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第十八話 意地悪姫と他人事姫
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しおりを挟む「ルウド!熊が居るのに何で倒さないのよ!護衛でしょう?」
「先に姫が倒してしまったではないですか……」
「大体何こそこそ隠れてんのよ、気に入らないわ」
「お邪魔をしてはいけないかと……」
「護衛がそんな事気にしなくていいのよ。何の為の護衛よ、不愉快だわ」
「申し訳ございません……」
作戦があっけなく崩壊したリリアナは大きな熊を見て呆然としている。
まさか姫に熊を倒せるとは思っていなかったろう。
これではスティアの立場も形無しである。
「ええと、スティア様、クライブ様から聞いたのですが剣の腕があるとか?どのくらいの腕前なのでしょう、見てみたいなあ」
ルウドが話を振るとリリアナが飛び付いた。
「そうです!訓練場へ行きましょう!スティア様の剣技をお見せするのです!」
「ええ、私は……まあ一応護身に身に付けてはいるけど強くはないんだよ。向いていないって自分でも思うし」
「スティア様、護身の為なら訓練は必要です!大事の際に体が動かなかったらどうするの?大切な人を守れないわよ!」
「リリアナ、訓練はしているよ、騎士隊に相手して貰ってね」
「たまには訓練場で腕前を披露してよ。ティア様にいいところを見せなきゃ!」
「ええ、困ったなあ…‥」
しかしリリアナに押し切られ、一行は訓練場へ向かう。
訓練場には訓練に励む様々なカラーの騎士達が大勢いた。マルスの騎士達も大勢訓練に励んでいる。
「剣技大会が近いですから暇があれば訓練に励むよう言ってあるのです。もちろん私も暇があればここの強い人達と訓練しています」
「へえ、強い人達そんなに沢山いるの?」
「いますよ、ごろごろと。気を抜いたら全滅で大恥です」
「……‥そう、頑張ってね」
剣技に興味もなさそうなティア姫だがさすがに全滅は嫌そうだ。
「さあスティア様、ティア様に剣技をお見せ下さい!」
「嫌あのね、リリアナ…‥」
リリアナは何故か嬉しそうに皇子を訓練場の中へ押し込む。棒剣をもらってきて皇子に渡す。
「さあ誰かお相手してくれる方を捜さなければ!ルウドさんは?」
「私護衛中ですので…」
「では訓練場の誰かを。あら?お珍しいあそこに居られるのはビビアン様ですね」
「えっ?どこです?リリアナ様?」
ルウドがリリアナの指す方を見回す。
「ほら、あの赤鎧と赤毛の騎士。お一人で鍛錬中のようですわね、お願いしてきましょう」
「うわあああ!やめてリリアナ!最強の騎士に私なんかが敵うわけないだろう!負けて情けないとこ見せるだけだろ!誰の味方なんだい君は!」
「ええ?じゃあ勝てばいいじゃないですか?」
「無茶を言うな!」
「スティア様、最強騎士に負けたからと言って情けないなんて誰も思いませんよ?最初から逃げる方が情けないですよ」
ルウドがにこやかにリリアナの肩を持った。
「ルウド、君はビビアンの剣技を見たいだけだろう!だったらルウドがビビアンの相手をすればいいんだ!」
「ですから私今護衛中です」
「私だって今姫のご案内中なのに、なんでこんな事に…?」
「スティア皇子、貴方がここに来られるなど珍しいな。それとそこに居られるのは噂の銀髪騎士ルウド=ランジール殿だな」
「……ビビアン」
赤騎士ビビアンが来てしまった。
「はじめまして。ルウド=ランジールと申します」
赤騎士は凛々しくルウドに目を向ける。
「うむ、噂を聞いて一度お会いしたいと思っていた。あと手合わせもしてみたいなと」
「今は姫の護衛中ですのでまたいずれ」
「そうか、残念だな……」
赤騎士が仕方なく引き返そうとするとリリアナが呼び止めた。
「ビビアン様、スティア皇子が剣のお相手をして頂きたいそうです!」
「なんと?皇子はいつもフレイ殿としか訓練しないと聞いたが?」
「そそそそうです!いつもフレイが相手で。ビビアンの手を煩わせるような事は」
「私は構わないが。ただし手加減は一切できないが」
「……私今ティア姫様のご案内をしていますので、訓練はまたいずれ」
「そうか、まあいいか、楽しみは剣技大会にとっておこう」
ビビアンは元の位置に去って行った。
リリアナの口を押さえてスティア皇子はほっとする。
「勘弁してくれ。ビビアンは訓練でも容赦ない。私が太刀打ちできるわけないだろう?」
訓練場の柵の外に出て皇子はようやくリリアナを離す。
「何よ意気地がないわね。それじゃ誰と戦うのよ?」
「今訓練しなくていいだろう?ティア姫も興味ないだろうし」
ふと見るとすでに訓練場に興味を無くしたティア姫が訓練場の反対側を向いている。
「姫様…?」
「もう飽きたわ。図書室に戻ってもいいかしら」
「姫様、本の事は忘れると言ったではないですか」
「ルウド、でも他に何かあるの?詰まんない」
「そうだ、牧場にはスティア様ご自慢の美しい馬が居るのですよ?もう一度見に行きませんか?」
「……馬……そうね、乗るのはいやだけど見るだけなら…」
「スティア様、馬を見せていただいても宜しいですか?」
「もちろんです!行きましょう、嬉しいなあ!」
スティアは朗らかに姫を誘導する。ティア姫は大人しくスティアについて行く。
ルウドはそっと息を吐き、二人について行く。
隣を歩くリリアナは不満そうにルウドを見る。
「作戦が甘かったのね。私じゃティア様の好みまで把握していないもの。その点ならスティア様の方がよほど知っているはずなのに。なぜもっと利点を表に出さないのかしら?情けない所ばかり見せていたら逆に嫌われちゃうわ」
「そんな事ないですよ。皇子はあれでいいと思いますが。別に特化したところなど見せなくても優しくていい方ですからねえ」
「分かってないわねルウドさん、女の子は強くてカッコいい方が好きなのよ!ただ皇子様ってだけで女性の心は掴めないのよ!甘いのよ」
「そうですか……?」
そう言うものなのだろうか?
ティア姫はともかく一般女性もそう言うモノならちょっと厄介かも知れない。
「リリアナ様もそうお考えですか?」
「当然よ!貧弱な皇子なんて目にも留まるものですか」
「……」
「ほんとに困ったわ。王妃様の言うとおりこのまま国へ帰られたらスティア様のことなんて忘れられてしまうわ。もっとこう、劇的なずっと記憶に残りそうな出来事が起こらないかしら。スティア様の見せ場を作れる最高の舞台が!」
「……剣技大会で優勝したら最高の舞台かと」
「それだわ!もうそれしかないわよ!最高の舞台で優勝を掴み取るのよ!そしたらティア様も皇子様を見直すわ」
「………」
勝ったらの話なのだがリリアナ嬢は全く負けるとは考えていないようである。
牧場の前で馬を見せて嬉しそうに姫と話しているスティア皇子をリリアナが期待の眼差しで眺めていた。
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