米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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土の神殿の大神官

土の神殿の大神官①

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 一夜明け、マリは再びキッチンスペースに立つ。

 昨日は夕食後、食器類を食洗機にかけたまではいいが、どうしても睡魔に勝てなくなり、二人に毛布を渡してすぐに私室に引っ込んでしまった。杜撰な扱いをしてしまったので、公爵に嫌味の一つも言われるかと思ったが、そんな事もなかった。ソファの上で毛布に包まって寝るのは、その辺の村の宿に泊まるよりも、ずっと過ごしやすかったらしい。

 やっぱり、セバスちゃんが居ないと、この辺の気遣いが行き届かない。盛大にやらかす前に戻って来てもらおうと、思ったのだった。

 三人で昨日残った料理や、簡単なサラダで朝食を済ませた後、マリは、これから向かう神殿の大神官へ渡すお菓子を作る事にした。

 オーブンがチーンと音を鳴らし、焼き上がりを教えてくれる。オーブンの扉を開き、耐熱トレーを取り出す。
 その上に乗っているのは、手の平サイズのカップケーキだ。S◯x and the Cityというドラマの中で主人公が食べて居た事から流行したこのお菓子は手土産にちょうどいい。

 昨日は母の祖国、日本の料理を作ってみたが、マリはアメリカらしい食文化も大好きだ。

 カップケーキの生地は、リキュールや食紅を使い、ピンクとライムグリーン、アイスブルーの三色にした。その上に白や青のバタークリームでアイシングし、カラフルなチョコスプレーをかける。日本人の中には、こういう青い食べ物を見ると食欲が減退する人達が居るようなのだが、マリはこういう遊びゴコロ満点の料理も好んでいたりする。チープな見た目だけど、味は良いはずなのだ。

 バタークリームを乾かすためにカウンターに運ぶと、白髪の少年が目を丸くして様子を見ていた。

「あ、もう終わった?」

「うん。土鍋はもう粘ついてないから、大丈夫な……はず」

 朝食の後、片付けをしていたマリを、この少年は手伝いたいと言ってきた。なので、体力を使う、鍋洗いを任せていた。

「サンキュー。お礼にオヤツあげるよ」

 青い生地に白いバタークリームを組み合わせたカップケーキを手渡す。彼はカップケーキを目の高さまで持ち上げ、マジマジと見る。

「これ、カップケーキ? 僕の記憶にある物とは随分違う……」

「ああ、食べたことあるんだね。あれだけ流行してたら、女子とかからプレゼントされるか~」

「いや、記憶元の……、前代勇者の体験……。このお菓子って、キツネ色の、素朴なお菓子だった気がするんだよ」

「そういう素朴で安全な見た目もいいけど、今日は攻めていきたい気分! インパクト勝負!」

 やや不安定そうな表情をする彼に気づかないふりをし、元気に振る舞う。少しずつ彼を理解してきているけど、自分が生きてきた中で、経験した事とは別の記憶が紛れこむのは、彼自身、結構不快な気分になりそうだと想像している。マリだったらたぶん、耐えられない。だから彼には、目の前の事を重要視してほしいと思う。そう思う事自体が傲慢ではあるけど……。

「そう、だね。このカップケーキの方が、見てて元気になれる……」

「でしょ! でも見てるだけじゃ勿体ないから食べてみてよ」

 パクリと一口齧る彼に、マリは今朝淹れたルイボスティーをグラスに注ぎ、渡してやる。

「有難う。……しっとりしてて美味しい。記憶の味より、ずっと美味しいな……」

「当然!」

 褒められるとすぐ調子にのるマリである。少年の様子も淡々としたものに戻っていて、少しホッとする。

「あ、向こうに見える茶色の丘が土の神殿かも」

 彼の指差す方を見ると、遠目に見える山の影から赤茶色の丘が見えてきていた。しかしその光景を見て、マリは、首を傾げた。
 神殿というと、ギリシャにあるパルテノン神殿を思い出すけど、土の神殿には建物らしい物は見当たらない。

「屋根とか無い所なの? 雨が降ったらずぶ濡れになって大変だろうな」

「それは心配いらないかも……。というか、行くと少し驚くかな」

 詳細を語らないという事は、マリに驚いてほしいという事なんだろうか? この少年にもそんなエンターテイナーみたいな部分があるのかと、少し面白く思う。

「ふ~ん。楽しみにしておく」

 それから三十分程で、土の神殿に着き、マリは大慌てでカップケーキをラッピングした。

「それがエイブラッドに持っていくやつ? 凄い毒々しい色合いだね!」

 朝からずっと運転してくれていた公爵が、キャンプカーを停車させた後、カウンターの様子を伺いに来た。

「当然毒は入ってないよ!」

「疑ってるわけじゃないよ! それにあいつも鑑定スキル持ちだから、食べる前に調べてみるだろうし、心配いらないだろう。っていうか、僕にも一つ頂戴!」

「しょうがないな……」

 カップケーキの味見をし始める公爵を待った後、三人でキャンプカーを下りる。公爵の判断で、この目立つ乗り物を近くに停めなかったため、土の神殿まで、やや長い道のりを歩く事になった。

 神殿にかなり近くと、それは丘ではなく、それ自体が赤茶色の外壁の建造物だという事が見て取れた。
 赤茶色の巨大なブロックを半球型に積み上げたそれは、ヤンキースタジアム程も大きく、圧倒される。
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