53 / 156
レアネー市救出作戦
レアネー市救出作戦⑦
しおりを挟む
マリがテーザー銃の引金をひくと、パリパリと電撃の走る音が鳴り、セバスちゃんの側に立つ獣人が悲鳴を上げて倒れた。
「んんん!? 何で急に倒れた!? ワイヤーが刺さってるのか……?」
柱に縄で繋がれたセバスちゃんは、混乱した様に女とその身体に刺さったワイヤーを見比べている。無理もない。彼からこちらは見えないのだから。
「おい! 何やってやがる!?」
「何も無い空間から声が聞こえるようなぁ!? まさか幽霊!? ゴーストバスターさーーん!!」
偵察中は出来る限り静かに行動する事に決めていたのに、これでは台無しだ。だけど今はセバスちゃん以外に、自分達の声が聞こえる者はいないはず。ナスドを巻き込んで、セバスちゃんを連れ戻したい。
「あの男、私の執事なんだ。どうにかして連れ帰りたい。だからお願い。アイツにもインビジブルをかけてあげて」
ナスドは一度舌打ちして、後方を振り返る。
「クソ……ッ。おい、ユネ!」
「……しょうがないな」
ユネはセバスちゃんに近付き、杖を高く掲げる。彼女が早口で、呪文を紡ぐと、セバスちゃんはマリの姿をしっかりと見てくれた。彼にもインビジブルがかかったのだ。
「マリお嬢様っ! もうお会い出来ないかと……うぅ……」
「セバスちゃん……ほんとに良かった……」
マリはセバスちゃんの元に駆けてて行き、サバイバルナイフで、彼と柱を繋ぐ縄を切った。
「助けに来てくださったんですね。不甲斐ない自分を許してください」
「遅くなってごめん。痛いとこ無い?」
涙を流すセバスちゃんの肩をバシバシ叩き、再会を喜ぶ。
話したい事が山程あるけど、ここでダラダラとしているわけにもいかない。
「おい、お二人さん。そろそろ静かにしてくれ。異変に気付かれちまう」
ナスドは明らかににイラついている。予想外の出来事に焦っているのだろう。
(最初から言っとけばよかったのかな……。でも言えば連れてこなかっただろうしな)
ほんとのところ、マリはチャンスがあれば、行動するつもりでいた。偵察にノコノコ付いてきたのは、セバスちゃんを連れ戻す目的があったからだ。だが、当然の事ながら、余計な危険を招いてしまっている。
先程この建物を出て行った獣人達が戻ってくる前に、証拠を隠滅するため、マリは素早く、横たわる女性の身体から二本の針を引き抜く。心臓が縮む思いで彼女の首を触ると、脈があったので、ホッとする。
テーザー銃は生き物を気絶させる為の武器だが、使い方や、当たりどころの悪さで、殺してしまう可能性がなくもない。もしもの事があったらと思うと、気が気じゃなかった。
先に出て行ったナスドに続こうとすると、セバスちゃんがヨロヨロしているのに気がつく。長時間硬い地面に座らされていたからなのか、歩き辛そうだ。
肩を貸そうかと思ったが、そうするより早く、試験体066がセバスちゃんの前に屈んだ。
(え、おんぶしてやるつもりなの?)
セバスちゃんがどういう行動を取るのかと、興味深く成り行きを見守ると、彼は素直に少年の背中に乗っかった。
小声で「悪いな」などと言っているのが聞こえる。
(アイツ、自分の二倍ほども体積がある男をおんぶして、大丈夫なわけ? 腰痛めそー)
口出ししたくなる気持ちを抑え、建物の外に出る。戸口の脇に立つナスドは、口に人差し指を当てた後、その指で道の向こうを差す。
先程の獣人達が戻って来るのが見える。
(私が、彼女達の仲間を気絶させたって知ったら、魔人に伝わる?)
彼女達の行動を観察していると、建物に入った後、直ぐに出てきた。セバスちゃんが消えた事に焦ったのだろう。来た道とは逆側に走り去って行く。
(倒れてる仲間よりも、セバスちゃんが優先か。魅了の術にかかってるなら、しょうがないのかな)
その薄情さにモヤモヤしながらも、ナスド達と共に偵察活動を再開する。白髪の少年の背中に乗ったセバスちゃんが、魔人の拠点への案内を申し出てくれたので、闇雲に歩く必要がなくなった。
試験体066とコルルが結婚式に使用した場所の側を通り、北上する。
歩みを進めるごとに目つきのヤバイ獣人の姿が増えるので、偵察組は自分達の音が拾われない様に慎重に動く。
「魔人はあそこを拠点にしています」
セバスちゃんが小声で呟き、指を差す。
それは、他の住宅とは一線を画す大邸宅だった。
高く、長い塀に囲まれているのだが、その内側に幾つもの立派な塔が見える。貴人の持ち家だろうか?
