米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
50 / 156
レアネー市救出作戦

レアネー市救出作戦④

しおりを挟む
「無事だった住人や、一時的に市内に居た者達は現在、この近くの村アグルンに避難しています。何というか……、数万人規模で押しかけている状況なんで、村の方がパンク状態で……。建物どころか、屋根の下からも溢れてしまっています。酷い状態ですよ」

 公爵の従者チェスターの話から、事態の深刻さが伝わる。

(早く家に帰してあげないと、避難民も、アグルンの村民も、共倒れになりそう)

 マリは魔人の襲来時、セバスちゃんを救出するという考えしか持ってなかった。それなのに今は、レアネーの住人だけでなく、巻き込まれてしまった、近くの村の事まで心配している。いつから博愛主義を装う偽善者になってしまったのか。

「そうか。アグルンの住民達には迷惑をかけてしまっているね……。それはそうと、君の所にある程度の情報が集まっているはずだけど、平常時の市民の数から避難民の数を引くとして__だいたい何人が瘴気の被害にあっているか分かるかい?」

「およそ……2,000人ではないかと」

 人数を告げる言葉が、いやに大きく響いた。一瞬だけ静まり返った車内が、ザワザワと騒がしくなっていく。

「出発前に聞かされていた人数より多くないか?」

「2,000人……大目に見積もって、一人当たり80人程浄化しなければならないわ」

「何日かかるんだ……」

 術者達が不安を口にする。その一つ一つを聞いているうちに、彼等の不安がマリにまで伝染る。だけど、それに呑まれるわけにはいかない。数字から受けるインパクトは大きいが、ここは冷静になるべきなんだ。

「エイブラッドさん。術者達のキャパシティを教えて。一人当たり一日何人浄化出来る?」

「瘴気に侵された者の、度合いにもよるのだが……、多くても一日一五人。それ以上は、術者の身体に障るんだ」

「十五人か……」

 術者二十五人と、マリの料理を合せて、五日間で完了するかどうかといったところだろう。

(五日だったら、なんとか頑張れる範囲じゃないかな!)

「五日間、気合い入れよう! アンタ達が毎日頑張れる様に、美味しい物作って食べさせてあげるから!」

 マリは立ち上がって宣言した。この程度じゃ彼等のヤル気を引き出すには弱すぎるかもしれない。だけど、長期戦になるなら、ちゃんとした料理を食べる事は結構大事だし、マリなりの最大限の支援のつもりだ。

「土の神殿の不味い飯を食べながらダラダラ過ごすのと、此処で美味いご飯を食べながら人助けするの、どっちが充実しているだろうね? 僕は美味い飯と人からの感謝を得られる方が好みの過ごし方だなぁ」

 マリの言葉に若干戸惑いをみせていた術者達は、公爵の援護射撃で目をギョロリとさせた。

「ぬぅぅ……! 確かに、土の神殿の劇マズ生ゴミには辟易としとったのだ!」

「ウチで出される料理に比べたら、王都の監獄の方がまだマシだと聞くわ!」

「五日間高級飯屋並の料理を食えるって、よく考えたら最高!!」

 土の神殿の面々は、エイブラッドを筆頭に、気難しい者が多い気がしていた。だが話してみて、案外欲求に素直な人達が多い事が判明してしまった。

(エイブラッドも普通に欲求に素直だよなー)

 半顔で彼の顔を見つめると、たじろがれる。

「何だその顔は! 待遇の改善は考えていると言っただろう!」

 いい具合の勘違いだ。訂正しないでおこう。

「土の神殿からも、術者達に出張手当くらいは出してあげてね」

「そうだな。その分をイリアに請求せねば……」

「ドドーンと払ってあげるよ」

「なら、よし」

 大人達のやり取りにウンウンと頷く。
 これで術者達のモチベーションは保てそうだ。でも浄化の前に、相当な困難があるのを忘れちゃいけない。

「チェスターさん。冒険者ギルドの方はどうなってる? 私達が出発する前、シルヴィアさんが、王都からSランクの冒険者達を呼ぶと言っていたけど……」

 マリがギルド側の状況を質問すると、チェスターは生真面目な表情で頷く。

「今朝、王都から腕の立つ方々が五名こちらに到着しました。1パーティーと言うんでしょうか? 仲間同士で来たみたいです。現在はここよりさらにレアネー市に近いポイントに野営しています」

「1パーティー……、まとまって動けるって考えていいのかな。いい仕事してくれそー」

「そうだねぇ。一丸となって取組んでくれるって期待しちゃうな。この後、彼等に会いに行けないかな?」

 公爵は市を代表する者として、冒険者達に、直々に依頼したいのかもしれない。
 ここ、二、三日の間、チャラついた言動が多かった彼だが、時々市長としての自覚があるのが伝わってくる。

「会えると思います。午後イチでシルヴィア氏が彼等を市内の偵察に連れて行く予定でしたが、短時間だけと言うお話でしたし、もう戻ってると思います」

「なるほどね。偵察をしてくれてるなら、尚更会いたくなったな。他に何か聞きたい事がある者が居ないなら、僕とチェスター君で会いに行ってくるよ」

「あ! 私も行きたい!」

 マリは置いて行かれない様に、慌てて手を挙げ、主張した。
 冒険者達の偵察の成果を、マリも聞きたいのだ。

「僕も行く……」

 声の方を向くと、いつの間に戻って来たのか、試験体066が出口近くでトレーを挙げていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...