God's Will!

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神天地編

第16神話   そうぞう神③

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「かぁっ……!かっ…あ…」

 この時ギリギリ受け身は出来たものの痛みは凄まじく、一瞬息ができなかった。何が起こったのかも分からず、気づけばこうして地面に叩きのめされていた。

(いつ私よりも上に…!?)

 攻撃を受けた場所から考えると間違いなく私よりも上にいた。

(や、やばい……また追撃が…)

 何とか次の攻撃を避けようと、女の位置を確認するために目線を出来る限り早く動かす。
 上に目線が行き着くと、そこには驚きの光景が広がっていた。

(……は?)

 空中に浮かんでいる女がいた。身には何も装着しているようには見えない。何だ?私が寝ている間に人間達は空まで飛べるようになったのか?それとも何かの魔法?

(いや、私の世界ではそんな魔法は無かった…あったとしても風魔法ぐらいで、少し自分の体を数センチ浮かすだけだった。)

 だが女は確かに高い位置で滞空している。しかも長い間余裕そうな表情で此方を見下ろす。鳥獣の私にとって翼を奪われた今、それが余計に癪に障る。

「っあぁぁぁ!!」

 高く地面を踏み込みまた蹴りを叩き込もうとするが、空中で軽々と避けられる。そしてまた地面に軽く叩きのめされる。何度も何度も続けるが壁に飛ばされ、次はまた反対の壁へ。またまた地面へ。それが何度も続く。


(私は……!まだ…!まだ……!)

 だがいずれは攻撃は当たる筈……
 大丈夫……大丈夫……私はいつも孤高に生きてきた。こんな奴なんかに最強の座は渡さない。いずれは絶対に攻撃は当たる。
 そうして自分の中でずっと言い聞かせて攻撃を続ける。


ーーーー




「はぁっ!……はぁっ……はぁっ……」

 何分経っただろうか。もう自分でも分からない。ただひたすらにこの女に一撃でも当てることだけしか頭の中にはなかった。

(もうこんなに……しんどい…!あいつら……こんな体で……)



 何度も何度も女に攻撃しようとするが、軽く避けられたり受け流されるばかりで一度も攻撃が通らず、こちらの体力が消耗されていくばかりだった。
 私は俯き、膝に手をつく。汗がダラダラと体から出てきて雫が地面に落ちる。

 鳥の時とは違う体に悩まされると同時にやっと人間の強さというものを少し理解が出来た気がしたが、今はその人間に対する思いを深めることなど出来なかった。

「………」

 その間を見て女はついに空中から降りてきて地に足をつける。



(……!?)



 そして私は女が地面に着地した時、あることに気づいた。



(床が……治ってる…!?)



 彼女が今立っている場所は私が確かに思いっきり拳を振るってクレーターを作った場所だった。
 それなのにいつの間にか傷一つもついていない。
 いやそれどころか、私がさっき地面を抉った場所も、地面に叩きつけられて凹んだ場所も全て治っている。



(どういうことなの…?こいつらは一体…!?)



「さてと…神獣。」



「ひっ……」



 女はそこまで威圧するまでもなく淡々と喋っているだけだった。

 だがそこから感じるのは恐怖だけだった。

 数歩だけ後ろへ下がり、息切れが加速する。

 思わず悲鳴が出そうになってしまったが、何とか大きな悲鳴を出さないように抑える。汗が更に噴き出す

 脚はガクガクと小刻みに震えており、それに気づくことさえも出来ないほど意識が女に向かっている。



「お前は私に同情させて油断させようとする手を使ったな?」



「そ、そうだ……けど。」



 急な質問に驚き、少し固まってしまった。一体何を言いたいのだろうか。

 もしかすると『お前を拷問する』……なんて言うことも有り得なくはない。相手は人間なのだから。

 この女の口から出てくる発言をしかと受け入れる覚悟をする。



「中々に上手い作戦だったし、それに人間の体になったとしても体の使い方もハイレベル。先程は動きが単調で何も考えずに突っ走るだけの奴かとも思ったが、一筋縄ではなかった。こちらもまた見くびった。私もまだまだだなぁ……」



「……は?」



 こんな時に何を言い出すかと思えばただの褒め言葉だった。どんな考えで私を褒めようとしたのか全く理解出来なかった。



「意地だけで向かってこれるなんて……私には無理だ。」



 やけに自身ばかりを下げて、私を上げるような言葉ばかりを連呼する。



(な、なに?ひょっとして罠?私を褒めて調子に乗らせて…?)



 急な発言に罠の疑いをかける。普段なら褒められただけで鼻を高くしているだろう。だが今回は褒められてもあまり良い気分ではない。それほど恐怖が打ち勝っているということだ。
 そして女が喋り始める。



「…やっぱり君みたいな子とは戦いづらい。だからお互いに和解しないか?」

「…あ?」

 何を言い出すかと思えば、和解を促そうとすることだった。
 そして女は手を前に差し出す。だがそこから得られたのは和解なんて考える甘い感情ではなく、ただの不快感しか湧かなかった。

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