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嵐の傷跡
嵐の傷跡②
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マリが広場まで行くと、セバスちゃんが丸い身体を揺らしながら、あくせくと働いていた。
早朝来た時よりも住人の人数が増えている。先程ここに囚われていた人々は、心身が健全である事を確認された後、家に返されていて、今ここに集められているのは、瘴気の影響が濃い者達らしい。悪さをしないように縄で縛られている。
セバスちゃんはマリにニカリと笑う。
「マリお嬢様手製のカリフォルニアロールの効き目はバッチリです。隣に居る者は、食べた後すぐに普通の人っぽくなりましたよ!」
セバスちゃんに紹介された女性は丁寧なお辞儀をした。
「貴女がこの白く、尊い食べ物を作って下さったんですか? 何とお礼を申し上げて良いか……。先程まで身体の内側を暴れ回っていた何かが、これを口にした瞬間静まったんです。本当に……奇跡の様な体験で……」
彼女の目に涙が溢れ、マリは慌てた。
「わ、私は別に! 普通に料理しただけ! 特別な事なんか全然! それに他の人も手伝ってくれたんだよ!」
「他の者の手を借りたとしても大したものです。成長しましたね。お嬢様……」
「ゲゲ! そういうのやめよ……」
セバスちゃんまでホロリと涙を零すので、照れ臭いを通り越して、辟易とする。
話をしている間に、二人の周りには人だかりが出来ていた。
「マリさん、とお呼びすればいいですか? 何か手伝わせて下さい!」
「私も手伝います! この白い食べ物を食べたら、身体がスッキリして!」
「っていうか、味も最高! 料理で感動する日がくるとはな!」
「俺も手伝うぞ!」
口々に協力を申し出てもらい、マリは目を丸くする。自分の料理を食べてくれた人が、こんなに熱心に語りかけて来てくれた事は始めてで、鼓動がやばい。
試験体066と話した後、僅かに影っていた心が晴れていく。
「えぇと! じゃあ手伝ってもらおうかな! まずは__」
◇
太陽が山の陰に落ち、ランプの光に頼らなければ活動出来なくなってきた頃合いに、広場に公爵が現れた。彼は、作業中の者達それぞれの元に足を運び、本日の作業を終了するように伝えてくれた。
マリはあの後、レアネーの住人達という強力な助っ人を得て、さらに市場から食材を無料で調達し、追加で100人前のカリフォルニアロールを作った。出来立てをどんどん広場に運んでもらい、多くの住人達を元の状態に戻す事に成功している。
「マリちゃん、だいぶ活躍してくれたみたいだね」
散らばった皿を重ねていると、公爵がランプを手に近付いて来た。
「たくさんの人に手伝ってもらえたから、かなりはかどった。この街は良い人が多いんだね」
「そうだね。大多数が気の良い人間かな。……今回の件で、獣人達に悪い感情を抱いてほしくないな」
「そこは公爵が頑張るところなのかも」
「だよねー」
「それはそうと、身体はもう良いの?」
公爵に皿を奪い取られ、運ばれる。手伝ってくれるのは有難いが、先程倒れたくせに大丈夫かと心配になる。
「無茶な魔法を使わないなら、何ともないよ。というか、今はやる事が山ほどあるんだ。国王陛下へ報告の手紙を書いたり、領内の他の町からここに資材を運ぶ手筈を整えたり、ね」
「公爵って、事務的な仕事も出来るんだ!?」
「酷い言われよう……。今は、チェスター君に走り回ってもらわないといけないから、裏側は僕がやんないとね」
「分業か~」
奔放な性格の公爵の事だから、結構大変そうだ。
ランプに照らされた彼の顔に、若干疲労して見える。彼は、この街に魔王を出現させた事を、国王陛下から咎められたりするのだろうか? 運が悪かっただけだと思うし、国王が話の分かる人だったらと願わずにはいられない。
「……魔王」
「ん?」
頭で考えていた事がつい口から出てしまった。ついでなので、質問してみる。
「魔王って、どういう存在なの? 人間の脅威?」
「そうなるね。魔王は人間を魔族化させる能力がある。だから魔族達にとって、魔王は自分達の王であると同時に、第二の親でもある。忠誠心は絶大なんだよ」
「マジか……」
「そうやって魔王は配下を増やし、歴史を振り返ると、人間と戦争にまで発展した事例も多数ある」
「思ったより、厄介なんだね」
マリが魔王に連れ去られそうになった事はなんとなく言えなかった。
魔族という括りが何を意味するのか知らないが、マリはセバスちゃんとは違い、中二病ではないため、人間と敵対する勢力としての適正があるのだとしても、嬉しくない。
(魔王か……、コルルの身体から、アレを引き剥がすにはどうしたらいいんだろ? てか、魔王をどうこうしても、瘴気はそのままなんだよね?)
