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第十七話 伝記作家フレデリック=ネオ
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しおりを挟むルウドは農場で果物を御馳走になってから、ベリルと共に訓練場へ戻った。
するとルウドの部下二人が手をふって呼んでいた。
「……なんだ?」
「ルウド隊長おおおおおー、大変です―――ぅ」
「何がだ」
ルウドは部下の側に近づいた。するとどこからかわらわらとカラーの騎士達が現れた。
「済みません隊長、私達人質にされてしまいましたああああっ!」
カラーの騎士達がルウドの部下二人をガッチリ捕まえている。
「この二人の命が欲しければ言う事を聞け!」
「……別に……」
「別にって何ですかああああっ!隊長おおおおおおおっ!もっと深刻になって下さいよおおおおおっ!」
「お前たちこそもっと深刻になれ。緊張感がなさすぎる。そんな態度では連中とつるんで協力していると取られても仕方ないぞ?」
「そ、そそそそそんな…!」
「何だ、図星だったか」
「たたたたたた隊長!そこはオブラートに包んでください!相手の立場も考えて!」
「何で協力しているんだ?私は何も聞きたくないからお前達には自分で処理して貰いたいんだが」
「買収されたんですよおおおっ!泣きつかれたんですよおっ!頼まれたら断れないじゃないですかあああっ!」
「何だ、それじゃ仕方ないな」
青と緑の騎士達が肩を落とす。
マルスは隊長も隊員も呑気者だ。見ていたベリルが呆れる。
「それで、何だ?」
ルウドが厭そうに彼らを見ると騎士達は気を取り直して言う。
「勝負しろ!今回は一対一だ。うちの隊長が相手をする」
「……そうか、分かった」
彼らが指示した方へ行くと青と緑の隊長二人が待っていた。
「やあ、マルスの騎士どの、すまないねわざわざ」
「…いいえ、はじめまして。ルウド=ランジールと申します」
「私はカリフ皇子の緑の騎士隊長イリーブという」
「私はフルード皇子の青騎士隊長ラウルだ」
三人は握手を交わす。騎士隊長の二人とも筋肉質の体がでかくて見るからに強そうな人たちだ。
ルウドは何だか浮き浮きと楽しくなった。
「ルウド隊長には何やらうちの部下達が世話になったようで。いやあすまないね、理不尽な喧嘩を吹っ掛けられたのだろう?モノともされなかったみたいだが」
「お気づかいなく、訓練の一環として気にしていませんから」
「そうかい?それは良かった。しかしうちとしてはね、色々内情があってこのままにはしておけないのだよ、その、体面的にね?」
「分かります、大変ですよね、皇子様配下の騎士と言うのはほんとに」
「…うん、分かってくれて嬉しいよ。そう言うわけで、時間取らせて悪いけど勝負してね?」
「はい、喜んで!」
ルウドは一対一の勝負を喜んで受け、二人との対戦を心行くまで楽しんだ。
ルアン皇子の部屋に負け犬騎士達がさらに増えた。汗臭い黄色、青、緑の騎士たちで最早満員御礼である。
「……お前達、もういい加減にしてくれ」
そうはいってもルアン皇子とてこのままにはできない。
「相手を負かすどころか随分楽しまれてしまったよ」
「あの騎士強いよ、黒騎士レベルじゃ私達が敵う訳がない」
青と緑の隊長がなんだか嬉しそうに話している。負けて何を喜んでいるのか分からないが情けないことこの上ない。
「……もうどうしていいか分からないよ…」
このままでは収まりのつかないザカールも途方に暮れていた。
「全くどうしようもないな」
呆れた口調でベリル皇子が入ってきた。
「ベリル!何しに来やがった、呼んでないぞ!」
「いい加減他国の騎士に恥をさらすのはやめろといいに来たんだよ。ばか丸出しでこっちが恥ずかしくなる」
「なんだと!お前っ!」
ザカールは怒ったが、騎士達は全員黙った。
「むこうは友好目的で来てるのに、何だお前らは。その辺のチンピラみたいな振る舞いばかりして恥ずかしくないのか?強さを競いたいならもっと正々堂々とやれよ。彼らは別に頼まれれば拒まないだろ」
確かに頼まれれば拒まない。なのにわざわざ卑怯な手段を用いればこちらの品位が落ちるばかりだ。
「とはいえこのままにしておけはしない。正々堂々と戦うならもう手段は限られるな。騎士の体面を取り戻すために公で戦うしかない」
「剣技大会ですね」
「ルアン、しかし彼は出る気はなさそうだぞ?見学すると言っていた」
「それは困るな、何としても出て貰わないと。……仕方ないな、スティアに進言するか」
ルアンはスティアが苦手だった。あの捕え所がない皇子、だがやむを得ない。
マルスの騎士ルウド=ランジールの噂はすでに城内全てに浸透していた。
青と緑と黄色がやられたと噂になっている。
「ルウド隊長、ちょっと楽しみ過ぎじゃないですか?」
「さあ?経緯が分からないし」
薄紫の宿舎でスティアの騎士隊と隊長フレイが食事を挟んで談義中である。
客人マルスの騎士も何人かいる。
「……ルウド隊長、まさか何か問題を起してるのでは?」
「まさか、隊長に限って…。うちの隊長が強いって噂はまあ強いから有りだろう?」
「いやしかし、強いってだけでこんなに噂になるものかな?」
フレイ隊長が苦笑する。
「いや君たち、問題はそこじゃないよ。青と緑と黄色がやられたってことだね。他のカラーの騎士達の目もあるし。体面がねえ?」
マルスの騎士達は困惑する。
「もしかしてほっておいたのがまずかったのかも?」
「でもあの人ずっとベリル皇子と一緒だったし」
「今どこにいるんだ?」
「分かりません」
「……」
フレイ隊長は考える。
ここまで噂になってしまったらもうこのままでは済まされないだろう。
青、黄、緑以外の騎士達には笑いごとだろうが、皇子達には笑いごとでもないし騎士隊長達にもその火の粉が降りかかる。
黄色はともかく青、緑の隊長が負けたとあればその上が黙って笑って見ている訳にはいかない。
順番から言って次は薄紫のここになるが、ルウド隊長はうちの客人である。
「フレイ、居るかな?」
考え込んでいるとスティア皇子がやってきた。図書室で姫の手伝いをしていたはずだ。
「どうされました?」
「うん、それが。ルウド隊長は?」
「居りませんよ、おそらくベリル皇子の所では?随分仲良くなっているようで」
「そうなんだ。……いやなんか噂でね。ルアンから苦情が入ってね?」
「うわあああああ!申し訳ありません皇子!うちの隊長があああっ!」
マルスの騎士達だ。
「いやいいんだよ?ルウドさんも楽しんでくれれば。だけどこのままでは済まされないと言ううちの騎士達がね、次の剣技大会に出るようにと言ってる」
「なるほど、正々堂々と倒したいわけですね。私も興味あるなあ」
「うちの隊では基本強制はしないから。ルウドさんが嫌だと言ったら強制はできないよ」
「いやしかしロレイアの人達にご迷惑を掛けてしまって。ここはしっかり始末をつけて貰わなければ。皆で参加すると言えば隊長も断らないでしょう」
「そうだな、皆で参加するなら彼もするだろう、よし言知をとって来よう」
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