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火の神殿へ
火の神殿へ⑧
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「モ、モイス殿! 久しいな!」
扉から現れた小男はドワーフ族の老女に「遅い!」と怒鳴られ、逆切れしている。
もしかしなくても、この男が族長だったりするのだろうか。
「久し振りやな。セーブス族長。最後に会ったのは1年程前の火の神殿での儀式か。今酒盛り中やった?」
「酒盛りじゃねぇ! 会議だ会議!」
この男はやっぱり族長だったらしい。彼の後方から、様々な体系のドワーフ達がぞろぞろと歩いて来て、マリ達をチラ見しながら外に出て行く。彼等の手には酒瓶や干し肉が握られているので、今まで会議をやっていただなんて、到底信じられない。
「思ったよりも大量にヒト族を連れて来たな!」
「昨日火の神殿の者に連絡させたはずなんやけど……。ま、ええわ。この女性がマリ・ストロベリーフィールド様。私の上司になられるお方やねんで。その他はマリ様のパーティメンバーや」
「ちょ!? 私はアンタの上司なんかにならない!」
「その他扱いかぁ、酷いな……」
マリと公爵で難色を示してみるが、モイスはどこ吹く風だ。
この男には、何を言っても無駄なんだろう。
ドワーフの族長はもじゃもじゃの前髪の下からジロジロとこちらを観察していたが、プタマに腹の贅肉を摘ままれ、ぴょこんと飛び上がった。
「挨拶!」
「うっせぇ、分かってる! 俺は族長のセーブスだ。そこに居るババアは学者で、俺の母親でもある」
「私の事はどうでもいいのだ」
(シッカリ者の母親と、禄でもない息子の組み合わせか)
マリは二人の関係性を想像し、苦笑いした。
セバスちゃんや、グレン、公爵の自己紹介が終わると、ドワーフの族長は扉を大きく開いて手招きする。
「家の中に入ってくれ。立ちっぱなしにさせちまうのも悪い」
のしのしと大股で歩く族長と、ユックリ進むプタマの後をマリ達は付いて行く。家の中は天井が低く、マリ以外の男達は若干腰をかがめなければならない。その様子がおかしくて、マリは何度も吹き出しそうになった。
「マリお嬢様、笑わないで下さい! この姿勢は結構辛いんですよ!」
「だって、子供の遊び場に紛れ込んだ大人って感じなんだもん。笑うなって方が無理!」
「僕達マリちゃんより30cm程身長が高いからね」
族長は建物の中心部に置かれた大きめの円卓のそばで止まり、振り返った。
「適当に座っててくれ! オレはサボテンジュースを持ってくるからな!」
「サボテン酒出してくれへんの? 期待してたんやけど」
「ババアが同席するのに、出せるわけないだろ!!」
何を怒っているのか知らないが、モイスに怒鳴り散らし、族長は建物の奥に去って行った。
「相変わらずプタマに頭が上がらないんやね」
モイスは軽口を叩きながら、円卓の周囲に置かれた丸っこい石の椅子に腰かける。彼にならって座ってみると、やはりというかなんというか、高さがドワーフに合わせていて、非常に座り心地が悪い。
グレンは普通の座り方を諦めたのか、石の上に三角座りしてしまっている。
それに突っ込みを入れようかと口を開きかけたのだが、隣から強烈な視線を感じ、動きを止めた。
「貴女は不思議なオーラをお持ちなのですね」
マリを見ていたのはプタマだった。その綺麗なエメラルドの瞳はマリの中に何を見ているのだろうか。
(ゲゲ……、もしかしてカリュブディスと同化したってバレてたりしないよね!?)
亀の甲羅団の魔法使いユネに忠告されてから、他人の前でそういう話題を出さないようにしていたので、ギクリとする。
「マリちゃんは選定者だから、他の人のオーラとは全く違うのかもね」
公爵の言葉に、彼女は「フム……」と頷く。
「里の言い伝えによると、1000年前にこの地に黄金色のオーラを持つ物が現れ、偉大な働きをしたようです……。その功績は神々も認める程だった。その方は後に四柱の神々の信仰とまとめあげた――」
マリはピンときた。1,000年前に、カミラは間違いなくこの里を訪れたのだ。その足取りを、マリは辿っている。
「――貴女のオーラもまた、黄金色」
「スピリチュアルな事は良く分からないけど、私はこの世界のために、オーパーツを創りたい。この地に来たのはその素材が欲しいからだよ」
大きなトレーを持って戻って来た族長が、マリの前にドンッと陶器製の器を置いた。
「もしかして、イヴンナ山に入ろうとしているのか?」
その問い一つに、彼の確かな知識の蓄積を感じ、戸惑いながらも頷く。
「入山を許可してくれない?」
「……やめた方がいいと思う。ここ数日で、ドワーフの鉱夫が三人モンスターの大けがを負わされた。イヴンナ山に引きこもってたはずの強力なモンスター共が里に近い鉱山にまで下りてきてやがるんだ」
「時期が悪すぎます。イヴンナ山ではアースドラゴンが睨みを効かせていたから、ここまで来なかったが、今は我等とて移住を考えねばならぬほど、危機が迫っている。入山などしたら、貴女達は死に、山の肥やしになるだけでしょう」
しかめっ面をする小さな二人を前に、マリはアースドラゴンとドワーフ族の関係を予想する。
(アースドラゴンには、鉱山を荒らさない為の約束だけじゃなくて、他のモンスターの牽制もしてもらっていたのか。これ、勝手に討伐したら怒られる感じなのかな)
扉から現れた小男はドワーフ族の老女に「遅い!」と怒鳴られ、逆切れしている。
もしかしなくても、この男が族長だったりするのだろうか。
「久し振りやな。セーブス族長。最後に会ったのは1年程前の火の神殿での儀式か。今酒盛り中やった?」
「酒盛りじゃねぇ! 会議だ会議!」
この男はやっぱり族長だったらしい。彼の後方から、様々な体系のドワーフ達がぞろぞろと歩いて来て、マリ達をチラ見しながら外に出て行く。彼等の手には酒瓶や干し肉が握られているので、今まで会議をやっていただなんて、到底信じられない。
「思ったよりも大量にヒト族を連れて来たな!」
「昨日火の神殿の者に連絡させたはずなんやけど……。ま、ええわ。この女性がマリ・ストロベリーフィールド様。私の上司になられるお方やねんで。その他はマリ様のパーティメンバーや」
「ちょ!? 私はアンタの上司なんかにならない!」
「その他扱いかぁ、酷いな……」
マリと公爵で難色を示してみるが、モイスはどこ吹く風だ。
この男には、何を言っても無駄なんだろう。
ドワーフの族長はもじゃもじゃの前髪の下からジロジロとこちらを観察していたが、プタマに腹の贅肉を摘ままれ、ぴょこんと飛び上がった。
「挨拶!」
「うっせぇ、分かってる! 俺は族長のセーブスだ。そこに居るババアは学者で、俺の母親でもある」
「私の事はどうでもいいのだ」
(シッカリ者の母親と、禄でもない息子の組み合わせか)
マリは二人の関係性を想像し、苦笑いした。
セバスちゃんや、グレン、公爵の自己紹介が終わると、ドワーフの族長は扉を大きく開いて手招きする。
「家の中に入ってくれ。立ちっぱなしにさせちまうのも悪い」
のしのしと大股で歩く族長と、ユックリ進むプタマの後をマリ達は付いて行く。家の中は天井が低く、マリ以外の男達は若干腰をかがめなければならない。その様子がおかしくて、マリは何度も吹き出しそうになった。
「マリお嬢様、笑わないで下さい! この姿勢は結構辛いんですよ!」
「だって、子供の遊び場に紛れ込んだ大人って感じなんだもん。笑うなって方が無理!」
「僕達マリちゃんより30cm程身長が高いからね」
族長は建物の中心部に置かれた大きめの円卓のそばで止まり、振り返った。
「適当に座っててくれ! オレはサボテンジュースを持ってくるからな!」
「サボテン酒出してくれへんの? 期待してたんやけど」
「ババアが同席するのに、出せるわけないだろ!!」
何を怒っているのか知らないが、モイスに怒鳴り散らし、族長は建物の奥に去って行った。
「相変わらずプタマに頭が上がらないんやね」
モイスは軽口を叩きながら、円卓の周囲に置かれた丸っこい石の椅子に腰かける。彼にならって座ってみると、やはりというかなんというか、高さがドワーフに合わせていて、非常に座り心地が悪い。
グレンは普通の座り方を諦めたのか、石の上に三角座りしてしまっている。
それに突っ込みを入れようかと口を開きかけたのだが、隣から強烈な視線を感じ、動きを止めた。
「貴女は不思議なオーラをお持ちなのですね」
マリを見ていたのはプタマだった。その綺麗なエメラルドの瞳はマリの中に何を見ているのだろうか。
(ゲゲ……、もしかしてカリュブディスと同化したってバレてたりしないよね!?)
亀の甲羅団の魔法使いユネに忠告されてから、他人の前でそういう話題を出さないようにしていたので、ギクリとする。
「マリちゃんは選定者だから、他の人のオーラとは全く違うのかもね」
公爵の言葉に、彼女は「フム……」と頷く。
「里の言い伝えによると、1000年前にこの地に黄金色のオーラを持つ物が現れ、偉大な働きをしたようです……。その功績は神々も認める程だった。その方は後に四柱の神々の信仰とまとめあげた――」
マリはピンときた。1,000年前に、カミラは間違いなくこの里を訪れたのだ。その足取りを、マリは辿っている。
「――貴女のオーラもまた、黄金色」
「スピリチュアルな事は良く分からないけど、私はこの世界のために、オーパーツを創りたい。この地に来たのはその素材が欲しいからだよ」
大きなトレーを持って戻って来た族長が、マリの前にドンッと陶器製の器を置いた。
「もしかして、イヴンナ山に入ろうとしているのか?」
その問い一つに、彼の確かな知識の蓄積を感じ、戸惑いながらも頷く。
「入山を許可してくれない?」
「……やめた方がいいと思う。ここ数日で、ドワーフの鉱夫が三人モンスターの大けがを負わされた。イヴンナ山に引きこもってたはずの強力なモンスター共が里に近い鉱山にまで下りてきてやがるんだ」
「時期が悪すぎます。イヴンナ山ではアースドラゴンが睨みを効かせていたから、ここまで来なかったが、今は我等とて移住を考えねばならぬほど、危機が迫っている。入山などしたら、貴女達は死に、山の肥やしになるだけでしょう」
しかめっ面をする小さな二人を前に、マリはアースドラゴンとドワーフ族の関係を予想する。
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