33 / 156
土の神殿の大神官
土の神殿の大神官②
しおりを挟む
赤茶色のドームに近付いて行くと、入り口付近の様子が良く見えた。道が平らに整備され、その所々に、古めかしい鎧に身を包んだ者達が立っている。
「あの人達って、神殿で働いているの?」
マリが鎧の人物達を指差し、質問すると、少し前を歩いていた公爵が頷いた。
「彼等は神殿騎士だよ。土の神殿に所属しているんだ」
「神殿は神聖な場所だと思ってたんだけど、あんなに武装した人達が必要なんだね。ちょっと意外だな」
「レアネーに現れた様な、高位の魔族は、人々の神への信仰心を嫌っている。瘴気は神の加護が薄い者ほど侵されやすいものだからね」
「神を降ろす神殿は……。魔族が忌む場……。攻撃の対象になりやすい」
公爵の言葉をついで、白髪の少年が、神殿という場所の持つ危うさを教えてくれる。この世界は、神との距離がかなり近いという事なんだろう。そして加護の有る無しの違いは、人々の信仰心の有無と紐ずくらしい。
「この世界の宗教は、大切な意味を持つのか」
「そういう事! 敬虔な者は瘴気へのバリアとも言える加護を得られるのさ! 神に祈るだけでも瘴気を払えるんだけどね」
「なんか……お手軽だね」
会話を交わしながら歩いていく。土の神殿へと続く直線の道に差し掛かると、神殿騎士達が鎧をガチャガチャ鳴らしながら駆け寄って来た。
「そこの者達! 止まれ!」
野太い声を張り上げられ、マリは不快感に眉根を寄せる。
「この先は土の神殿! 選ばれし者のみ通行を許す!」
マリ達を威嚇するような態度のオッサンに対し、公爵は「まぁ、落ち着いて」と、穏やかな声で宥める。
「僕はここ、フレイティアを治める立場にあるイリア・ダルザスだ。フレイティア公爵位を持つと言った方が伝わりやすいかな? 土の神殿の大神官エイブラッド殿に面会しに来た。通してもらおうか」
「なんっ……ですと!? 確かに……聞く話によると、公爵は二十代後半の美丈夫と聞くが……。ぐぬ……、だ、だが、そんな怪しい者達を連れて訪問するなど、有り得ない、様な……。証拠は、証拠はお有りですかな!?」
フレイティア公爵のネームバリューは絶大な様で、マリ達に偉そうに振舞っていた神殿騎士の言葉遣いが敬語に変わっている。しかし、ダウンジャケットにジーパン姿のマリと、相変わらず入院患者の様な服装の白髪の少年を連れているという事が胡散臭さを醸し出しているらしく、すんなりと公爵の言葉を信じなかった様だ。そんなオッサンに公爵はめんどくさそうな表情をし、右手を前に突き出した。
彼の手の平から、黄金の炎が生み出される。その炎は不思議な事に、一羽の鳥の形になった。
「フレイティア領主である証だよ。僕にしか使えない魔法さ。生きているうちに一度でも拝めた事を有り難く思うがいい」
「な、なんと!! 確かに、その黄金の可愛い小鳥は領主様の証と聞く! 貴方様は正真正銘の公爵様に違いあるますまい! ご無礼の数々、失礼致しました! お前達! 何をボサッとしておる! さっさとエイブラッド様にお伝えするのだ!」
「「了解致しました!!」」
三人の神殿騎士のうち、下っ端らしい二人が転がる様にドームに向かって走って行く。今のやり取りから察するに、公爵という立場は、神殿という組織に対しても絶大な影響力を持つのだろう。
「公爵って凄い人なんだね。新しい物好きの暇人なのかと思ってた」
「新しい物好きの暇人で間違いはないよ。有事の際は、爵位を活用しているだけ」
神殿騎士は、公爵と気軽に言葉を交わすマリの姿を上から下まで観察している。たぶん、どういう態度で接するべきか値踏みしているのだろう。この人物にとって価値ある自己紹介なんて出来ないだろうから、マリは知らんぷりした。
「土の神殿にご案内致します。神官達は現在会議中ですので、もしかすると暫しお持ちしてもらうかもしれませぬ」
「構わないよ。案内して」
「かしこまりました!」
先を歩くオッサンの後を三人でついて行く。なんとなく試験体066の様子が気になり、後ろを振り返ると、彼は空を見上げていた。
「どうかした?」
「……鳥が、忙しそう……」
なんという不思議ちゃん。マリは「あ、そう……」としか返せなかった。しょうがなく空の様子を確認すると、近くの森の上空に多くの鳥が旋回していた。
(なんだろ……?)
