意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十七話 伝記作家フレデリック=ネオ

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 その頃ルウドはベリル皇子の部屋にいた。
 姫の捜し物の話をしたらその手の本は部屋に沢山あるというので見せて貰う事にした。
 ティア姫とはまた別の目的でルウドも本を捜している。

【魔女ロヴェリナの物語】その先に続く物語を。
 彼女はとても知りたいだろうと思うから。

 皇子の部屋の書庫には様々なジャンルの本が溢れていた。

「魔女ロヴェリナの話はフレデリックの本が出てから興味を持ったんだ。彼に話を聞いたり、それ関係の本を読んだり、彼の話は面白いから。研究目的の固い石も興味深い」

 幻想か真実か。それを知ろうとする者もいるがただ楽しみたいものもいる。
 ともあれ名前をまだ知られているという事は忘れ去られるよりは嬉しい事かも知れない。

 ルウドは書籍を幾つか選んで調べ始める。
 皇子がどこかへ出て行ってしまったので、一人で本を読んでいると暫くして声がした。

「勤勉ね、彼。幅広く勉強しているわ。他国の歴史書もこんなに」

「ロヴェリナ様、いい本見つけましたか?他国の歴史書よりあなたに関係ある本ですよ?」

「そんな、捜さなくてもいいのに」

「何言っているんです、こんなに沢山本があって皆が捜しているのだから有る筈です。貴女が諦めてどうするのです?」

「分かったわよ。新時代の歴史書ね。捜してみるわ」

 ロヴェリナは消えた。ティア姫のいる図書室だろう。

「……新時代……」

 荒れた国が滅び、新しい王が立ち、世界を動かす何かが消え失せ、それのない新しい世界が始まる。
 戦を起こす種が消え、平和への道を開く王が立つ時代。
 戦が完全に収まるのはその王が立ってから百年先にもなるが、その時代こそが新時代と言える。








 ベリル皇子がフレイ隊長を伴って戻ってきた。

「やあ、君まで勉強中かい?姫様と言い、勤勉だねえ」

「フレイさん、捜し物が見つかりそうなら捜しておきたいので」

「お姫様と同じものを?」

「いいえ、少し違うものです」

 フレイ隊長はテーブルに数冊ある本の一冊をとり、ペラペラめくる。

「古代の歴史書だね、乱世の頃の」

「この時代は大国の英雄の名は幾らでも出てくるのですが、人知れず滅びた国の人の名は出てこない。それでも何処かにあるはずなのですが」

「どんな本を捜しているんだ?」

「時代の変わり目の頃の歴史書です。魔女が消えた時代の」

「へえ……難しそうだ」

 フレイは本を閉じてテーブルに置き、ルウドを見る。

「ところでルウド隊長、次の剣技大会に出てみないか?」

「…なんです突然?」

「だって君、あれだけあちこちで剣の腕前を披露しておいて周りがほっておく訳ないだろう。騎士達が勝負したいと言っているし、私もまだ君の腕前を見ていない。ぜひ参加してくれたまえ」

「…しかし、剣の腕を披露しに来たわけでは」

「頭が固いなあ、折角来たのだから楽しまないといけないよ。君の部下達も参加すると言っている」

「それはいい訓練になります。私も参加したいですがその場合、訓練どころか負ける訳に行かなくなります。国の威信も背負っていますから」

「気がるに遊ぶというわけにもいかないか。しかしうちも各騎士の体面や皇子の威信もかかっている。立場は同じ。そもそもやるなら手加減なんかされては困る。双方背負う者があった方が面白い戦いが出来る。そう思わないか?」

「……フレイさん、厳しいですね」

「ルウド隊長はもっと騎士として誇り高くあるべきだ。国を背負っているなら尚更の事、堂々としなくてはいけない」

「…そうですね。堂々と戦わなければなりませんね。勝ち逃げは相手にも傷を付ける。分かりました、剣技大会に参加します」

「良かった。参加届は出しておくよ。私も勿論参加する。組み合わせでどうなるか分からないが対戦できるといいねえ」

「……」

「いつもの大会は大体上位勝者が決まっていてマンネリだったんだけど他国の兵が加われば変化が出る。面白くなりそうだ」

 フレイ隊長は嬉しそうに笑って部屋を後にした。

「剣技大会か。確かに面白くなりそうだ」

 黙って様子を見ていたベリル皇子がぼそりと呟いた。




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