「公爵の邸宅だね……」
シルヴィアがボソリと漏らした情報にズッコケそうになる。
(うわぁ……。エグいなぁ)
温厚な公爵だけど、この事を知ったら、きっとブチギレる。マリだったら癇癪を起こしてしまうかもしれない。
「そろそろ戻らないとインビジブルが切れる」
ユネの警告を受け、マリ達は引き上げる事にした。
偵察の成果は上々だ。マリ個人としてはセバスちゃんを取り戻せたし、全体としてなら、魔人の拠点を突き止められた。
セバスちゃんが細かい情報を持っているようだし、公爵は、自分の家の内部構造に詳しいだろう。戻った後、彼等を加えてミーティングする流れになった。
「んんん!? 何で急に倒れた!? ワイヤーが刺さってるのか……?」
柱に縄で繋がれたセバスちゃんは、混乱した様に女とその身体に刺さったワイヤーを見比べている。無理もない。彼からこちらは見えないのだから。
「おい! 何やってやがる!?」
「何も無い空間から声が聞こえるようなぁ!? まさか幽霊!? ゴーストバスターさーーん!!」
偵察中は出来る限り静かに行動する事に決めていたのに、これでは台無しだ。だけど今はセバスちゃん以外に、自分達の声が聞こえる者はいないはず。ナスドを巻き込んで、セバスちゃんを連れ戻したい。
「あの男、私の執事なんだ。どうにかして連れ帰りたい。だからお願い。アイツにもインビジブルをかけてあげて」
ナスドは一度舌打ちして、後方を振り返る。
「クソ……ッ。おい、ユネ!」
「……しょうがないな」
ユネはセバスちゃんに近付き、杖を高く掲げる。彼女が早口で、呪文を紡ぐと、セバスちゃんはマリの姿をしっかりと見てくれた。彼にもインビジブルがかかったのだ。
「マリお嬢様っ! もうお会い出来ないかと……うぅ……」
「セバスちゃん……ほんとに良かった……」
マリはセバスちゃんの元に駆けてて行き、サバイバルナイフで、彼と柱を繋ぐ縄を切った。
「助けに来てくださったんですね。不甲斐ない自分を許してください」
「遅くなってごめん。痛いとこ無い?」
涙を流すセバスちゃんの肩をバシバシ叩き、再会を喜ぶ。
話したい事が山程あるけど、ここでダラダラとしているわけにもいかない。
「おい、お二人さん。そろそろ静かにしてくれ。異変に気付かれちまう」
ナスドは明らかににイラついている。予想外の出来事に焦っているのだろう。
(最初から言っとけばよかったのかな……。でも言えば連れてこなかっただろうしな)
ほんとのところ、マリはチャンスがあれば、行動するつもりでいた。偵察にノコノコ付いてきたのは、セバスちゃんを連れ戻す目的があったからだ。だが、当然の事ながら、余計な危険を招いてしまっている。
先程この建物を出て行った獣人達が戻ってくる前に、証拠を隠滅するため、マリは素早く、横たわる女性の身体から二本の針を引き抜く。心臓が縮む思いで彼女の首を触ると、脈があったので、ホッとする。
テーザー銃は生き物を気絶させる為の武器だが、使い方や、当たりどころの悪さで、殺してしまう可能性がなくもない。もしもの事があったらと思うと、気が気じゃなかった。
先に出て行ったナスドに続こうとすると、セバスちゃんがヨロヨロしているのに気がつく。長時間硬い地面に座らされていたからなのか、歩き辛そうだ。
肩を貸そうかと思ったが、そうするより早く、試験体066がセバスちゃんの前に屈んだ。
(え、おんぶしてやるつもりなの?)
セバスちゃんがどういう行動を取るのかと、興味深く成り行きを見守ると、彼は素直に少年の背中に乗っかった。
小声で「悪いな」などと言っているのが聞こえる。
(アイツ、自分の二倍ほども体積がある男をおんぶして、大丈夫なわけ? 腰痛めそー)
口出ししたくなる気持ちを抑え、建物の外に出る。戸口の脇に立つナスドは、口に人差し指を当てた後、その指で道の向こうを差す。
先程の獣人達が戻って来るのが見える。
(私が、彼女達の仲間を気絶させたって知ったら、魔人に伝わる?)
彼女達の行動を観察していると、建物に入った後、直ぐに出てきた。セバスちゃんが消えた事に焦ったのだろう。来た道とは逆側に走り去って行く。
(倒れてる仲間よりも、セバスちゃんが優先か。魅了の術にかかってるなら、しょうがないのかな)
その薄情さにモヤモヤしながらも、ナスド達と共に偵察活動を再開する。白髪の少年の背中に乗ったセバスちゃんが、魔人の拠点への案内を申し出てくれたので、闇雲に歩く必要がなくなった。
試験体066とコルルが結婚式に使用した場所の側を通り、北上する。
歩みを進めるごとに目つきのヤバイ獣人の姿が増えるので、偵察組は自分達の音が拾われない様に慎重に動く。
「魔人はあそこを拠点にしています」
セバスちゃんが小声で呟き、指を差す。
それは、他の住宅とは一線を画す大邸宅だった。
高く、長い塀に囲まれているのだが、その内側に幾つもの立派な塔が見える。貴人の持ち家だろうか?
「公爵の邸宅だね……」
シルヴィアがボソリと漏らした情報にズッコケそうになる。
(うわぁ……。エグいなぁ)
温厚な公爵だけど、この事を知ったら、きっとブチギレる。マリだったら癇癪を起こしてしまうかもしれない。
「そろそろ戻らないとインビジブルが切れる」
ユネの警告を受け、マリ達は引き上げる事にした。
偵察の成果は上々だ。マリ個人としてはセバスちゃんを取り戻せたし、全体としてなら、魔人の拠点を突き止められた。
セバスちゃんが細かい情報を持っているようだし、公爵は、自分の家の内部構造に詳しいだろう。戻った後、彼等を加えてミーティングする流れになった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる