米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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火の神殿へ

火の神殿へ⑩

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 マリ達は族長と山師達から登山ルートや、登る際の注意点を聞き、里の中にある金属の加工工房を見学させてもらった。その後は族長の娘さんが振るまってくれた美味しい豆料理等をいただけたので、なかなか充実した滞在となった。

 マリはサッとシャワーを浴び、早めの時間にベッドの中に潜った。
 今日は朝から火の聖域に行き、さらに午後からドワーフの里を歩き回ったため、結構疲れている。明日の事を考えると、早くに寝たいところだ。

 ベッドサイドライトの明かりを消そうと視線を横に向けると、先程プタマに貰った金塊が視界に入った。
 それはライトの光を反射し、テロリとした光沢を放つ。
 マリの前世らしき女が水銀を創り変えたという話だったが、本当だろうか? 持ち上げてもう一度よく見てみても、おかしな部分はやはり見当たらない。

「錬金術かぁ……。カミラは立ち寄った里で披露して見せれる程に、使い慣れてたんだな」

 自由自在に錬金術のスキルを使えるのが羨ましい。

「大昔の人を嫉妬しても不毛だな」

 ため息をつき、サイドテーブルに金塊を戻す。
 無駄な事を考えるよりも、さっさと寝た方がいいだろう。
 マリはライトの灯りを消し、モコモコのクッションを抱きしめた。



「カミラ! 戻ったぞ!」

 男の声が聞こえ、マリは目を開けた。何故か辺りは自然光で明るく、ホコリが舞っているのが見える。
 
(ナニコレ!? さっきベッドに横になったのに……。ていうか、何で明るいの!? 寝過ごした!?)

「おい、大丈夫か?」

 再び男が話しかけてきた。今度は近くだ。マリの意思とは別に首が持ち上がり、ガッシリとした体つきの人物をその目に捕らえた。
 男は銀髪の長髪を前に流したヘアスタイルで、随分と美しい顔立をしている。日本の少女漫画から飛び出してきたと言われたら信じてしまいそうだ。
 こちらの世界には美形が多いのだが、ここまでキラキラした男は初めて見たかもしれない。

「パイルトン。アンタの帰りが遅すぎるからついつい寝てしまった」

(え!?)

 唇が自然と動き、声を発した。しかも意図してないのに立ち上がり、身だしなみを整える。

(私、夢の中にいる? でもこの男は今私を「カミラ」って呼んだよね。ってことは……)

 マリの前世の名前はカミラだ。もしかしてこれは過去にあった出来事なんじゃないだろうか。
 そして、マリは今、自分の前世の女に憑依している感じかもしれない。

 混乱するマリを他所に、男は話し続ける。

「アルケウスの模倣を試みると言っていたが、方法は思いついたのか?」

「あー、そうだね。頼んだ物は買って来てくれた?」

「ああ。ちゃんと『北部の花』を買って来た」

 差し出されたのは、ピンク色の芍薬。数えきれないほどの繊細な花弁が重なり、とても可愛らしい。

「いいね」

 自分の身体はやはり意図せず動き、男から花を受け取る。

(銀髪男が口にした『アルケウス』って、オーパーツ創造のキーになる力だったはず。この人達は今、錬金術で何かやろうとしているの?)

 アルケウスは、『肉体と魂を繋いでいる力』らしいが、カミラと呼ばれた人物はどう考えているのだろう。

「神の加護無き花でも、これ程美しく咲ける。だけどそれは今だけ。徐々に瘴気に蝕まれてしまうだろうね」

 カミラはそう言うやいなや、大きく口を開け、手に持つ芍薬をムシャムシャと食べてしまった。花の香りが口の中にグワッと広がり、若干苦みがある。
 微妙な気分になるが、身体はカミラの意思に支配されてしまっているので制御不能だ。

「北部の花の味はどうだ?」

「土の神の加護が薄い土地の植物が美味しいわけがない。……だけど、ちょっとした閃きがあったな」

 そう言いながら、カミラの足は窓と逆側に動かされる。
 簡素な扉を開くと、小部屋の中に虹色に輝く石が幾つも置かれていた。

(あれ? これって前見たオーパーツの色に似てる……。もしかしてアダマンタイト?? うーん、やっぱりこれって前世の記憶の中なんじゃないかな。記憶再生スキルは前世にも有効なのか)

 カミラは小さめの鉱石を一つ拾った。

「芍薬のアルケウスを模倣し、アダマンタイトの中に込めよう。そして浄化作用を付与する。一発で成功するかどうか分からないから、まずは手の平サイズで試すか」

「流石だな。そんな事をやってのけれるのは、世界中でお前しかいないだろう」

「かもね」

 右の手が、アダマンタイトの鉱石をグッと握り込むと、胸の奥が急激に熱くなった。ジワジワと大きくなるそれは、右肩から二の腕、そして手の平まで移動し、身体の外に放たれる。
 アダマンタイトの周りに細かい金の粒子が舞う。それは何らかの力を持つのか、虹色の鉱石が変形していった。

 真ん丸になったかに思えたが、よくよく見ると、蕾だった。
 そこまで形を変えた後、カミラの左手が動いた。感じ取れるのは、たった今使ったのとは別の力。
 それを変形したアダマンタイトに振りかけるようにすると、蕾の形をしていたそれが、柔らかくほころび始めた。

(芍薬の形になっていく! そっか、これ以前に見たオーパーツのミニチュア版なんだ! ちゃんと覚えて帰んないと!)

「なかなか綺麗に出来た。アンタにあげよう」

「……美しい。やはりお前は天才だな」

 マリは男の手に渡った物をジッと見ながら、今の感覚を忘れないように何度も反芻した。
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