意地悪姫の反乱

相葉サトリ

文字の大きさ
132 / 200
第二十話 勝敗の行方

3

しおりを挟む

 試合が終わってルウドが宿舎へ戻ると、とある部屋でティア姫が待ち構えていた。
 部屋の奥の壁に背をむけてマルスの騎士十七人が正座させられている。

「…全くどいつもこいつも、不甲斐無い!さてどう処分してやろうかしら?」

「……」

 何だか怖い事を言っている。

「……姫様、みんな頑張ったのですからどうか寛大に」

「ルウド!貴方は勝ったのでしょうもちろん!」

「勝ちました」

 ティア姫はルウドに詰め寄る。

「聞いてよルウド!たったの三人!ルウドを入れてたった三人しか残っていないのよ?信じられないわ!」

「…‥へえ…‥」

 姫は怒っているがルウドは感心した。全滅覚悟だったので部下が二人も残るのは嬉しい。

「喜んでんじゃないわよ!たった三人で黒騎士隊長倒せるわけ?優勝できるの?」

「それは組み合わせ次第ですねえ。特にマルスの騎士でなくても黒騎士隊長レベルがひとそろいするのですから。運が良ければ赤か薄紫の隊長が倒してくれるかも」

「そんな人任せなこと許さないわ!何としても優勝して!」

「…誠意努力いたします」

「ルウド!事の深刻さが分かっているの?あなたが万が一にも負けたら大切なモノが奪われてしまうのよ!私の唇がどこかの男に奪われてもいいと言うの?」

「……そんな大袈裟な…‥」

「ルウドが負けたらあなたもうマルスへ帰れないわよ?どうするの?」

「……え、そうでしたっけ?」

「ボケてんじゃないわよ!あのヘタレ皇子と賭けた内容でしょう!ルウドが負けたらベリル皇子のモノになるって!」

「……」

「どうするのよ!もう後がないわ!そうよ!もう今晩の内にローリー隊長を抹殺するのよ!貴方達すぐ行きなさい!」

「姫、やめて下さい!返り討ちにされるだけですよ。大体ローリー隊長がいなくても誰かは優勝するのですから!」

 姫はいらいらしながら負けた騎士たち一同を睨みつける。

「今日二人もローリーに当たったのにあっさり負けて帰ってくるなんて。何の為の騎士よ?私を守る為にいるのではなかったの?肝心な時に役立たずなんて最低」

 騎士達は項垂れる、特にローリー戦に負けた二人はどん底まで撃沈された。

「姫、みんな頑張ったのですから…」

 もとはと言えば混乱の種を振りまいたのは姫である。ローリー隊長を倒して優勝せねばならなくなったのは紛れもなく姫のせいである。

「……こうなったら私も考えなければならないわ…」

 何だか怖い事を呟いて、姫は部屋から出て行った。
 ルウドは壁に沿って正座する騎士達を見回す。

「……それで、スティア皇子はどうなった?」

 ビクリと騎士が二人ほど身じろぎした。

「も、申し訳ございません…‥」

「…そうか……」

 負けてしまったものは仕方がない。こうなれば明日何とかするしかない。

「みんな良く頑張った。ご苦労だったな。ただの剣技大会だったのに大変な役目を押し付けてしまって済まなかった」

「た、隊長!しかし……」

「姫の件なら何とかするから気にしなくていい。そもそも姫がまいた種だし」

「隊長がロレイアに取られてしまうとか…?」

「ベリル皇子は話せば分かって下さる、大丈夫だ」

 騎士達は肩を撫で下ろした。

「しかしスティア皇子は…‥」

「あれは片付けねばならない。姫には見せられん。対策を立てねばならない。勝ち残った二人と言うのは誰だ?」

 騎士二人が手を上げた。

「…スティア皇子対策を立てる。みんな協力してくれ」







 三日目の王族御前試合は立派な会場で行われる。
 会場には王族用席と見物人用席が千席ほど設けられ、会場内には休憩所や食事部屋などが用意されている。
 選手待合室も立派なもので軽食やその他必要なモノが用意されている。
 さらに会場の外は沢山の露店が並び、お祭り騒ぎだ。

