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レアネー市救出作戦
レアネー市救出作戦③
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休憩を挟みながら、約七時間程走ったキャンプカーは、レアネー市の城壁をかなり遠くに臨む位置で停車した。
マリはジャガイモを剥く手を一度止める。カリフォルニアロールを100人分程作り終え、自分達の夕食の下ごしらえをしていたのだが、状況が気になるので、公爵と話すために運転席へ向かう。
「公爵。使い魔は帰って来た?」
出発前に公爵は彼の従者と連絡する為、白い文鳥の使い魔を飛ばしていた。昼の休憩の時には、使い魔を介した連絡事項は無かった様だが、今はどうなっているのか。
「使い魔のピーちゃんには三往復してもらったよ。もうすぐチェスター君がこのキャンプカーまで来てくれるはずだ」
「そうなんだ。じゃあ、キャンプカーを下りて出迎えよう」
「それがいい。この大型の乗り物は、こちらの世界の者達に強烈なインパクトを与えるから、チェスター君は剣で切り掛かってしまうかもしれないし」
公爵の軽口に笑い、二人でキャンプカーの出口に向かう。
「俺たちはここで待機していた方がいいか?」
マリ達の様子を気にしたのか、カウンターの近くに居るエイブラッドが声をかけてきた。状況を説明しておかないと、宙ぶらりんな感覚にさせるかもしれないので、ちゃんと話した方がいいだろう。
「公爵の従者がこのキャンプカーに来てくれるみたい。その人から街とかの状況を聞いてから、動く予定なの。私と公爵は彼の出迎えに行くだけだよ。エイブラッドさん。悪いけど皆に説明してくれない?」
「分かった。車外の者達には、貴女から伝えてくれるか?」
「了解だよ」
さり気なく頼み事をするつもりが、相手も抜け目が無かった。なんだかな~、と肩を竦めてしまうけど、そのくらいの用事なら軽いもんだ。
キャンプカーを下りて、連結された三つの客車に状況を伝えていると、東の方から一頭の馬が駆けて来るのが見えた。
「チェスター君だ。あの様子だと、すっかり身体の方はいいみたいだね」
側にいた公爵が嬉しそうに片手を上げた。
馬上の男も、公爵の姿に気が付いた様で、ブンブンと手を振り回している。
「公爵ー!! 連絡通り、ご無事の様ですね!」
「出発前より元気になったくらいだよ! 君もすっかり良くなったみたいで何よりだ」
「治してくれた術者に感謝です! あ、マリ・ストロベリーフィールド嬢。公爵の面倒をみてくださったみたいですね。何とお礼を言っていいか!」
公爵の従者チェスターはマリの存在に気がついた様で、慌ててペコリと頭を下げた。相変わらずの好青年っぷりに、若干居心地が悪い。
「別に。公爵は長時間キャンプカーを運転してくれたから助かったし……。私はご飯を用意してただけだよ」
「あぁ! 使い魔で報告を貰いましたよ。マリさんの料理は最高だって」
「ウチの料理人として雇いたいくらいだよ。レアネーどころか、この国全体を見回しても、これ程の料理人は少ないだろう」
使い魔を三往復させて何を連絡させていたかと思えば、雑談がかなり混じっていたようだ。
(公爵を運転席に一人にさせすぎたかな)
料理に集中していたので、半ば公爵の存在を忘れていたのは内緒だ。
「チェスターさん。キャンプカーの中に入って話さない? 今ギュウギュウ詰めだけど、外よりは過ごしやすいはずだよ」
「あぁ、キャンプカーって、もしかしなくてもこの巨大な金属の塊……。はぁ……。これが動くんですよね? 凄いな」
自分の持ち物を見て感動されるのは悪くない。ちょっと照れくさい気持ちになりながら車内に入ると、試験体066がグラスにディスペンサーのルイボスティーを注ぎ、トレーに並べていた。
状況が一瞬で把握出来ず、瞬きする。
「え、アンタ何してるの?」
「これから話をするなら、お茶を出してあげた方がいいかと思って……」
「マジか!」
彼と数日一緒に過ごし、その成長に驚いていた。というか、今判明してしまったが、ホスピタリティに至っては、完全にマリを抜いてしまった様だ。
動揺を押し殺し、声を出す。
「あ、有難う。ちょっとアンタを見る目が変わりそー」
「……テーブルに運べばいい?」
「お願い。テーブルに座らない人達には手渡しして」
「分かった」
彼はグラスをテーブルの上に並べ、遠巻きにしている術者達に手渡しする。そんな彼をつい目で追い掛ける。
(アイツ意外と接客業に向いてる?)
