意地悪姫の反乱

相葉サトリ

文字の大きさ
111 / 200
第十七話 伝記作家フレデリック=ネオ

5

しおりを挟む

 ルウドは農場で果物を御馳走になってから、ベリルと共に訓練場へ戻った。
 するとルウドの部下二人が手をふって呼んでいた。

「……なんだ?」

「ルウド隊長おおおおおー、大変です―――ぅ」

「何がだ」

 ルウドは部下の側に近づいた。するとどこからかわらわらとカラーの騎士達が現れた。

「済みません隊長、私達人質にされてしまいましたああああっ!」

 カラーの騎士達がルウドの部下二人をガッチリ捕まえている。

「この二人の命が欲しければ言う事を聞け!」

「……別に……」

「別にって何ですかああああっ!隊長おおおおおおおっ!もっと深刻になって下さいよおおおおおっ!」

「お前たちこそもっと深刻になれ。緊張感がなさすぎる。そんな態度では連中とつるんで協力していると取られても仕方ないぞ?」

「そ、そそそそそんな…!」

「何だ、図星だったか」

「たたたたたた隊長!そこはオブラートに包んでください!相手の立場も考えて!」

「何で協力しているんだ?私は何も聞きたくないからお前達には自分で処理して貰いたいんだが」

「買収されたんですよおおおっ!泣きつかれたんですよおっ!頼まれたら断れないじゃないですかあああっ!」

「何だ、それじゃ仕方ないな」

 青と緑の騎士達が肩を落とす。
 マルスは隊長も隊員も呑気者だ。見ていたベリルが呆れる。

「それで、何だ?」

 ルウドが厭そうに彼らを見ると騎士達は気を取り直して言う。

「勝負しろ!今回は一対一だ。うちの隊長が相手をする」

「……そうか、分かった」

 彼らが指示した方へ行くと青と緑の隊長二人が待っていた。

「やあ、マルスの騎士どの、すまないねわざわざ」

「…いいえ、はじめまして。ルウド=ランジールと申します」

「私はカリフ皇子の緑の騎士隊長イリーブという」

「私はフルード皇子の青騎士隊長ラウルだ」

 三人は握手を交わす。騎士隊長の二人とも筋肉質の体がでかくて見るからに強そうな人たちだ。
 ルウドは何だか浮き浮きと楽しくなった。

「ルウド隊長には何やらうちの部下達が世話になったようで。いやあすまないね、理不尽な喧嘩を吹っ掛けられたのだろう?モノともされなかったみたいだが」

「お気づかいなく、訓練の一環として気にしていませんから」

「そうかい?それは良かった。しかしうちとしてはね、色々内情があってこのままにはしておけないのだよ、その、体面的にね?」

「分かります、大変ですよね、皇子様配下の騎士と言うのはほんとに」

「…うん、分かってくれて嬉しいよ。そう言うわけで、時間取らせて悪いけど勝負してね?」

「はい、喜んで!」

 ルウドは一対一の勝負を喜んで受け、二人との対戦を心行くまで楽しんだ。






 ルアン皇子の部屋に負け犬騎士達がさらに増えた。汗臭い黄色、青、緑の騎士たちで最早満員御礼である。

「……お前達、もういい加減にしてくれ」

 そうはいってもルアン皇子とてこのままにはできない。

「相手を負かすどころか随分楽しまれてしまったよ」

「あの騎士強いよ、黒騎士レベルじゃ私達が敵う訳がない」

 青と緑の隊長がなんだか嬉しそうに話している。負けて何を喜んでいるのか分からないが情けないことこの上ない。

「……もうどうしていいか分からないよ…」

 このままでは収まりのつかないザカールも途方に暮れていた。

「全くどうしようもないな」

 呆れた口調でベリル皇子が入ってきた。

「ベリル!何しに来やがった、呼んでないぞ!」

「いい加減他国の騎士に恥をさらすのはやめろといいに来たんだよ。ばか丸出しでこっちが恥ずかしくなる」

「なんだと!お前っ!」

 ザカールは怒ったが、騎士達は全員黙った。

「むこうは友好目的で来てるのに、何だお前らは。その辺のチンピラみたいな振る舞いばかりして恥ずかしくないのか?強さを競いたいならもっと正々堂々とやれよ。彼らは別に頼まれれば拒まないだろ」

