米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
52 / 156
レアネー市救出作戦

レアネー市救出作戦⑥

しおりを挟む
 ジ○イソン・ステイサム似のナスドが真剣な面持ちでマ○ドナルドのハンバーガーの包み紙を凝視している。異世界人のそんな光景は、普通違和感バリバリなはずなのに、全く違和感がないのが、逆に怖い。

「広場の近くにたくさん落ちていたんだ。しかも不気味な事に、妙にクオリティが高い。この薄さ、手書きで描いたとは思えない絵……どんだけの技術力で作りやがった!?」

「あれ~? その紙、どっかで見たことあるな」

 公爵はマリの方を向いて、ニヨニヨ笑う。

「どこかって……、レアネー市に居る人間で、この紙っていうか、ハンバーガーを出せるスキルを持ってるのはセバスちゃんだけだよ! 広場にたくさん落ちてるって、なんなの!? 意味わかんない!」

 最後に目にしたセバスちゃんは魔人に操られていた。そんな彼が何故ハンバーガーの包み紙を出しているのだろうか? 無性にハンバーガーを食べたくなったから? それとも暇だから? 考えてみても分らず、混乱する。

「ナスドさん、広場付近に太ってて、ペンギンを彷彿とさせる服装の男を見なかった?」

 この世界には燕尾服は無さそうなので、ペンギンをイメージしてもらいたいところだ。

「ペンギンって、確か寒冷地に住む鳥だよな? 見たことがねーんだ。わりーな」

「そっかー……、うーん、どう言ったら通じるんだ」

 マリがセバスちゃんの特徴を思い出そうとしている間に、試験体066が話に割り込んできた。

「……魔人は街の西側に現れた。貴方達は、東より先に西を偵察すべきだったと思う……」

「シルヴィアちゃんからは最も危険なエリアが西側だろうとは聞いてる。だが、移動している可能性があるし、例の魔人以外に潜んで居る奴がいないとも限らない。満遍なく見る必要がある」

 試験体066に指摘され、若干苛立だしげな仕草をするナスド。態度はともかく、彼の主張は筋が通っている。マリはそんな彼にダメ元でお願いをしてみる事にした。

「満遍なく見るなら、また偵察に行くんだよね? その時、私も同行したい! 邪魔にならないようにするから!」

「む……。三十分後にシルヴィアちゃんと再突入するけどよ。本当に大丈夫か? もし途中でインビジブルが解けたら戦闘になるぜ」

 魔法が解ける可能性もあるのかと、背中がヒヤリとするが、怯んでいられない。

「だ、大丈夫! こう見えて私、空手習ってたし!」

 習っていたと言っても、エレメンタリースクールの時に一年間だけではある。絶対信じてもらえないだろうと、半ば諦めたが、何を思うのか、公爵がフォローしてくれた。

「マリちゃんはかなりの猛者だよ。魔力量を見たら分かるだろう?」

「うーん……そうなんだよなぁ」

 公爵の嘘は有難いけど、プレッシャーに感じる。何かやれと言われても、料理くらいしか出来ないのに……。
 若干不安になり、目を彷徨わせる。そんなマリの側に、白髪の少年が近寄って来た。

「……何かあったら、僕が戦うから……」

「お……ありがと」

 試験体066も偵察に付いてきてくれるらしい。何だかんだで、この男がいたら、安心ではある。
 
「あーもう! 分かったよ。メンドクセー! 自己責任で頼むぜ!」

 ナスドは盛大なため息をつき、同意してくれた。



 オレンジ色に染まる空の下、偵察組はレアネー市の城壁を通り抜ける。メンバーはマリと試験体066、ナスド、魔法使いのユネ、そして先程合流したシルヴィアの五人だ。
 現在ユネの魔法により、メンバー五人以外の者に、各人の姿は見えなくなっている。声は魔法でシャットダウン出来ていないらしいので、お喋りは厳禁。

 今から向かうのは、レアネー市中央に位置する広場だ。
 ナスドは一度廻った広場を順路に加える事に難色を示したが、マリはどうしても自分の目で現場を見てみたかったので、頼み込み、何とかのんでもらえた。
 足の早い四人に置いて行かれないよう、マリは必死に足を動かす。

 市内ですれ違う住人達は目つきがおかしい者ばかり。彼等は瘴気に侵されているのだろう。本当に自分の姿が、彼等から見えていないのかと、ドキドキする。

 広場の入口まで辿り着き、目に映る光景に足を止めてしまう。
 ナスドの説明通りに広場には大勢の市民がいた。疲れ切った様に地面に座っている者や、横になっている者。彼等の目には理性の光がある。

(あの人達、確かに健常者だ。早くなんとかしてあげないと)

 今すぐにでも城壁の外に連れ出してあげたいが、彼等は目つきのヤバイ獣人達に取り囲まれているので、そう簡単にはいかなそうだ。

 キョロキョロと広場の様子を見ているマリの手首が、急に握られ、引っ張られる。

(うわっ!)

 思わず声を上げそうになるのをなんとか堪える。引っ張ったのは、白髪の少年だ。彼が指差す方を見ると、ナスド達はかなり進んでいて、置いて行かれそうになっていた。
 足音を立てない様に二人で走る。

 追いつくと、ナスドは地面から何かを拾い上げ、マリに見せてくれた。グシャグシャになったハンバーガーの包み紙だ。
 マリの鼓動が激しくなる。

(マ○ドナルド!)

 包み紙は道の先に向ってたくさん落ちていた。五人で静かにその方向へ歩みを進めると、一つの建物から獣人が三人、立て続けに出てきた。彼女達の手には、ハンバーガーが握られている。

(この中!!)

 開けっ放しになった戸口の真ん前に立ち、屋内を見る。
 丸っこいハンバーガーがゴロゴロ転がる床の上に、太った男が座り込んでいる。円らな瞳に、小さい口。間違いなくセバスちゃんだ。

「いつまで、ハンバーガー自販機やらされるんだ! この、クソビーッチ!!」

 悪態のつき方が、平常時の彼っぽい。どう考えても正気を取り戻している。

(え……、セバスちゃん。もしかして魔人の魅了の術が解けてる? ってういか、瘴気の影響も無さそう?)

 唖然とするマリの眼の前で、セバスちゃんは獣人に殴打された。暴力で脅されて、無理矢理ハンバーガーを作らされているとみて間違いないだろう。
 マリは背負っていたリュックを下ろし、有線式のスタンガン、テーザー銃を取り出した。
 セバスちゃんの側に、見張りは一人、今が絶好のチャンスなのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

処理中です...