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第十七話 伝記作家フレデリック=ネオ
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しおりを挟むフレデリック=ロレーヌは思わぬ幸運を掴み、ワクワクしていた。
まさかここで魔女の一文を見つけるとは思わなかった。
それもこれも魔女の国から来たというティア姫様のお陰である。
記述書と言い、変わった姫と言い、マルスには色々謎を解くカギが多そうだ。
ぜひかの国へ行って色々調べたい。
「それにしてもこの一文で様々な事が分かりますね。姫様の国の記述書と同じ文がここにあるという事はこの国とも関係があるという事でしょうか?」
「ここの書物はいろんな国からかき集めたものでしょう?どこから来たかなんてわからないわ」
「この作者ルノアール=レノス氏は旧イルディート公国の方ですよ。今はもうない国ですがその跡地は遺跡として残っているらしいです」
「うちのお祖父様が若いころにあった国ね?たしか内乱の果てに破綻した国だと聞いたわ。あの国の国民はどうなったのかしら?あまりよく知らないけど」
「王家の血筋が途絶えてしまって国を治める者が居なくなり、地権を隣国に取られて民は国を追われて他国にばらばらに移住したと聞きました」
「……可哀そう……」
「姫様が生まれる前の話です。ロレイアよりもさらに南の小国ですが今はもう誰もいない廃墟となっているとか」
「それじゃ結局彼の資料もここにあるだけ。ここにある物以上の物は出てこないって事ね」
「遺跡に見つかっていない隠し部屋でもない限り、そうですねえ」
「……それは直接行って捜してみないと分からないわよ?行った事あるの?」
「それはないですが、地権移譲の折ロレイアの者達が散々調べ回ったそうですからもうおいそれとは出てこないかと」
「そうなの…」
がっかりしている姫を見てフレデリックは明るく言う。
「この国の書物を捜しつくしたら、次にはマルスの書物を調べても宜しいでしょうか?
どうやらかの魔女と縁のある現存する国と言うのはマルスを置いてなさそうです。
私、いろいろお役に立てますよ?一人で当てもなく捜すよりずっと早く事が片付きそうです」
「……そうね、考えておくわ」
目の前にある山積みの書物を眺めてティア姫は仕方ないというように頷いた。
姫様の承諾を得られただけでも運がいいと内心で喜ぶ。
生涯を掛けて捜し求めるはずの石がこんなに早く少しだけでも近づいた。
命尽き果てても全く近付けなかった学者達が大勢いる事を思えばそれはぎょこうと言えよう。
「それにしても魔女の血を引く子孫と言うのは現存するのでしょうか。もし現存していた場合、かの者が唯一魔女の嘘を知る鍵ともいえますが」
「魔女の血なんて、もう大昔の話だもの。例えいたとしても血なんてほとんど薄れているわ。血族とか言ってもあまり関係ないのじゃない?」
「王族などは特にそう思わない者もおりますよ。利用しようと目論む者もいるかもしれません」
「……嫌だわそんなの。ロヴェリナ様だってきっと悲しむわ。利用される位なら知られない方が幸せよね」
「まあいるという確証など誰も掴んではいないのでしょうから所詮架空の話ですけどね」
かの血族の魔女の直系の特徴は銀髪青眼だという。しかしその昔、そんな特徴を持つ者は幾らでも居たため、誰が本物かなど知る術もなかったらしい。
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