車外の術者達にも持っていくのか、キャンプカーを出て行く彼の姿に白目を剥きそうになっていると、公爵に手招きされた。
「マリちゃん、おいで」
「あ、うん」
テーブルには公爵とチェスター、そしてエイブラッドの三人が座る。空いている所にマリが座ると、チェスターの話が始まった。
マリはジャガイモを剥く手を一度止める。カリフォルニアロールを100人分程作り終え、自分達の夕食の下ごしらえをしていたのだが、状況が気になるので、公爵と話すために運転席へ向かう。
「公爵。使い魔は帰って来た?」
出発前に公爵は彼の従者と連絡する為、白い文鳥の使い魔を飛ばしていた。昼の休憩の時には、使い魔を介した連絡事項は無かった様だが、今はどうなっているのか。
「使い魔のピーちゃんには三往復してもらったよ。もうすぐチェスター君がこのキャンプカーまで来てくれるはずだ」
「そうなんだ。じゃあ、キャンプカーを下りて出迎えよう」
「それがいい。この大型の乗り物は、こちらの世界の者達に強烈なインパクトを与えるから、チェスター君は剣で切り掛かってしまうかもしれないし」
公爵の軽口に笑い、二人でキャンプカーの出口に向かう。
「俺たちはここで待機していた方がいいか?」
マリ達の様子を気にしたのか、カウンターの近くに居るエイブラッドが声をかけてきた。状況を説明しておかないと、宙ぶらりんな感覚にさせるかもしれないので、ちゃんと話した方がいいだろう。
「公爵の従者がこのキャンプカーに来てくれるみたい。その人から街とかの状況を聞いてから、動く予定なの。私と公爵は彼の出迎えに行くだけだよ。エイブラッドさん。悪いけど皆に説明してくれない?」
「分かった。車外の者達には、貴女から伝えてくれるか?」
「了解だよ」
さり気なく頼み事をするつもりが、相手も抜け目が無かった。なんだかな~、と肩を竦めてしまうけど、そのくらいの用事なら軽いもんだ。
キャンプカーを下りて、連結された三つの客車に状況を伝えていると、東の方から一頭の馬が駆けて来るのが見えた。
「チェスター君だ。あの様子だと、すっかり身体の方はいいみたいだね」
側にいた公爵が嬉しそうに片手を上げた。
馬上の男も、公爵の姿に気が付いた様で、ブンブンと手を振り回している。
「公爵ー!! 連絡通り、ご無事の様ですね!」
「出発前より元気になったくらいだよ! 君もすっかり良くなったみたいで何よりだ」
「治してくれた術者に感謝です! あ、マリ・ストロベリーフィールド嬢。公爵の面倒をみてくださったみたいですね。何とお礼を言っていいか!」
公爵の従者チェスターはマリの存在に気がついた様で、慌ててペコリと頭を下げた。相変わらずの好青年っぷりに、若干居心地が悪い。
「別に。公爵は長時間キャンプカーを運転してくれたから助かったし……。私はご飯を用意してただけだよ」
「あぁ! 使い魔で報告を貰いましたよ。マリさんの料理は最高だって」
「ウチの料理人として雇いたいくらいだよ。レアネーどころか、この国全体を見回しても、これ程の料理人は少ないだろう」
使い魔を三往復させて何を連絡させていたかと思えば、雑談がかなり混じっていたようだ。
(公爵を運転席に一人にさせすぎたかな)
料理に集中していたので、半ば公爵の存在を忘れていたのは内緒だ。
「チェスターさん。キャンプカーの中に入って話さない? 今ギュウギュウ詰めだけど、外よりは過ごしやすいはずだよ」
「あぁ、キャンプカーって、もしかしなくてもこの巨大な金属の塊……。はぁ……。これが動くんですよね? 凄いな」
自分の持ち物を見て感動されるのは悪くない。ちょっと照れくさい気持ちになりながら車内に入ると、試験体066がグラスにディスペンサーのルイボスティーを注ぎ、トレーに並べていた。
状況が一瞬で把握出来ず、瞬きする。
「え、アンタ何してるの?」
「これから話をするなら、お茶を出してあげた方がいいかと思って……」
「マジか!」
彼と数日一緒に過ごし、その成長に驚いていた。というか、今判明してしまったが、ホスピタリティに至っては、完全にマリを抜いてしまった様だ。
動揺を押し殺し、声を出す。
「あ、有難う。ちょっとアンタを見る目が変わりそー」
「……テーブルに運べばいい?」
「お願い。テーブルに座らない人達には手渡しして」
「分かった」
彼はグラスをテーブルの上に並べ、遠巻きにしている術者達に手渡しする。そんな彼をつい目で追い掛ける。
(アイツ意外と接客業に向いてる?)
車外の術者達にも持っていくのか、キャンプカーを出て行く彼の姿に白目を剥きそうになっていると、公爵に手招きされた。
「マリちゃん、おいで」
「あ、うん」
テーブルには公爵とチェスター、そしてエイブラッドの三人が座る。空いている所にマリが座ると、チェスターの話が始まった。
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