確かに少し様子がおかしい気もする。見ている間に、鳥達は、一斉に飛び去った。
◇
土の神殿は、外側より内部の方が凄かった。地上に出ていたのはほんの一部だけで、地下に向かって広大な空間が広がっていたのだ。マリ達は神殿の下働きらしき者達の人力エレベーターでかなり下の階まで下ろされ、応接室に通された。
美しい少年が運んで来た、ハスの葉のお茶に似た味の飲み物を楽しむ事三十分程で、応接室のドアが開いた。
現れたのは、巨大な帽子を被った男だ。帽子の上部にプロペラの様な装飾品がのっていて、回転して飛んでいかないかと心配になる。
「貴様……どの面下げてっ!」
「やぁ、エイブラッド! 久しぶり。素敵な衣装だね!」
この人物が土の神殿の大神官エイブラッドらしい。帽子から視線を下げると、ナイフの様に鋭い顔の持ち主だった。
「あの人達って、神殿で働いているの?」
マリが鎧の人物達を指差し、質問すると、少し前を歩いていた公爵が頷いた。
「彼等は神殿騎士だよ。土の神殿に所属しているんだ」
「神殿は神聖な場所だと思ってたんだけど、あんなに武装した人達が必要なんだね。ちょっと意外だな」
「レアネーに現れた様な、高位の魔族は、人々の神への信仰心を嫌っている。瘴気は神の加護が薄い者ほど侵されやすいものだからね」
「神を降ろす神殿は……。魔族が忌む場……。攻撃の対象になりやすい」
公爵の言葉をついで、白髪の少年が、神殿という場所の持つ危うさを教えてくれる。この世界は、神との距離がかなり近いという事なんだろう。そして加護の有る無しの違いは、人々の信仰心の有無と紐ずくらしい。
「この世界の宗教は、大切な意味を持つのか」
「そういう事! 敬虔な者は瘴気へのバリアとも言える加護を得られるのさ! 神に祈るだけでも瘴気を払えるんだけどね」
「なんか……お手軽だね」
会話を交わしながら歩いていく。土の神殿へと続く直線の道に差し掛かると、神殿騎士達が鎧をガチャガチャ鳴らしながら駆け寄って来た。
「そこの者達! 止まれ!」
野太い声を張り上げられ、マリは不快感に眉根を寄せる。
「この先は土の神殿! 選ばれし者のみ通行を許す!」
マリ達を威嚇するような態度のオッサンに対し、公爵は「まぁ、落ち着いて」と、穏やかな声で宥める。
「僕はここ、フレイティアを治める立場にあるイリア・ダルザスだ。フレイティア公爵位を持つと言った方が伝わりやすいかな? 土の神殿の大神官エイブラッド殿に面会しに来た。通してもらおうか」
「なんっ……ですと!? 確かに……聞く話によると、公爵は二十代後半の美丈夫と聞くが……。ぐぬ……、だ、だが、そんな怪しい者達を連れて訪問するなど、有り得ない、様な……。証拠は、証拠はお有りですかな!?」
フレイティア公爵のネームバリューは絶大な様で、マリ達に偉そうに振舞っていた神殿騎士の言葉遣いが敬語に変わっている。しかし、ダウンジャケットにジーパン姿のマリと、相変わらず入院患者の様な服装の白髪の少年を連れているという事が胡散臭さを醸し出しているらしく、すんなりと公爵の言葉を信じなかった様だ。そんなオッサンに公爵はめんどくさそうな表情をし、右手を前に突き出した。
彼の手の平から、黄金の炎が生み出される。その炎は不思議な事に、一羽の鳥の形になった。
「フレイティア領主である証だよ。僕にしか使えない魔法さ。生きているうちに一度でも拝めた事を有り難く思うがいい」
「な、なんと!! 確かに、その黄金の可愛い小鳥は領主様の証と聞く! 貴方様は正真正銘の公爵様に違いあるますまい! ご無礼の数々、失礼致しました! お前達! 何をボサッとしておる! さっさとエイブラッド様にお伝えするのだ!」
「「了解致しました!!」」
三人の神殿騎士のうち、下っ端らしい二人が転がる様にドームに向かって走って行く。今のやり取りから察するに、公爵という立場は、神殿という組織に対しても絶大な影響力を持つのだろう。
「公爵って凄い人なんだね。新しい物好きの暇人なのかと思ってた」
「新しい物好きの暇人で間違いはないよ。有事の際は、爵位を活用しているだけ」
神殿騎士は、公爵と気軽に言葉を交わすマリの姿を上から下まで観察している。たぶん、どういう態度で接するべきか値踏みしているのだろう。この人物にとって価値ある自己紹介なんて出来ないだろうから、マリは知らんぷりした。
「土の神殿にご案内致します。神官達は現在会議中ですので、もしかすると暫しお持ちしてもらうかもしれませぬ」
「構わないよ。案内して」
「かしこまりました!」
先を歩くオッサンの後を三人でついて行く。なんとなく試験体066の様子が気になり、後ろを振り返ると、彼は空を見上げていた。
「どうかした?」
「……鳥が、忙しそう……」
なんという不思議ちゃん。マリは「あ、そう……」としか返せなかった。しょうがなく空の様子を確認すると、近くの森の上空に多くの鳥が旋回していた。
(なんだろ……?)
確かに少し様子がおかしい気もする。見ている間に、鳥達は、一斉に飛び去った。
◇
土の神殿は、外側より内部の方が凄かった。地上に出ていたのはほんの一部だけで、地下に向かって広大な空間が広がっていたのだ。マリ達は神殿の下働きらしき者達の人力エレベーターでかなり下の階まで下ろされ、応接室に通された。
美しい少年が運んで来た、ハスの葉のお茶に似た味の飲み物を楽しむ事三十分程で、応接室のドアが開いた。
現れたのは、巨大な帽子を被った男だ。帽子の上部にプロペラの様な装飾品がのっていて、回転して飛んでいかないかと心配になる。
「貴様……どの面下げてっ!」
「やぁ、エイブラッド! 久しぶり。素敵な衣装だね!」
この人物が土の神殿の大神官エイブラッドらしい。帽子から視線を下げると、ナイフの様に鋭い顔の持ち主だった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる