意地悪姫の反乱

相葉サトリ

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第十八話 意地悪姫と他人事姫

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 ある日の暖かな午後、ロレイア第一王妃サラは悩んでいた。
 先日やってきた隣国のお客人ティア姫についてである。
 マルスの第三王女、白薔薇姫と呼ばれる姫はただ清楚可憐と言うだけでなく賢そうで行動力もある。

 全く覇気もなく貪欲さもないカラカラの皇子スティアにあのような強い姫が付けば鬼に金棒の如く彼は才智を発揮し始めるに違いない。
 スティア皇子にはあの姫が必要だ。

 サラ王妃は初日から一目見てそう思った。
 もともとこの話はスティア自身から始まった話である。この城に彼女を呼び込んだからには必ずこの城で縁談の話を纏めたい。
 しかしマルスは相手を自ら選ぶ国、姫の気持ちがなければこの話は流れてしまう。

 王妃の気ははやったがとにかく当人達の問題なので数日様子を見る事にした。こっそり侍女に見張らせて報告などもさせていた。

 しかしその結果、スティアの不甲斐無さっぷりが日々露見するばかりで王妃は日に日に焦りを募らせていく。

 ―――――このままほっておいたら姫は調べ物だけして帰ってしまう!

 皇子と姫の仲をより深めたいという本来の目的が最早どこぞの空の果てに飛んで消えてしまっていた。

「―――――もう!もう我慢できないわ!あれを温かく見守っているなんて出来ますか!このままでは何もないまま姫が帰ってしまうわ!どうするのよ!どうしたらいいのよ!クライブ!」

 たまたま傍にいた第一皇子に叫ぶと皇子は困ったように母を見た。

「……母上、そうおっしゃられても。当人同士の問題ですし」

「毎日図書室で調べ物!あれをほっておいたらそれで終わりでしょ!」

「………ええと、もしかしたらあれで友好を深めているのかもしれませんし……」

「毎日本を探して積み上げる作業のどこに友好があるの?愛があるのよ!」

「うーん…ええと…、目的を同じくして達成すればそれなりの友好と愛が現れる事も…‥」

「それはいつよ?何時になるのよおおおっ!」

「ええと、まあそれは気長に待つしか…‥」

「待っていたら姫が帰ってしまうでしょお!」

「……まあその時はまた次の機会に……」

「あるものですか!」

「………‥」

 王妃の剣幕にクライブ皇子はそそくさと退散していった。

「全くスティアにも困ったものだわ。自分から姫を見つけに行っておいて。不甲斐無い事!」

 全く姫にアプローチしようとしないスティアにイライラが募るばかりだ。

「…‥もう待てないわ!何とかしなければ。そうよ、もうこうなったら口も手も出さなければ!」

 そして王妃はとある謀略を画策した。







 ギルイッド伯爵家は王家とも縁のある由緒ある貴族である。
 ロレイア王の第一王妃セラがギルイッド伯爵の妻フィンネルの妹であり、ロレイア皇子クライブとスティアと、ギルイッド家の子供達とはいとこという関係になる。

 しかしギルイッド伯爵家には家を継ぐべき男子が生まれず、娘ばかりが三人いる。
 伯爵は娘の誰かに婿を取らせて後を継がせるしかないと考えていた。

 娘達は上から二十歳、十八、十七と全員年頃であり、上の娘には既に婿養子になる婚約者がいる。二番目の娘には王族か高位貴族との縁を持たせたく、様々な社交パーティに出向かせている。
 しかし三番目の娘、名をリリアナと言うが何故か奇異で難儀な性格をしており、パーティへ行く先々で何かと問題を起こし当人は面白かったと反省の色一つ見せず、問題を片付けるのに疲れた伯爵は呆れ果て、もうリリアナを放置していた。

「問題を起こす位ならパーティに参加しなくていい。参加したいならば決して問題を起こすな、大人しくしていろ」

 これだけを注意してあとはもう知らぬふりを決め込んだ。
 この日、その問題娘にセラ王妃から招待状が届いた。

「セラ様が遊びにいらっしゃいって。いまマルスのお姫さまが滞在なさっていらっしゃって年が近いからお話し相手にいいかもって」

「――――――お前がか?他国の姫様を怒らせて友好にひびが入るような事になったらどうするんだ?本当にお前が招待されているのか?」

「本当よ、ぜひ私にって。退屈だったし行ってもいいでしょう?何か面白い事がいっぱいありそう」

「……くれぐれも人様に迷惑をかけては行かんぞ?粛々としているのだぞ?」

「はあい」

 分かっているのかいないのか、この楽観娘を見て伯爵の胃が軋んだ。
 なぜ王妃はよりによってこの娘を選んだのだろうか?二番目の娘なら問題なく姫のお相手が出来るだろうに…。





 数日図書室に籠って調べ物に専念したがあまり成果は上がらなかった。

「……何故なの?こんな大きな図書館なのに。何か、何かあるはず…」

「姫様、少しお休みしませんか?気晴らしに外を散歩でもしませんと疲れてしまいます」

「でも、まだこんなに本が!時間は限られているのに」

「姫様、そもそも一月程度ではすべて調べつくせる量じゃないのですよ?もっとこう、気長に調べて行かないと。うちの図書館くらい何時でも開放していますから」

「スティア、そう簡単にホイホイこの城に来れるものですか!」

「……まあ、それはそうですが」

 とはいえ多少疲れたティア姫は席を立つ。

「そろそろお昼ね、少し早いけどちょっと風に当ろうかしら。庭園を散歩していくのもいいわね、少しなら」

「そうですよ、いきましょう。母上が待っていますよ?」

 この所、昼食時がセラ王妃との交友時間となっていた。他の時間は全て図書室で調べ物の為、王家との交流が余りない。
 時折お昼に皇子達がやってきてご挨拶する程度だ。

 庭園をゆっくり散策してから王妃のいる庭へ行くとクライブ皇子と、見知らぬ女の子がいた。

「いらっしゃいティア姫、今日は紹介したい子が居るの。この子は私の姉の子でギルイッド伯爵の三女リリアナよ」

「はじめましてティア様。リリアナと申します。しばらくここに滞在しますので仲良くして下さいね?リリアナと気軽に呼んでくださいませ」

「…ええ、よろこんで」

「ふふふっ、年も一つ違いだし、いろいろ話も合うと思うの。リリアナは昔からここで遊んでいたから城内に詳しいわ。楽しい所たくさん知ってるから一緒に遊んであげて下さいね?」

「……はい……」

 調べ物で忙しいから嫌だとは言えなかった。



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