God's Will!

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神天地編

第13神話   異変②

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「お?叶夢!」

 突如リビングとは反対方向から聞き覚えのある声が聞こえて、俺は後ろを振り返った。

「ま、マサルさん…!」

 そこにはマサルがいた。
 何故今この場所に居るのかは分からないが、探す手間が省けたことはでかい。

「良かった…!あの一大事なんです!ネヴァさんが……ネヴァさんが倒れちゃって…!」

 そうして俺はネヴァの事情をマサルに説明した。

「あぁ…やっぱりかー……そりゃまだ回復しきってねぇのに行くから………あのバカめ。」

 顔を手で覆う。なんだ?この人達もネヴァ追ってたのか?
 それに俺がこの部屋にいる間にこの人達は何をしていたのだろうか?ちょっとの間にあんなになって倒れるとは……

(まさか…?)
 
 まさかあの野郎一体何かしでかしやがったんじゃ?
 そうしてさっきの狼を思い浮かべるが、そんな暇も惜しむ程今はネヴァが危ない。
 すぐに脳内から存在を抹消した。

「と、とにかく急ぎましょう!」
 
 マサルに協力してもらうように声をかけ、俺は体をリビングへと動かす。
 だが

(……?)

「マサルさん…?」

 だがマサルは何故かその場から微動だにしなかった。だが暫くすると喋り始める。

「んー……ま、これはあいつ自らの責任やしなぁ。俺等が助ける義理は無い。それに今は薬を飲んでるから大丈夫やろ。あと数分も待てば何とかなる。」

(…………え??)

 俺はあまりにも普段のように落ち着いて話すマサルに脳内の情報処理が追いつかなかった。
 いや、普通だったらもっと何かしら焦ること位あるだろ。

「え?いや?え?」

 俺は唖然とすることしか出来ず、口から声が漏れる。だって仲間が倒れたんだぞ?
 これが此処に居る全員にとっては普通なのだろうか。だとしたらサイコパスなんて言葉だけでは言い表せない程のヤバさだ。

 「……いや、本当にネヴァさんが大変なんですよ!!」

 ただでさえ一刻を争うというのに、この人は何でここまで余裕なんだ?仲間の危機だというのに?
 …いや、もしかしたら仲間というのは表面上だけなのか?本当に仲間だったら率先して助けに行くだろう。
 俺はマサルに疑いの目を向ける。
 
「安心せぇや。ちゃんとあいつは仲間やで。俺達はそこまで薄情者やない。多分疲労困憊による気絶や。あともう少しで過労死寸前だったんやろ。」

 マガミは淡々と話しを続ける。マガミは俺の顔を見て笑顔で語る。純粋に恐怖を感じてしまった。

「そんな心配した顔すな。俺たちは死ぬか死なないかの線引き位出来る。もし助けに行くのはそいつ自身がどうしようも無いときだけや。そういう場合なら勿論助けに行くて。」

 どうやら俺の疑いの目を読み取ったようだ。そうは言うが行動だけ見ていると全くそうとは思えない。何故そんなにも他人事なのだろう。

「…………でもあの人はベッドにまで歩くことすらも出来ていなかったし、ただ事じゃないですよ。見当違いで死んだらどうするんですか。」

「大丈夫や。ワイらは一度もそれで間違えたことはないし、もし本当に死にそうだとしても俺たちの持ってる薬はどんな傷だって治してくれる!ワイだってさっきマガミに首の頸動脈やられて死にそうだったが今はもうこの通りやで?」

 そう言いながら首筋に指を当てる。
 そんなことを言うがあの人間がこっちに来る様子なんて一ミリも無い。あんな性格の奴だ。すぐ生き返せるからと理由をつけてどうせすぐには来ないのだろう。
 …だがこの人達にとってはあの人は尊敬する人だ。そうやって声に出して全面否定するのは良くないな。
 そう踏み留まって、マサルに向けて口を開く。
 
「その間にも少しの処置くらいしても良いんじゃ無いんですか?仲間なんでしょう?なら僕が器具を取ってきますよ!場所を教えてください。お願いします……!ネヴァさんを見放せないですよ……!」

 流石にネヴァをあの状態のまま放置しておくのは普通に考えて可哀想だ。
 それはのやることではない。

「うーん………叶夢の言いたいことは分からなくはないで。」

「じゃあ……!」

「だがあいつはここに居る誰よりも色んな壁を乗り越えて、ここのまとめ役になってきたんや。自分を限界まで突き詰めて半死になったこともあれば、俺なんかがヘマした所為で何回も死にかけたことだってあったし、ラルバの技の巻き添えすら喰らった馬鹿やらかして死にかけたような奴やし、ドジやらかして敵に洗脳されて、ラヴァナを殺しかけたこともあったんやで。」

 それとこれがどうネヴァを助けることに結びつくのだろうか。論点が全く違う。俺は首を傾げた。

「だからな……あいつはずっとずっと自分の不甲斐なさを誰よりも感じとんのや。それにリーダーであることの威厳や責任の重さも相まって、あいつの背中にはもの凄い重しが乗っかってる。今回こうなったのは一番大事な任務だったのも相まって焦ってしまった結果だ。」

 何を言いたいのかさっぱり分からない。重し?背筋?そりゃネヴァはリーダーだ。沢山抱えるものもあると思う。だからこそそんな大切な存在に寄り添ってやらずに、放っておくことに理解が出来ない。

「…結局何が言いたいんですか?分かりやすく伝えてください。」

 俺は少し語気を強めて、マサルに質問をする。

「うーん…何て言えば良いんやろなぁ…」

 マサルは態度一つも変えず、考え込みながらも口を開いた。

「ただダメなところを心配して支えてやる。まぁ確かにそれも重しは軽くなるかもしれん。」

「だが重しで矯正されたものは中々治らないもんでな?重しで作られた姿勢な俺達でも治すのは難しいんや。」

 だから一体何が言いたい……

「だから顔だけでも俺達のまっすぐな背中を見せて前を向けるようにするしかない。それがあいつの重しを軽く出来る方法だと思うんや。」

「…………」

 だめだ。俺は全くそんなことを言う意図が分からない。素直に本人のプライドとかどうでも良いから助けてやれよ。
 俺は心の中で指示するように言う。

「…まぁお前もまだ冷静になれてないだけや。落ち着いたら自然に理解できるはずや。」

 マサルはふざけた表現を入れる。俺は至って冷静だ。

「……そうですね。」

 取り敢えずは賛同しておこう。まぁこの人の意見も…一理、あるのか?

「まあな~そりゃお前色んなことあったろうしなぁ…そりゃ仕方ない部分もあるか。」

「ま、まぁ……ハハ…。」

 俺はなんと返せば良いか分からず、苦笑いでしか返すことができない。
 今はネヴァさんの身が心配でしかなかった。

ーーおーい、人間、マサル。聞こえてるか?あとネヴァ!お前には個別で言いたいことがある!

 突如として頭の中にテレパシーとして流れてきた。一度聞いたら脳裏に焼き付くようなうざい声は間違いなくあいつだ。
 しかも倒れているメンバーにそんな口調で話す様子には引いてしまう。
 ネヴァ達って……今あの人はただでさえ重症なのに、強制的に召集するなんて鬼畜にも程がある。
 俺は異議をあの人間に向けて言う。
 
「ちょっと!ネヴァさんは今大変な状況なのに…」

 ガチャ

突如として後ろから扉が空く音がした。

「や、やぁ…ラルバ。私だ。」

 異議を唱えようとすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。俺はすぐ後ろを振り返るといつの間にかネヴァがいた。

「ネ、ネヴァさん!?」

ーーお前は疲れで頭が回ってないのにすぐ勝手な行動するんじゃない!ウラさんに急げって言われたからって無闇に行動して良いわけじゃない!

「す、済まない。冷静になれてなかった……」

 ネヴァは肩を落として下を向いていた。テレパシーごしにあの人はため息を吐きながらねゔぁに伝える。

ーー分かったんなら良いんだ。次はないようにしろ。

「うん、気をつけるよ。」

 ネヴァがあのひとに向けて反省の意を見せる。
 このやりとりを見るに、俺がいない間に何か起こったのは確実だろう。この人達がここまで疲弊しているってことは相当な出来事が起きたのか?

「そういや叶夢、ありがとうな。わざわざ私をベッドまで連れてってくれて。」

 すると次に俺に礼の言葉を俺に向けて喋る。さっきはあんなにぐったりしていたが、もうそんなに立ったりしても大丈夫なのだろうか?

「い、いやそんなことよりも、体の方は……?」

「なぁに。ラルバの薬のおかげで症状は次第に回復してる。心配することない。」

「よ、良かった……!」

 俺はネヴァの身が良くなったことに胸を撫で下ろした。
 
「な?言ったやろ?大丈夫やって。」

 その様子を見てマサルは背中をバンバンと叩いて、俺の心に安心を誘発させる。
 だがさっきの言葉やこの人達の行動がまだ頭の中にずっと残っていた。
 本当にこの人達の行動が最適解だったのだろうか?
 
(駄目だ……考えがまとまらない。)

 もう一度考えてみてもやっぱり納得の行く答えが導き出せない。俺はマサルのネヴァへの対応のことは軽く流して終わりにした

ーーそんなことよりもだ!早めに人間も連れてこっちに来てくれ!

(俺もかよ……)

 そんなことを考えている合間にやけに急かすような言葉を言う。
 それに俺にも来いって……また良からぬことが起きそうな予感がする。
 
「OK。じゃあすぐ行くで。」「了解。」

 ーーそれじゃ待ってるぞ。

 二人は軽く応答し、そうしてあの人の声は聞こえなくなった。

「じゃ、行くか。」

(はぁ~……。あの野郎、俺に何かするつもりじゃないだろうな?)

 これまでのあいつの考えや言動、行動が全てが疑わしい。今すぐに逃げたしたいが、この人達の持ってる能力じゃ地球の果てまで行っても無理だろう。

「…そこまで怪しむなってぱぱっと終わることやから安心せぇ。」

「……心読んでます?」

「いいや?なんとなくそう思ってそうやなぁーって思ってな。」

 マサルは何の変哲も無く返答する。もうこの人達からは恐怖しか感じれない。

「取り敢えず瞬間移動でパッと行くから捕まっててや。」

 そうしてマサルが手を差し伸べる。それを見て俺は手を繋ぐ。

「じゃ、いくぞ!」

 マサルの掛け声と共にまたガラスのような綺麗な景色に包まれる。
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