「いいですねえ、こういう雰囲気。やっぱり騎士や皇子が沢山いる所は活気が違う。マルスではこうはいきませんからねえ」

「マルスはお姫様ばかりだからな。こういう大会は開かれないか」

「土地柄ですから仕方ありません」

 待合室には選手だけでなく皇子も入る事が出来る。
 試合前からベリル皇子が様子を見にやってきた。

「前から思っていたがお前はマルスよりロレイアの方が向いてるんじゃないか?なんかお前の話聞いてるとマルスは窮屈な感じする」

「そんな事はありませんよ?マルスだって楽しい所は沢山あります。窮屈なんて思った事はありません」

「マルス以外を知らないからじゃないのか?うちへ来たらもっと世界の広さを知ることになるぞ?」

「今は考えていません」

「お姫さまが片付けば考えるのか?」

「そうですねえ、片付いてから考えます」

「そうか、じゃあ僕の騎士になる事も選択肢の一つに入れておいてくれ。お姫様は数年待たずに片付くだろうし、僕はそれ位待てる。何ならお前の部下ごと引き取るぞ?」

「ベリル様……」

「ここへ来たらきっと僕だけでなくロレイアの皆がお前を歓迎するぞ。ずっと待っているからな」

「……‥」

「頑張って優勝しろよ」

 ベリル皇子は王族席へと去って行った。
 ルウドはどう言っていいか分からず困って皇子の背中を見る。

「やあルウド、すごく口説かれてたね。ベリルに相当好かれたな」

「クライブ皇子……」

「で、どうするんだ?うちに来てくれたら嬉しいなあ」

「困ります、うちの姫の耳にでも入ったらますます怒り狂われる」

「……それは怖いね…‥」

 周りを見回すと、もう選手は大体集まっていた。
 試合に勝ち残った八人と王の騎士二人を混ぜて十人で勝ち抜き戦を開始する。

「皆さん揃いましたか、では番号を引いて下さい」

 主催者の持つ箱の中身を選手は順に引いて行く。それで初戦の相手が決まる。
 王の騎士二人は三回戦から参加する。勝ち上がった騎士と戦い、勝った方が決勝戦の参加資格を得る。

「今年の王騎士は誰かなあ?」

「えっ?ダンダリア様ではないのですか?」

「彼は年だから出たがらないんだ。年若い騎士に毎年任せてるんだ」

「そうなのですか……」

「そうは言ってもルウドさん、王の騎士だからすごく強いよ?それはもう怪物じみてて」

「そうなのですか」

 見た所王の騎士はまだ現れていない。しかしルウドは目の端に赤黒い真っ黒な不吉な物体を見つけてしまった。

 ――――――あれを一刻も早く片付けたい!

「このような華々しい場所にあのようなおぞましいものを置きたくない!しかも王族の目前に入れるなどとは!すごく嫌だ!」

「……ル、ルウド隊長、あれ一応皇子だから。ちょっとは我慢してね」

「クライブ皇子、いいのですかあれ!王族の目前になど」

「……きっと誰も何も言わなきゃあれが何かなんて誰も分からないから」

「……それはそうですが……」

 くじの番号で対戦表が出来上がり大きく張り出された。
 ルウドはそれを見た途端冷酷な光を目に宿し、にやりと不敵に笑う。

「……あの、ルウドさん、あんまり、その……」

「もちろん手加減などいたしませんよ、ふふふっ」

 クライブ皇子は瞑目した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた

月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。

崖っぷち令嬢の生き残り術

甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」 主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。 その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。 ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。 知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。 清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!? 困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

初めての愛をやり直そう

朝陽ゆりね
恋愛
高校生の時に恋・キス・初体験をした二人。だが卒業と共に疎遠になってしまう。 十年後、二人は再会するのだが。

契約結婚のススメ

文月 蓮
恋愛
 研究一筋に生きてきた魔導士のレティシアは、研究を続けるために父に命じられた結婚をしかたなく承諾する。相手は社交界の独身女性憧れの的であるヴィラール侯爵アロイス。だが、アロイスもまた結婚を望んでいなかったことを知り、契約結婚を提案する。互いの思惑が一致して始まった愛のない結婚だったが、王の婚約者の護衛任務を受けることになったレティシアとアロイスの距離は徐々に縮まってきて……。シリアスと見せかけて、コメディです。「ムーンライトノベルズ」にも投稿しています。

処理中です...