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第二十話 勝敗の行方
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しおりを挟む試合が終わってルウドが宿舎へ戻ると、とある部屋でティア姫が待ち構えていた。
部屋の奥の壁に背をむけてマルスの騎士十七人が正座させられている。
「…全くどいつもこいつも、不甲斐無い!さてどう処分してやろうかしら?」
「……」
何だか怖い事を言っている。
「……姫様、みんな頑張ったのですからどうか寛大に」
「ルウド!貴方は勝ったのでしょうもちろん!」
「勝ちました」
ティア姫はルウドに詰め寄る。
「聞いてよルウド!たったの三人!ルウドを入れてたった三人しか残っていないのよ?信じられないわ!」
「…‥へえ…‥」
姫は怒っているがルウドは感心した。全滅覚悟だったので部下が二人も残るのは嬉しい。
「喜んでんじゃないわよ!たった三人で黒騎士隊長倒せるわけ?優勝できるの?」
「それは組み合わせ次第ですねえ。特にマルスの騎士でなくても黒騎士隊長レベルがひとそろいするのですから。運が良ければ赤か薄紫の隊長が倒してくれるかも」
「そんな人任せなこと許さないわ!何としても優勝して!」
「…誠意努力いたします」
「ルウド!事の深刻さが分かっているの?あなたが万が一にも負けたら大切なモノが奪われてしまうのよ!私の唇がどこかの男に奪われてもいいと言うの?」
「……そんな大袈裟な…‥」
「ルウドが負けたらあなたもうマルスへ帰れないわよ?どうするの?」
「……え、そうでしたっけ?」
「ボケてんじゃないわよ!あのヘタレ皇子と賭けた内容でしょう!ルウドが負けたらベリル皇子のモノになるって!」
「……」
「どうするのよ!もう後がないわ!そうよ!もう今晩の内にローリー隊長を抹殺するのよ!貴方達すぐ行きなさい!」
「姫、やめて下さい!返り討ちにされるだけですよ。大体ローリー隊長がいなくても誰かは優勝するのですから!」
姫はいらいらしながら負けた騎士たち一同を睨みつける。
「今日二人もローリーに当たったのにあっさり負けて帰ってくるなんて。何の為の騎士よ?私を守る為にいるのではなかったの?肝心な時に役立たずなんて最低」
騎士達は項垂れる、特にローリー戦に負けた二人はどん底まで撃沈された。
「姫、みんな頑張ったのですから…」
もとはと言えば混乱の種を振りまいたのは姫である。ローリー隊長を倒して優勝せねばならなくなったのは紛れもなく姫のせいである。
「……こうなったら私も考えなければならないわ…」
何だか怖い事を呟いて、姫は部屋から出て行った。
ルウドは壁に沿って正座する騎士達を見回す。
「……それで、スティア皇子はどうなった?」
ビクリと騎士が二人ほど身じろぎした。
「も、申し訳ございません…‥」
「…そうか……」
負けてしまったものは仕方がない。こうなれば明日何とかするしかない。
「みんな良く頑張った。ご苦労だったな。ただの剣技大会だったのに大変な役目を押し付けてしまって済まなかった」
「た、隊長!しかし……」
「姫の件なら何とかするから気にしなくていい。そもそも姫がまいた種だし」
「隊長がロレイアに取られてしまうとか…?」
「ベリル皇子は話せば分かって下さる、大丈夫だ」
騎士達は肩を撫で下ろした。
「しかしスティア皇子は…‥」
「あれは片付けねばならない。姫には見せられん。対策を立てねばならない。勝ち残った二人と言うのは誰だ?」
騎士二人が手を上げた。
「…スティア皇子対策を立てる。みんな協力してくれ」
三日目の王族御前試合は立派な会場で行われる。
会場には王族用席と見物人用席が千席ほど設けられ、会場内には休憩所や食事部屋などが用意されている。
選手待合室も立派なもので軽食やその他必要なモノが用意されている。
さらに会場の外は沢山の露店が並び、お祭り騒ぎだ。
「いいですねえ、こういう雰囲気。やっぱり騎士や皇子が沢山いる所は活気が違う。マルスではこうはいきませんからねえ」
「マルスはお姫様ばかりだからな。こういう大会は開かれないか」
「土地柄ですから仕方ありません」
待合室には選手だけでなく皇子も入る事が出来る。
試合前からベリル皇子が様子を見にやってきた。
「前から思っていたがお前はマルスよりロレイアの方が向いてるんじゃないか?なんかお前の話聞いてるとマルスは窮屈な感じする」
「そんな事はありませんよ?マルスだって楽しい所は沢山あります。窮屈なんて思った事はありません」
「マルス以外を知らないからじゃないのか?うちへ来たらもっと世界の広さを知ることになるぞ?」
「今は考えていません」
「お姫さまが片付けば考えるのか?」
「そうですねえ、片付いてから考えます」
「そうか、じゃあ僕の騎士になる事も選択肢の一つに入れておいてくれ。お姫様は数年待たずに片付くだろうし、僕はそれ位待てる。何ならお前の部下ごと引き取るぞ?」
「ベリル様……」
「ここへ来たらきっと僕だけでなくロレイアの皆がお前を歓迎するぞ。ずっと待っているからな」
「……‥」
「頑張って優勝しろよ」
ベリル皇子は王族席へと去って行った。
ルウドはどう言っていいか分からず困って皇子の背中を見る。
「やあルウド、すごく口説かれてたね。ベリルに相当好かれたな」
「クライブ皇子……」
「で、どうするんだ?うちに来てくれたら嬉しいなあ」
「困ります、うちの姫の耳にでも入ったらますます怒り狂われる」
「……それは怖いね…‥」
周りを見回すと、もう選手は大体集まっていた。
試合に勝ち残った八人と王の騎士二人を混ぜて十人で勝ち抜き戦を開始する。
「皆さん揃いましたか、では番号を引いて下さい」
主催者の持つ箱の中身を選手は順に引いて行く。それで初戦の相手が決まる。
王の騎士二人は三回戦から参加する。勝ち上がった騎士と戦い、勝った方が決勝戦の参加資格を得る。
「今年の王騎士は誰かなあ?」
「えっ?ダンダリア様ではないのですか?」
「彼は年だから出たがらないんだ。年若い騎士に毎年任せてるんだ」
「そうなのですか……」
「そうは言ってもルウドさん、王の騎士だからすごく強いよ?それはもう怪物じみてて」
「そうなのですか」
見た所王の騎士はまだ現れていない。しかしルウドは目の端に赤黒い真っ黒な不吉な物体を見つけてしまった。
――――――あれを一刻も早く片付けたい!
「このような華々しい場所にあのようなおぞましいものを置きたくない!しかも王族の目前に入れるなどとは!すごく嫌だ!」
「……ル、ルウド隊長、あれ一応皇子だから。ちょっとは我慢してね」
「クライブ皇子、いいのですかあれ!王族の目前になど」
「……きっと誰も何も言わなきゃあれが何かなんて誰も分からないから」
「……それはそうですが……」
くじの番号で対戦表が出来上がり大きく張り出された。
ルウドはそれを見た途端冷酷な光を目に宿し、にやりと不敵に笑う。
「……あの、ルウドさん、あんまり、その……」
「もちろん手加減などいたしませんよ、ふふふっ」
クライブ皇子は瞑目した。
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