この世界に、瘴気の量が増えてから魔王が現れたと考えると、魔王をどうにかしても、世の中は平和になりそうにない。難しい世界なんだな、と思ってしまう。
「マリちゃん、今日の夕飯は何にするの?」
公爵の無邪気な質問に、マリは遠い目をした。仕事はこれで終わりではない。キャンプカーに戻ったら、マリ達三人と、土の神殿の術者達のご飯を用意しなければならないのだ。
「足りない食材があったらチェスター君に運ばせるよ」
「ん? もしかして、ウチに食べに来るつもるなの!?」
「僕の家、ボロボロだしなぁ。何かご馳走してよ!」
棚の奥に眠る、日本からの輸入品を思い出す。野菜や肉を入れないと栄養が無いが、味は充分だろう。
「今日はサ○ポロ一番の塩! 疲れたから手抜きだよ!」
「サッポロ……?」
早朝来た時よりも住人の人数が増えている。先程ここに囚われていた人々は、心身が健全である事を確認された後、家に返されていて、今ここに集められているのは、瘴気の影響が濃い者達らしい。悪さをしないように縄で縛られている。
セバスちゃんはマリにニカリと笑う。
「マリお嬢様手製のカリフォルニアロールの効き目はバッチリです。隣に居る者は、食べた後すぐに普通の人っぽくなりましたよ!」
セバスちゃんに紹介された女性は丁寧なお辞儀をした。
「貴女がこの白く、尊い食べ物を作って下さったんですか? 何とお礼を申し上げて良いか……。先程まで身体の内側を暴れ回っていた何かが、これを口にした瞬間静まったんです。本当に……奇跡の様な体験で……」
彼女の目に涙が溢れ、マリは慌てた。
「わ、私は別に! 普通に料理しただけ! 特別な事なんか全然! それに他の人も手伝ってくれたんだよ!」
「他の者の手を借りたとしても大したものです。成長しましたね。お嬢様……」
「ゲゲ! そういうのやめよ……」
セバスちゃんまでホロリと涙を零すので、照れ臭いを通り越して、辟易とする。
話をしている間に、二人の周りには人だかりが出来ていた。
「マリさん、とお呼びすればいいですか? 何か手伝わせて下さい!」
「私も手伝います! この白い食べ物を食べたら、身体がスッキリして!」
「っていうか、味も最高! 料理で感動する日がくるとはな!」
「俺も手伝うぞ!」
口々に協力を申し出てもらい、マリは目を丸くする。自分の料理を食べてくれた人が、こんなに熱心に語りかけて来てくれた事は始めてで、鼓動がやばい。
試験体066と話した後、僅かに影っていた心が晴れていく。
「えぇと! じゃあ手伝ってもらおうかな! まずは__」
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太陽が山の陰に落ち、ランプの光に頼らなければ活動出来なくなってきた頃合いに、広場に公爵が現れた。彼は、作業中の者達それぞれの元に足を運び、本日の作業を終了するように伝えてくれた。
マリはあの後、レアネーの住人達という強力な助っ人を得て、さらに市場から食材を無料で調達し、追加で100人前のカリフォルニアロールを作った。出来立てをどんどん広場に運んでもらい、多くの住人達を元の状態に戻す事に成功している。
「マリちゃん、だいぶ活躍してくれたみたいだね」
散らばった皿を重ねていると、公爵がランプを手に近付いて来た。
「たくさんの人に手伝ってもらえたから、かなりはかどった。この街は良い人が多いんだね」
「そうだね。大多数が気の良い人間かな。……今回の件で、獣人達に悪い感情を抱いてほしくないな」
「そこは公爵が頑張るところなのかも」
「だよねー」
「それはそうと、身体はもう良いの?」
公爵に皿を奪い取られ、運ばれる。手伝ってくれるのは有難いが、先程倒れたくせに大丈夫かと心配になる。
「無茶な魔法を使わないなら、何ともないよ。というか、今はやる事が山ほどあるんだ。国王陛下へ報告の手紙を書いたり、領内の他の町からここに資材を運ぶ手筈を整えたり、ね」
「公爵って、事務的な仕事も出来るんだ!?」
「酷い言われよう……。今は、チェスター君に走り回ってもらわないといけないから、裏側は僕がやんないとね」
「分業か~」
奔放な性格の公爵の事だから、結構大変そうだ。
ランプに照らされた彼の顔に、若干疲労して見える。彼は、この街に魔王を出現させた事を、国王陛下から咎められたりするのだろうか? 運が悪かっただけだと思うし、国王が話の分かる人だったらと願わずにはいられない。
「……魔王」
「ん?」
頭で考えていた事がつい口から出てしまった。ついでなので、質問してみる。
「魔王って、どういう存在なの? 人間の脅威?」
「そうなるね。魔王は人間を魔族化させる能力がある。だから魔族達にとって、魔王は自分達の王であると同時に、第二の親でもある。忠誠心は絶大なんだよ」
「マジか……」
「そうやって魔王は配下を増やし、歴史を振り返ると、人間と戦争にまで発展した事例も多数ある」
「思ったより、厄介なんだね」
マリが魔王に連れ去られそうになった事はなんとなく言えなかった。
魔族という括りが何を意味するのか知らないが、マリはセバスちゃんとは違い、中二病ではないため、人間と敵対する勢力としての適正があるのだとしても、嬉しくない。
(魔王か……、コルルの身体から、アレを引き剥がすにはどうしたらいいんだろ? てか、魔王をどうこうしても、瘴気はそのままなんだよね?)
この世界に、瘴気の量が増えてから魔王が現れたと考えると、魔王をどうにかしても、世の中は平和になりそうにない。難しい世界なんだな、と思ってしまう。
「マリちゃん、今日の夕飯は何にするの?」
公爵の無邪気な質問に、マリは遠い目をした。仕事はこれで終わりではない。キャンプカーに戻ったら、マリ達三人と、土の神殿の術者達のご飯を用意しなければならないのだ。
「足りない食材があったらチェスター君に運ばせるよ」
「ん? もしかして、ウチに食べに来るつもるなの!?」
「僕の家、ボロボロだしなぁ。何かご馳走してよ!」
棚の奥に眠る、日本からの輸入品を思い出す。野菜や肉を入れないと栄養が無いが、味は充分だろう。
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「サッポロ……?」
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