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第十六話 ロレイアの騎士達
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しおりを挟む朝食後、騎士隊長二人を伴いティア姫はスティア皇子と城内探検に向かう。
案内役は皇子でフレイ隊長は護衛兼付き添い、ルウドは姫の行動範囲の確認の為。
姫には護衛が着くというが、護衛を捲いて勝手に動く恐れもある為任せきりにはできない。
「さ、姫様、どこかご希望がありますか?」
「そうね、騎士の訓練場はどこかしら?」
スティアの笑みがひきつった。
「……ええと、庭園に行ってみませんか?美しい模様の噴水とかあるのですよ?」
「どうでもいいわ、それより訓練場」
「そんな所へ行って何をするのです?」
「もちろん訓練するのよ?叩きのめしたい奴が居るのよ」
「………」
ルウドは困った顔で前を進む姫を見る。
また誰を標的にしたのだ?まさか他国人?
うちの騎士以外ならそうなるがそれは問題だ。姫の魔の手からかの標的なる人物を守らねばならない。
「付け焼刃でもやらないよりましでしょ。いろいろ考えているけどまずは一発拳をお見舞いしてやりたいわ。全くこんなに早く見えるとは思わなかったから全く準備が出来てないのよ残念だわ」
「ティア様、それはまさか、昨日会ったいとこの事で?」
「そうよ」
「……か、彼が一体何をしたのです?さすがに初対面でちょっと無礼かとは思いましたが……?」
「昨日の話じゃないわよ。あの男はうちの先祖を愚弄するというとんでもない罪を犯したわ」
「そ、それは大罪ではないですか!しかし何故?何時です?」
「それはあの男に聞いてちょうだい。即刻捕えて処刑したいところだけどまず一発ぶん殴って例の本を回収させて訂正させなければ気が済まないわ」
「本、では書物の中にそのような記述があると?それは重大な問題ですね」
「そうよ」
スティア皇子は申し訳ないと項垂れる。
「まさかいとこが。本当に申し訳ありません。このうえはすぐさま詳細を問いたださねば」
「だから待ってよ、さきに一発殴らせてよ。だからその為に訓練所で鍛錬するのよ?」
「……分かりました…」
勇ましい姫に全く逆らえない皇子は姫を訓練所へ案内する。
訓練所はとても広い。さすがは何千もの兵を抱えるロレイアの訓練所だ。
遠くを見渡しても敷地の端も見えない広大な場所で様々な色の兵が自分を磨いている。
「……色?騎士のカラーがバラバラですね?」
隣のフレイ隊長に尋ねると彼は自分のカラーを見せる。
「まあ服とか鎧とか、手拭いとか人それぞれだけどね、スティア騎士隊の色は薄紫。色は皇子が決めてるんだ」
「へえ、どうして薄紫なので?」
「決める時にそういう色の花があって目についたらしい」
「……そう言う決め方をするので…?」
「まあ普通は強そうな色とかイメージするものなのだが、うちの皇子はそうでもないらしい。とはいえ赤、黒、黄色などの色は先に生まれた兄皇子達に取られてしまっていたが」
「へえ……」
見ると確かに赤、黒、黄色の兵もいる。他と比べれば確かに目立つ。あとは緑、青、薄紫。
「一番下の皇子二人のカラーは来年決まる。するとますます訓練場は華やかになるな。ちなみに王の兵は黄金色だ。派手だろう?」
「……そうですね」
遠くで黄金色の鎧を付けた派手な騎士がどこかの兵に訓練を付けている。
派手な彼は大分年老いていそうだが誰より元気で強い。
「……フレイ隊長、あとで私も参加させて貰っても?」
「うん、もちろんいいよ。ここは基本フリーだからね、何時でも好きな時に使うといい」
「有難うございます。うちの隊を引き連れて皆で参加したいな。あの強そうな人、相手してくれますかね?」
「勿論ですよ。カラーは違えどロレイアの騎士です。皆喜んでお相手しますよ」
「よかった」
「訓練だけでなく、ここでは月一度剣技大会など行われます。各皇子の誇りにかけて騎士達が戦うのです。参加をご希望でしたら訓練所の詰所のほうに申込書があるのでどうぞ?」
「そんな、私などがとんでもない……」
「そんなご謙遜なさらず。折角来たのですから楽しんで行って下さい」
「そうします」
二人が訓練する騎士達を眺めながら待っていると、詰所へ行った姫と皇子がようやく戻ってきた。
「聞いてよルウド、拳の鍛錬なら拳闘所へ行けって言われてしまったわ。どこよそれ?」
「ええと、柔術の訓練所ですね。あるのですか?」
フレイとスティアが困ったようにルウドを見る。
「あるわけないでしょう?」
「……そんな、一発殴る位べつに訓練しなくても」
ティア姫がむっと二人を睨み、ルウドに目を向ける。
「じゃあルウドがやってよ?」
「冗談じゃありません。私がやったらただで済むわけないでしょう?大体殴りたいのは姫であって私じゃありません。自分でやりなさい」
「………ルウド…それはちょっと……」
「まあそれはそうね。自分でやらなきゃ収まらないし」
「……姫……」
ロレイアの皇子と騎士が困ったように二人を見ていたが、ルウドの心はすでに訓練所の方向へ向いていた。さらに姫も不穏な事をぶつぶつ呟いていた。
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