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第十四話 不思議の森の魔女と騎士
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しおりを挟む「可哀想だけどこれ以上はまずいから」
「しかし誰かが研究する為にあれはあったのでは?」
呪いの森でゾフィーは魔女に言う。
幽霊の騎士に会いに来たのだが魔女が付いて来てしまった。
「そうだけど、まさかあんなお姫さまが研究しだすなんて予想外だもの。あれは簡単に解読出来るものではないのに」
「……ロヴェリナ様、では私が解読してもいいので?」
ロヴェリナの記述書はルウドが持っていても意味がない。本来持って研究すべきはゾフィーなのだ。
「解読するのなら魔法使いか、一族のものだろうと思っていたのだけど。今の時代に解読できなくてもいいわ。材料が揃いすぎて危険だもの」
「危険、ですか?」
「何かのボタンを一つかけ間違えると大変な事になってしまうわ。あれは負の遺産というもの。ゾフィー、本当に危ないと思ったら迷わず燃やして頂戴」
「魔女ロヴェリナの遺産を簡単には燃やせませんよ。調べてから考えます」
「それでいいわ、知らなければならない事と知らなくてもいい事がない交ぜになっているから迂闊に人に見せる事も良くないわ。望んであれを手に入れようとする者達の手に渡ればロクな事にならないし」
「なるほど、分かりました」
魔女ロヴェリナの遺産と具現化した魔女。
彼女の出現は何かの危険を知らせるものではないだろうか?
それでも知るべき真実を書き記して子孫に残した記述にはどうしても知り得て欲しい事があったのだろう。
「では貴女が消える条件は」
「心配がなくなれば消えるわね」
ゾフィーとロヴェリナは湖に出た。水辺で周囲を見回し騎士を捜すが暗くて見当たらない。
「騎士どの―――?居られるなら出てきて下さい―――?」
「……なんだ?今日は騒がしい日だ。幽霊とてそんなほいほい出てこれるほど暇ではないぞ?」
「すいません、昔の騎士と聞いて一度お会いしてみようとご挨拶に。私魔法使いのゾフィーと言います」
「ああ、魔法使いの塔に入った魔法使いか。私はクラディウス。生前は騎士だった。
呪いの森は人が入らなければただの森だが、人が入れば呪いが発動する。この十数年は人も入らずただの森で私もここで眠っていたのだが、最近煩い男が森に出入りし始めて目が覚めてしまったのだ。しかもうっかり姿を見せたばかりにいちいち声を掛けてくる。
普通幽霊に声など掛けんだろう?ちょっと脅しを掛ければもう来ないと踏んでいたのに姫君まで連れてくる。結構困っているのだが?」
「じゃあ成仏すればいいじゃない」
「魔女、またあなたか。私がどのくらいここにいると思っている?成仏の仕方などとうに忘れたわ。貴女と違い私は幽霊だから現世の人間と話すのは疲れるのだ。ただ森の中で静かに休むことが唯一の安息なのだ」
「分かりました、王と相談のうえここを禁断の区域としましょう」
「うむ、頼む」
幽霊はゾフィーに頷き、魔女を見る。
「……貴方はもしや魔女ロヴェリナと言うのか?」
「そうよ?知っているの?」
「知っている、私の生きていた時代は貴女より百年後だから。まさかこの時代で会えるとは思わなかったな」
「ふふふっ、最初に記述書を見つけた人はあなたが亡くなってから五十年後位に生まれた人よ?王家の魔法使いでね、でも古代文字の解読が今よりずっと難しかったから真実を見つける前に命が潰えてしまったの。記述書を見つけた人が亡くなると本は勝手にあるべき場所へ戻るようになっているから」
「知るべき人だけが知るようになっているわけですね」
「そういうことよ」
「そうまでして見届けたいモノがあるのか。魔女と言うのは恐ろしいな、後世にまで責務を負うとは」
「それだけの事をしたのだからその結末も見届けなければ終われないのよ。何も知らない子孫に教えておくことだけはしないといけないの」
「そうか、終末の魔女という悪評の魔女にしては優しいのだな。その力を持って世界を滅ぼしたと歴史にはあるが真実ではないのかな?」
「いいえ、それは真実よ」
「……そうか。その魔女の遺産となると、ただではすまないな。それにあの男…」
「何も無ければそれでいいのよ。私も消えるし」
「知らねばならぬ者が知らなくていいのか?」
「必要がないから誰も何も言わないの。それで済むならそれに越したことはないわ」
「知らないという事が恐ろしい事もあるが」
「その時が来たら…また考えるわ」
魔女は呟く。
魔女が警告する事をそのままゾフィーに教えてくれれば話は簡単なのだがそうはいかないらしい。
真実は記述書の中にある。
ティア姫の研究を引きつげれば見つけることが出来そうだがそうはいかなそうだ。
「……ロヴェリナどの…‥」
「まあゾフィー、自信なさそう。でもいいのよ、分からないなら分からないままでも。これは負の遺産、知ってもいい事はないから」
実際これを見つけても本当に解読した者はいないという。
ではなぜ存在するのか?それは知ってほしいという魔女の願いにほかならない。
「……が、頑張ります…」
「まあ、頑張って?」
ロヴェリナがにこにこ笑う。
そしてこの日記述書はティア姫から取り上げたルウドの手からゾフィーへと渡った。
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