米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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レアネー市救出作戦

レアネー市救出作戦①

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 あくる朝、何事もなくベッドの上で目覚めたマリは、昨晩土の神ケレースと会った事を、ただの夢だったのか、現実だったのか判別出来なかった。高いプライドの所為で、試験体066と公爵に打ち明けられず、モヤモヤしたまま朝食を済ませ、キャンプカーを土の神殿の程近くまで運転してきた。
 タイミング良く馬車を三台運んで来た術者達と連携し、キャンプカーと客車との連結作業をしていると、神殿入口からエイブラッドが現れた。
 その顔を見て、土の神が彼と面識がありそうだった事を思い出したマリは、エイブラッドに、彼女との出会いを話してみることにした。

「ケレース様と会っただと!?」

 マリの話を聞いた後、大袈裟に驚く彼に複数の視線が集まる。コッソリ相談したかったのに、思うようにいかず、マリは肩を竦める。

「もしかしたら単なる夢かもしれないから、驚かないでよ。ええと、容姿は……白から萌葱色にグラデーションする長い髪に、桃色の瞳。すっごい美少女だった」

「あの方は、三年程の間誰の前にも現れていないはず……。だが、偶像崇拝を嫌う彼女の意向を汲んで容姿は一般には伝わっていないのに、貴女の言う特徴は俺が良く知る方と一致している。貴女達が会ったのは真実なのだろうな……。何か仰っていたか?」

「お供物が不味いって言ってた。油っぽすぎるみたい」

 マリの話に、エイブラッドは低く唸った。

「お供物は三年程前から土の神殿の料理人に任せていたのだが……。はっ! そういえばケレース様が俺の呼びかけに応えなくなったのは、ちょうど三年前! まさか!?」

「そのまさかだと思うよ。彼女、渋々料理を食べてたけど、凄い不満そうだった。アンタを信用しなくなったんじゃない?」

「そんな! ケレース様は俺の心の支えだったのに! 普通の女を信用出来なくなった俺の唯一の……。そんな些細なことで関係が崩れてしまうなんて!」

「アンタの心の持ち様が、そもそも裏切りなんじゃないの……? それに、食の恨みは怖いもんだよ」

 エイブラッドと話しているうちに、ケレースが気の毒になってくる。せめて味覚だけでも救われてほしい。

「お供物係は交替させなよ! 不味い物を毎日食べさせられる苦痛を想像してみるといい!」

「確かに……そうだな……。神がそこまで味に拘ると思っていなかったのだ。悪いことをした……。レアネーから帰って来たら料理人を交替させよう」

 ケレースが飯マズに苦しまなくて良くなりそうで、ホッとする。あれ程の美少女が苦しむのはもう見たくないのだ。

「マリちゃん! 作業完了だよ。術者達の準備も完了してるし、いつでも出発できる!」

 少し離れたところから公爵が手を振り、状況を伝えてくれる。キャンプカーの方を見ると、客車が三台繋がっていて、術者達が乗りこんでいた。

「作業早いね! エイブラッドさんはキャンプカーの方に乗る?」

「あぁ。俺含めて十名はキャンプカーとやらに乗せてもらう。馬車の客車には五人づつだ。宜しく頼む」

「こちらこそ宜しく! あまり長時間運転すると、客車に乗ってる術者さん達が辛くなるかもしれないから、一時間毎に食事やトイレ休憩を挟むよ」

「そうしてもらうと助かる。術者達には俺から今の言葉を伝えておこう」

「オッケー!」

「それと、その……。マリ・ストロベリーフィールド嬢。ケレース様にもう一度お会い出来たならば、また俺の呼びかけに応えてほしいと伝えてくれないだろうか?」

 レアネー市や部下の事よりも、恋愛感情優先かい!? と突っ込みたくなる。だけど相手はいい大人なので、半眼で見つめるに留める。

「まー考えておく。神官やめて、一般人の恋人作る方が効率良さそうだけど」

「俺は、妖精になってでも、彼女に一生を捧げるつもりだ」

「美しい心だね……」

「なになに~? エイブラッドまた誰かに恋してるのか? 大人になっても純情だね」

「黙れ!」

 茶化す公爵に、キレる大神官。言い争う彼等はちょっと面白い。レアネー市までの長い道中は退屈せずに済みそうだ。



「半分に切って……捻ったらいい……ってこと?」

「そうそう。最初に縦に一周切ってからね」

 マリは昨日入手した大量のアボカドをカウンターに置き、試験体066にアボカドの処理法を伝授している。
 キャンプカーの中は現在人口密度が非常に高くなっていて、落ち着かない。運転席にいる公爵を除き、後部には十二人も居るから当然なのだが、あまりコミュ力が高くないマリは少し苦痛だ。トークで楽しませるなんて芸当は出来ないのだ。

 でもちょうどいい事に、マリにはやる事がある。レアネー市の住人の為に作る料理はかなり時間がかかるから、早めに取り掛かっておくに越した事はない。

「それでこのナイフの刃元を種に食い込ませて、グイッと引き抜く!」

 アボガドの身からスポンッと種を取りだして見せると、彼の表情は楽しげに輝いた。

「気持ちいいくらいの抜け方……」

「でしょ? それから四等分に切り分けて……。ほら、こうすると皮を剥きやすくなる」

 アボガドに張り付いた皮をスルリと剥がれるのを見て、やり方を理解出来たのか、少年は頷き、マリを真似てアボガドを処理し始める。一個目は若干形が崩れたが、二個目、三個目、と経験を重ねるごとに上達する。

(誰かに料理を教えるのも楽しいもんだな。お母さんも私に教える時、こんな気持ちだったのかな?)

 少年と一緒に料理するのは、不思議な充実感がある。料理しているとたまに、ボッチな気分になるのだが、彼と一緒だったら、長時間でも大丈夫そうだ。



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