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第十六話 ロレイアの騎士達
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しおりを挟むそして翌日朝、ティア姫が馬車に揺られてやってきた。
城門前でスティア配下の騎士達が総勢で出迎え、使用人達がマルスの騎士達や侍従達の世話をする。
姫はスティアの執事に案内され、騎士隊長ルウドと共にスティア皇子の部屋へ向かう。
「ティア姫様、ようこそいらっしゃいました。会えてとても嬉しい」
スティア皇子は笑顔で客人達を出迎えた。
ティア姫はにこにこと笑い、皇子の元に来る。
「お久しぶりね、スティア皇子様。私も会えてとても嬉しいわ」
「………?」
ティア姫はとても友好的に美しく微笑み手を差し出す。
妙な上機嫌にスティアは胸騒ぎと危機感を覚えながらも姫の手を取ろうとする。
しかし姫の白い手はスティアの手をかわし、すっと彼の首に巻きついた。
「ひ、ひひひひひ姫…‥?」
姫の指がスティアの首を絞め、きつく食い込む。
「――――――死になさい」
「ティア様っ!」
ルウドが止めにかかるが一向に姫の手がスティアから離れはしない。
「なななな何してるんです!おやめ下さい!」
「邪魔しないでルウド!許せないわこの男、この私を手紙一つで呼びつけて!一体何様のつもりよ!万死に値するわ!死んでおしまい!」
「ううう、ぐ、ぐるし…‥申し訳…‥」
「ティア様!いけません!皇子様ですよ!後で問題になりますよ!国に戻ったらしかられますよっ!」
ティアの手がようやく離れたスティアは涙目でせきこむ。
「ゲホッゴホッ……、ティア姫様っ、ほ、本当に申し訳ないです……、そ、そのなりゆきで…」
「成り行き?成り行きでこの私をこんなとこまで呼び寄せたわけ?ふざけんじゃないわよ!ガタガタの山道も寒い湖沿いの道も馬車での旅は最悪だったんだから!すごくきつかたのよ!そのうえ乱暴な馬にまで乗せられて!全身疲労困憊よっ!」
「ご、ごめんなさい。その、もう辿り着いたのですからこれよりは十分に休息をとられてごゆっくりしていらして下さい」
「大体何の目的で呼んだのよ?迷惑極まりないわ」
「す、すみません、父が、と言うよりうちの家族が、マルスの白薔薇姫にお会いしたいと切望致しまして」
「そんな事の為に?ふざけてんの?私そんなに暇じゃないのよ?」
「その、一応友好を深めたいという目的で…」
「そんなものうちの王も皇子も大臣達もやっているわよ!なのにわざわざ私を指名してくれて!許せないわ!」
「……ひ、姫、そんなに嫌なのに何故ここまで…?」
「兄との約束は破れないのよっ!仕方がなかったのよ!」
「そ、そうですか…‥」
ともあれ荒らぶる姫は使用人に部屋へと案内されていった。
残ったルウドは気の毒なくらいひたすら謝る。
「お、皇子、申し訳ないです。その、色々あって姫の機嫌が最悪になりまして」
「いや、いいんだよ、来てくれただけでもう。とりあえず友人としてからお付き合いしなさいと王に言われて手紙を書いたんだけど。そうでないと忘れられそうだし。
……でも姫様、私が求婚者である事すら忘れていそうだね」
「………」
ルウドはうなだれ、スティアは脱力する。
この所感じていた焦燥感と胸騒ぎの元、ティア姫がとうとう来てしまった。
嬉しいには違いないが、これから起こる城での災厄を思い不安になった。
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