8 / 14
3.届かぬ手
届かぬ手(6)
しおりを挟む
「エルサ、ごめん……。こんなことになって……。エルサ……。エルサ……」
ルクスの言葉に思い出の中から戻ってきたエルサ。
後悔に苛まれて苦悩の表情で泣いてるルクスが愛おしくてたまらない。
「もう、おばかさんだなあ……。ふふふ……気にしないでって言ったでしょ……」
ルクスを涙をぬぐってもぬぐっても、ぬぐい切れない。こんなにも自分のために泣いてくれている。なんて幸せなんだろう。
幸せを感じたのもつかの間、段々と瞼が重く感じてきた。言葉を発するのも心もとない。きちんと言葉になっているだろうか、自分では判断できなくなってきた。
(痛み、感じなくなってきた……。目がかすむ…。きれいなルクスの顔がぼやけて見えるわ……。ああ……もうルクスとお別れ、かな。つらいなあ……)
最後の勇気と力を振り絞って、想いを告げよう。初めて感じたこの想いを……。ルクスはどう思うだろうか。戸惑い、迷惑と思うだろうか……。
「……あのね……私ね……。ルクスに出会えて……よかった、よ……。本当はね、もっとお話し、したかった、の……。どんなことが好きで、今まで何を見てきた、のか……」
(そう、もっとルクスのことが知りたかった。キラキラな金髪で透き通ったような碧い目。まるで王子様みたいだったんだもの。)
「また出会えたら……私とたくさんお話してね……私の王子様。私のこと、忘れ、ないで……ね……」
ああ…もう力が入らない…。眠い……。次に目が覚めたら…平和な世の中だといいな。
ねえ、ルクス、私の王子様。あなたともっと一緒に生きていたかったな――。
「エルサっ!!」
エルサを呼ぶルクスの声は、もうエルサには届いていなかった。
ルクスの言葉に思い出の中から戻ってきたエルサ。
後悔に苛まれて苦悩の表情で泣いてるルクスが愛おしくてたまらない。
「もう、おばかさんだなあ……。ふふふ……気にしないでって言ったでしょ……」
ルクスを涙をぬぐってもぬぐっても、ぬぐい切れない。こんなにも自分のために泣いてくれている。なんて幸せなんだろう。
幸せを感じたのもつかの間、段々と瞼が重く感じてきた。言葉を発するのも心もとない。きちんと言葉になっているだろうか、自分では判断できなくなってきた。
(痛み、感じなくなってきた……。目がかすむ…。きれいなルクスの顔がぼやけて見えるわ……。ああ……もうルクスとお別れ、かな。つらいなあ……)
最後の勇気と力を振り絞って、想いを告げよう。初めて感じたこの想いを……。ルクスはどう思うだろうか。戸惑い、迷惑と思うだろうか……。
「……あのね……私ね……。ルクスに出会えて……よかった、よ……。本当はね、もっとお話し、したかった、の……。どんなことが好きで、今まで何を見てきた、のか……」
(そう、もっとルクスのことが知りたかった。キラキラな金髪で透き通ったような碧い目。まるで王子様みたいだったんだもの。)
「また出会えたら……私とたくさんお話してね……私の王子様。私のこと、忘れ、ないで……ね……」
ああ…もう力が入らない…。眠い……。次に目が覚めたら…平和な世の中だといいな。
ねえ、ルクス、私の王子様。あなたともっと一緒に生きていたかったな――。
「エルサっ!!」
エルサを呼ぶルクスの声は、もうエルサには届いていなかった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】だって知らなかったんです。モブにはモブの生きる道
ここ
恋愛
前世は世界中を魅了する歌手リーナ。今世はゲームの中のモブであるキャリー。まったく異なるふたりが融合するといったい何が起きるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる