米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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レアネー市救出作戦

レアネー市救出作戦⑦

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 マリがテーザー銃の引金をひくと、パリパリと電撃の走る音が鳴り、セバスちゃんの側に立つ獣人が悲鳴を上げて倒れた。

「んんん!? 何で急に倒れた!? ワイヤーが刺さってるのか……?」

 柱に縄で繋がれたセバスちゃんは、混乱した様に女とその身体に刺さったワイヤーを見比べている。無理もない。彼からこちらは見えないのだから。

「おい! 何やってやがる!?」

「何も無い空間から声が聞こえるようなぁ!? まさか幽霊!? ゴーストバスターさーーん!!」

 偵察中は出来る限り静かに行動する事に決めていたのに、これでは台無しだ。だけど今はセバスちゃん以外に、自分達の声が聞こえる者はいないはず。ナスドを巻き込んで、セバスちゃんを連れ戻したい。

「あの男、私の執事なんだ。どうにかして連れ帰りたい。だからお願い。アイツにもインビジブルをかけてあげて」

 ナスドは一度舌打ちして、後方を振り返る。

「クソ……ッ。おい、ユネ!」

「……しょうがないな」

 ユネはセバスちゃんに近付き、杖を高く掲げる。彼女が早口で、呪文を紡ぐと、セバスちゃんはマリの姿をしっかりと見てくれた。彼にもインビジブルがかかったのだ。

「マリお嬢様っ! もうお会い出来ないかと……うぅ……」

「セバスちゃん……ほんとに良かった……」

 マリはセバスちゃんの元に駆けてて行き、サバイバルナイフで、彼と柱を繋ぐ縄を切った。

「助けに来てくださったんですね。不甲斐ない自分を許してください」

「遅くなってごめん。痛いとこ無い?」

 涙を流すセバスちゃんの肩をバシバシ叩き、再会を喜ぶ。
 話したい事が山程あるけど、ここでダラダラとしているわけにもいかない。

「おい、お二人さん。そろそろ静かにしてくれ。異変に気付かれちまう」

 ナスドは明らかににイラついている。予想外の出来事に焦っているのだろう。

(最初から言っとけばよかったのかな……。でも言えば連れてこなかっただろうしな)

 ほんとのところ、マリはチャンスがあれば、行動するつもりでいた。偵察にノコノコ付いてきたのは、セバスちゃんを連れ戻す目的があったからだ。だが、当然の事ながら、余計な危険を招いてしまっている。

 先程この建物を出て行った獣人達が戻ってくる前に、証拠を隠滅するため、マリは素早く、横たわる女性の身体から二本の針を引き抜く。心臓が縮む思いで彼女の首を触ると、脈があったので、ホッとする。
 
 テーザー銃は生き物を気絶させる為の武器だが、使い方や、当たりどころの悪さで、殺してしまう可能性がなくもない。もしもの事があったらと思うと、気が気じゃなかった。

 先に出て行ったナスドに続こうとすると、セバスちゃんがヨロヨロしているのに気がつく。長時間硬い地面に座らされていたからなのか、歩き辛そうだ。
 肩を貸そうかと思ったが、そうするより早く、試験体066がセバスちゃんの前に屈んだ。

(え、おんぶしてやるつもりなの?)

 セバスちゃんがどういう行動を取るのかと、興味深く成り行きを見守ると、彼は素直に少年の背中に乗っかった。
 小声で「悪いな」などと言っているのが聞こえる。

(アイツ、自分の二倍ほども体積がある男をおんぶして、大丈夫なわけ? 腰痛めそー)

 口出ししたくなる気持ちを抑え、建物の外に出る。戸口の脇に立つナスドは、口に人差し指を当てた後、その指で道の向こうを差す。
 先程の獣人達が戻って来るのが見える。

(私が、彼女達の仲間を気絶させたって知ったら、魔人に伝わる?)

 彼女達の行動を観察していると、建物に入った後、直ぐに出てきた。セバスちゃんが消えた事に焦ったのだろう。来た道とは逆側に走り去って行く。

(倒れてる仲間よりも、セバスちゃんが優先か。魅了の術にかかってるなら、しょうがないのかな)

 その薄情さにモヤモヤしながらも、ナスド達と共に偵察活動を再開する。白髪の少年の背中に乗ったセバスちゃんが、魔人の拠点への案内を申し出てくれたので、闇雲に歩く必要がなくなった。

 試験体066とコルルが結婚式に使用した場所の側を通り、北上する。
 歩みを進めるごとに目つきのヤバイ獣人の姿が増えるので、偵察組は自分達の音が拾われない様に慎重に動く。

「魔人はあそこを拠点にしています」

 セバスちゃんが小声で呟き、指を差す。
 それは、他の住宅とは一線を画す大邸宅だった。
 高く、長い塀に囲まれているのだが、その内側に幾つもの立派な塔が見える。貴人の持ち家だろうか?

「公爵の邸宅だね……」

 シルヴィアがボソリと漏らした情報にズッコケそうになる。

(うわぁ……。エグいなぁ)

 温厚な公爵だけど、この事を知ったら、きっとブチギレる。マリだったら癇癪を起こしてしまうかもしれない。

「そろそろ戻らないとインビジブルが切れる」

 ユネの警告を受け、マリ達は引き上げる事にした。
 偵察の成果は上々だ。マリ個人としてはセバスちゃんを取り戻せたし、全体としてなら、魔人の拠点を突き止められた。

 セバスちゃんが細かい情報を持っているようだし、公爵は、自分の家の内部構造に詳しいだろう。戻った後、彼等を加えてミーティングする流れになった。
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