっと気になる。
「その人と何かあったの?」
「ん~。単に逆恨みされているだけ。彼が好きだった子が、僕に好意を抱いていたみたいで、彼と一緒にいる時に告白されたんだよね。僕の好みじゃないから、ふったけど」
「なるほど。それは確かに逆恨みなのかな……。エイブラッドさんにとっては大事件だったんだろうけど」
「まぁ、ね。それまでは仲良くしてたのに、こんなに簡単に友情が壊れるとは思わなかったな。彼は女性を信じられなくなって、神職に就く事に……。妖精になりたいんだってさ」
「あ、そう……。異世界って色々あるんだね」
「僕の情報だと、元の世界でも、同じみたいだけどね……」
「どうでもいいわ!」
分かってるんだか分かってないんだか不明な試験体066の肩をべしりと叩く。マリ達の様子を笑いながら見ていた公爵は、「あ……」と何かを思い出した様なそぶりをした。
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