 確かに頼まれれば拒まない。なのにわざわざ卑怯な手段を用いればこちらの品位が落ちるばかりだ。

「とはいえこのままにしておけはしない。正々堂々と戦うならもう手段は限られるな。騎士の体面を取り戻すために公で戦うしかない」

「剣技大会ですね」

「ルアン、しかし彼は出る気はなさそうだぞ?見学すると言っていた」

「それは困るな、何としても出て貰わないと。……仕方ないな、スティアに進言するか」

 ルアンはスティアが苦手だった。あの捕え所がない皇子、だがやむを得ない。








 マルスの騎士ルウド=ランジールの噂はすでに城内全てに浸透していた。
 青と緑と黄色がやられたと噂になっている。

「ルウド隊長、ちょっと楽しみ過ぎじゃないですか?」

「さあ?経緯が分からないし」

 薄紫の宿舎でスティアの騎士隊と隊長フレイが食事を挟んで談義中である。
 客人マルスの騎士も何人かいる。

「……ルウド隊長、まさか何か問題を起してるのでは?」

「まさか、隊長に限って…。うちの隊長が強いって噂はまあ強いから有りだろう?」

「いやしかし、強いってだけでこんなに噂になるものかな?」

 フレイ隊長が苦笑する。

「いや君たち、問題はそこじゃないよ。青と緑と黄色がやられたってことだね。他のカラーの騎士達の目もあるし。体面がねえ?」

 マルスの騎士達は困惑する。

「もしかしてほっておいたのがまずかったのかも?」

「でもあの人ずっとベリル皇子と一緒だったし」

「今どこにいるんだ?」

「分かりません」

「……」

 フレイ隊長は考える。
 ここまで噂になってしまったらもうこのままでは済まされないだろう。
 青、黄、緑以外の騎士達には笑いごとだろうが、皇子達には笑いごとでもないし騎士隊長達にもその火の粉が降りかかる。
 黄色はともかく青、緑の隊長が負けたとあればその上が黙って笑って見ている訳にはいかない。
 順番から言って次は薄紫のここになるが、ルウド隊長はうちの客人である。

「フレイ、居るかな?」

 考え込んでいるとスティア皇子がやってきた。図書室で姫の手伝いをしていたはずだ。

「どうされました?」

「うん、それが。ルウド隊長は?」

「居りませんよ、おそらくベリル皇子の所では?随分仲良くなっているようで」

「そうなんだ。……いやなんか噂でね。ルアンから苦情が入ってね?」

「うわあああああ!申し訳ありません皇子!うちの隊長があああっ!」

 マルスの騎士達だ。

「いやいいんだよ?ルウドさんも楽しんでくれれば。だけどこのままでは済まされないと言ううちの騎士達がね、次の剣技大会に出るようにと言ってる」

「なるほど、正々堂々と倒したいわけですね。私も興味あるなあ」

「うちの隊では基本強制はしないから。ルウドさんが嫌だと言ったら強制はできないよ」

「いやしかしロレイアの人達にご迷惑を掛けてしまって。ここはしっかり始末をつけて貰わなければ。皆で参加すると言えば隊長も断らないでしょう」

「そうだな、皆で参加するなら彼もするだろう、よし言知をとって来よう」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた

月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。

崖っぷち令嬢の生き残り術

甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」 主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。 その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。 ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。 知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。 清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!? 困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

初めての愛をやり直そう

朝陽ゆりね
恋愛
高校生の時に恋・キス・初体験をした二人。だが卒業と共に疎遠になってしまう。 十年後、二人は再会するのだが。

処理中です...