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第十五話 兄の条件
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しおりを挟む「ああ、自由って何て素晴らしいのかしら!折角自由になったのだから街で何か面白い事がしたいわ。何かある?ロレイアの騎士さん」
ロレイアの騎士二人は戸惑い、はしゃぐ姫を見る。
「いやあの、早く王城へ向かわないと。歩きだともっと時間がかかるのですよ?」
「そうです、皇子も待っていますよ?早く行きましょうよ?」
「まあ何を言うの。今出立したらあっさり騎士隊に追いつかれて捕まるでしょう?私達は歩きで行くのよ?彼らには先に行ってもらわなきゃゆっくり旅が出来ないでしょう?
ほとぼりが冷めるまで雲隠れして、護衛隊と捜索隊が街を出たのを確認してから旅立つべきよ?しばらくはここに逗留していましょう」
「………まあいい案だが…」
二人は困ったように顔を見合わせる。
レグラスもリルガも護衛隊と合流したかった。脱走と言っても所詮姫様の浅知恵、黙っていれば早々に護衛隊に見つかるものと踏んでいた。
これではますます城に着くまでに時間がかかる。
「せっかく街に来たのだもの。ちょっと外へ出てみたいわ。宿の主人の話では護衛隊は予定通り街を離れたそうだから少しは見つかる確率が低くなるわ。捜索隊はまだうろついているかも知れないけど夜になったら早々捜し回れないわよ?」
「……夜遊びをするおつもりで……?」
「夜遊び!わあ私初めてよ?どんな遊びをするのかしら?二人は知っているのでしょう?連れて行ってよ」
「…ひっ、姫様……」
キラキラと目を輝かせて言う姫に二人は困惑する。
若い二人の遊び場などお姫さまが入れるような場所ではない。
「ティア様、欲しいものがあれば何でも取り寄せますから部屋で大人しくしていましょうよ?その方が見つかる可能性は低いですよ?」
「ええ?せっかく自由になったのだから少しは遊びたいわ」
「いえしかし、外は危険なのですよ?姫様に何かあったら我々間違いなく首が飛びます」
「貴方達護衛じゃない。何の為の護衛よ?ちょっとの外出も許されない位頼りない訳あなた方?」
「そう言うことでは…」
二人の騎士は何だか笑えてきた。噂のお姫様は随分と冒険好きらしい。
「―――――よしわかった。行こう」
「レ、レグラスどの!」
「お姫様でも行ける、安全な遊び場がある。近場だし大丈夫だ」
「ほ、本当に?」
「安全面においては確かだ。結構知り合いもいるし。お姫さまだって遊びたいものな。俺らと違ってこんな時でもない限り自由はないだろうし」
「せっかく街に来たのに何も見ないのは確かにもったいないし可哀そうな気もするな。まあいいよ。私も付き合うよ。姫さまだって息抜きが必要だろう」
「リルガさん…」
「やったあ!初めての夜遊び!どんなとこへ行くのかしら?うちの騎士達が言ってる大人の遊び場と言う所かしら?楽しみだわ」
「……‥」
ジルが困っている前で姫が素直に喜んでいた。
一日捜索しても結局見つからず、夜になってしまった。
「馬車の旅で疲れきっているのにすぐに街を出ようなんて思う訳がない。護衛隊が街を出るのを確認してから動き出すはず。この街の何処かに潜伏していると考えるのが常とうですが」
「一通り旅宿は調べたがそれらしいものが見られませんねえ。騎士三人と姫が泊まればそれなりに目立つでしょうに」
「変装しているか、口止めさせているか、潜伏先が宿ではないか、どちらにしろ動きだしてくれないとやはり見つけにくいかもしれません」
「レグラスとリルガは顔が広いから。泊めてくれるところは手広くあるようで。やはり潜伏先を捜すより動き出すのを待つしかないか。街警備には既に手配がすんでいるから街門を出ればすぐに分かります」
「助かります、しかし街で、姫が大人しく潜伏しているとも考えづらいのですが。この機を逃さず街に繰り出すはずです」
「幾ら街に詳しいあの二人でも、他国の姫様をおかしな場所へは連れ込まないとは思うが……。もう夜だし」
「比較的安全が保障される場所で、姫も楽しめそうなお二人が知っている場所とは?」
「……分かった。中りを付けて行ってみよう」
夜、姫様とお着き一行は街へ出た。
街は夜だというのに人通りが多い。
ロレイアの騎士達に連れられて行きついた場所はやたら煌びやかな建物の中だった。
建物の中も広く綺麗で、着飾った綺麗な女性が一杯居て、それだけで華やかな場所だ。
「レグラスどの!ここはっ…!何考えているんですか、駄目ですよこんなとこ!」
ジルが慌ててレグラスに怒っている。リルガは知り合いの女性と話している。
「ティア様っ、ここは駄目です、出ましょう?」
「ええ?何でよ?いいじゃない別に。何だか楽しそう」
「そうそう、楽しいところだよ、何より安全だし」
「安全?どこが安全ですか!姫に何かあったら私隊長に顔向け出来ないじゃないですか!」
「ここは警備も厳重、不審なモノは入れない高級な宿だよ。ここには教養高い女達が沢山いるし、姫だって男に囲まれているより女達のいるところの方が安心して休めるだろう?
女性には女性にしか分からない事もあるし。リルガが今交渉してる」
「……‥まあある意味安全ですが」
「先のぼろ宿よりはずっと安全だし、ここなら警備隊に見つかりにくい。まさかこんな所に隠れているなんて普通思わないだろ?」
「まあそうですが……しかし……」
ジルが一人で悩んでいるうちに、リルガが交渉を終えて女性と共にティアの所に来た。
髪に花を飾り、赤を基調とした派手な着物を着た女性はにこにこと笑って一行を部屋へ案内する。
「事情は分かりました。長旅はお疲れでしょう。どうぞごゆるりとしていらっしゃいませ。何かお困りの際にはこの私、ユキにお申し付けください」
「有難うユキさん。で、ここは何の宿なの?遊びに来たのに、ただの宿ではないでしょう?」
「まあ…」
ユキがほほほと笑い、騎士達を見る。ジルは焦って何とか誤魔化そうとする。
「ティア様、どうでもいいじゃありませんかそんな事。お部屋には立派なお風呂が付いておりますよ?さあ長旅の疲れをとっていらして下さい」
「別にお風呂入りに来たわけじゃないわよ、面白くないわね」
「……ここのお料理は並の料亭よりも絶品ですよ?折角だから頂きましょうね」
「何誤魔化してるのよ。私に言えないようなとこへ連れて来たわけ?」
「うっ……ええとその…‥」
「ふふふっ、ここは大人の社交場ですよ、お姫様」
「うちの騎士達が言ってる大人の遊び場と同じね。それの高級な場所ね」
ティアはじろりと騎士達を見る。
「女性とお酒飲んで仲良くする場所でしょう?私が来ても楽しい事なんかあるわけ?まさか私をここにほおり込んで自分達だけ楽しもうって腹かしら?」
「ちちちち違いますっ!」
「誤解だ。夜の遊び場なんてどこもこんなものだよ」
「料理とお酒と商売女。三つそろえば姫にだって十分楽しめますよ。ここは高級宿、何も寝台を共にするだけではないのですから」
レグラスが身も蓋もない事を言い、ジルが目を剥いた。
「…ふうん、まあいいわ」
ティアが大人しく待っているとすぐにもてなしの料理が来た。そしてユキとあと二人の女性がやってきた。
「ようこそいらせられました姫様、こちらはリイラとカレンと申します。よろしくお願いいたしますね」
同じ年頃の二人を見てティアの顔がほころんだ。
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