意地悪姫の反乱

相葉サトリ

文字の大きさ
104 / 200
第十六話 ロレイアの騎士達

5

しおりを挟む



 翌朝、ルウドは目覚めるとそこは酒臭い男達の転がる部屋だった。
 昨日の歓迎会で飲み続けてそのまま眠ってしまったらしい。誰かが毛布を掛けてくれたらしくまだ眠っている騎士達にも掛っている。
 ルウドはすっきりしない重い頭を上げてゆっくり立ちあがり外へ出た。
 外はもう陽が昇り、朝の冷気と光の暖かさがルウドを包む。
 特に目的もなかったがルウドは眠気覚ましに散歩することにした。
 お城というものは大体どこの城でも似たような造形なので大体分かる。
 違う所と言えばやはり城門内の森や庭園など。その場所は王家の好みや趣味などが反映されているので興味深い。
 
 当てもなく歩いていると目先に大きな噴水が見えてその方へ進む。
 立派な石造りの三段塔の形の噴水だ。上部から水が吹き出し下部へと流れる。
 下部の水槽の透き通る水の中には底部に書かれた花の絵が見える。
 側に行くと水槽脇に子供が座っていた。十代前半くらいの少年が本を読んでいる。

「おはようございます、いい天気ですね」

「…おはよう。ロレイアは今の時期いつもこんな天気だ。昼前にはまだまだ暑くなる。よそ者だなあんた、何者だ?」

 子供はじろじろとルウドを眺めまわす。

「はじめまして、私マルスの騎士でルウド=ランジールと申します。昨日ここに着いたばかりでして。ちょっと酔い覚ましに散歩を」

「ああ、なるほど。…マルスの姫か、どうでもいいな」

「……その、貴方は……?」

「……ベリル…」

 子供は本を閉じて立ち上がる。

「そろそろ朝食の時間だ。お前も戻ったらどうだ?」

「あ、はい…」

 子供はとっとと去って行った。







 ロレイア第七皇子ベリルは第三王妃マルトの次男として生まれた。そして現在十四歳。
 騎士選定の権利が与えられるのは十五の年から。今はまだ王の与えた騎士達に守られている。
 しかしベリルは王の与えた騎士達を気に入ってはいない。何しろ王が与えただけあってやたら気ぐらい高くて口うるさい。しかも全員が皇子よりもふたまわり以上年上である。
 なのでベリルはもう数年前から選定する騎士の目星を付けていた。来年になったらすぐさま入れ替えをする気だ。
 騎士は兄達の騎士隊からの引き抜きも可能である。有能な騎士は有能な皇子に着きたがる。
 ベリルはまだ子供だがまだ未知の可能性を信じて着く騎士もいる。
 しかしそう考えているのはベリルだけではなかった。

「―――――よう、おはようベリル。いい朝だな」

 同じ年の弟ザカールだ。彼も来年騎士の選定権利を与えられる。

「おはよう、何か用か?」

「そうだよ、早朝運動さ。剣の稽古に付き合え」

 文系タイプのベリルとは真逆の体育会系の彼は何かとその力を誇示したがる。
 投げてよこされた木刀をうっとおしげに見てベリルは断る。

「僕では相手にならないのは今さらだろう。強い兄上達に相手して貰えよ」

「兄上達はお忙しいんだ。だから暇なお前を選んでいるのだろう?大体お前も少しは強くなければいい騎士は付かないぞ?」

「別に腕力で騎士を誘うとか思ってないからいい」

「―――――この!」

 木刀を避けて去ろうとするベリルにザカールが木刀を振り上げる。

「つべこべ言わずに相手をしやがれこの腑抜けが!」

「―――――――っ、何してるんですっ!」

 木刀を拾ってザカールの木刀を止めたのは先程の銀髪の騎士だ。

「やめなさい!危ないでしょう!」

「……誰だ……?」

 目を丸くして彼を見るザカールにベリルが答える。

「客だ。あんたまだいたのか?何してるんだ?」

「いえ道に迷いまして。それより何なのですか?」

「いつもの事だ、気にするな」

「……今日はもういい」

 ザカールは騎士の木刀を奪って逃げるように去って行った。
 客人の騎士にあらぬ所を見られてバツが悪かったのだろうか。

「来た道戻るだけだろう?何で迷うんだ?」

「酔い覚ましにふらふら歩いてたもので」

「仕方のない奴だな。スティア騎士隊の宿舎だろう。送ってやる」

「有難うございます。しかしベリル様をお送りした方が」

「さっきの奴なら今日はもういいと言っていたから今日は来ないだろ」

「……護衛騎士が付いておられないので?」

「城内でそんなモノがつくわけないだろ。お姫様じゃないんだ」

「しかしご自分で身を守れないなら尚更」

「僕はまだ自分の騎士を持っていない。王が与えた騎士なんかに城内護衛なんか頼めない。家族に笑い物にされるからな」

「そんな……」

「あんたの国とは違う。うちは色々難しいんだ。よそ者が親切面して口を挟んでくるな」

「……すいません…」

 歩きながらも後ろから付いてくる銀髪騎士を盗み見る。
 何だろうこの騎士?なんか変だ。
 いつも見ているうちの騎士達とは何かが違う。姿が珍しいとかそういうことではない。
 騎士らしさ?緊張感?誇り高さとか?
 うちの騎士達と照らし合わせて考えて、違いは沢山あるがベリルの感じる違和感のどれとも当てはまらない。
 宿舎の近くまで来てベリルは足を止める。

「宿舎はあそこだ。ではな」

「中へ入られないので?」

「何で皇子がよその騎士の宿舎に入らねばならないんだ?」

「すすすすいません…」

 恐縮する騎士を残してベリルはとっとと踵を返す。
 他国の騎士はやはりおかしかった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

【完結】番のキミが幸せでありさえすれば それでいい

美麗
恋愛
獣人の国 スピノザ 私、エンリケは王弟として生をうけた。 父と母は番であるため、私と兄はもちろん同母兄弟である。 ただし、番を感じることは稀であり 通常は婚約者と婚姻する。 万が一ではあるが、番の命の危険には 番の悲鳴が聞こえるとの そんな 話もあるようだ。

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

契約結婚のススメ

文月 蓮
恋愛
 研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。

起きたら猫に!?~夫の本音がだだ漏れです~

水中 沈
恋愛
(猫になっちゃった!!?) 政務官の夫と大喧嘩した翌朝、目が覚めたら猫になっていたアネット。 パニックになって部屋を飛び出し、行き着いた先は夫、マリウスの執務室だった。 (どうしよう。気まずいわ) 直ぐに立ち去りたいが扉を開けようにも猫の手じゃ無理。 それでも何とか奮闘していると、マリウスがアネット(猫)に気付いてしまう。 「なんでこんなところに猫が」 訝しそうにするマリウスだったが、彼はぽつりと「猫ならいいか」と言って、誰の前でも話さなかった本音を語り始める。 「私は妻を愛しているんだが、どうやったら上手く伝えられるだろうか…」   無口なマリウスの口から次々と漏れるアネットへの愛と真実。 魔法が解けた後、二人の関係は…

処理中です...