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第二十三話 ティア姫の帰還
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しおりを挟む王と王妃に謁見したリリアナは何故か居心地の悪い思いをしていた。
原因が何なのか?さっぱり分からない。
「お父様、お母様、ティアは無事帰りましたわ。そしてお客様を連れてまいりました」
「おおティア、良く戻ったな。皇子とはうまく行ったのか?まあそれはあとで聞くとしよう。それよりもそちらがロレイアからのお客人か」
「はじめまして。ギルイッド伯爵家三女リリアナと申します。しばらくお世話になります」
「おおそうかそうか、リリアナ殿か。よくいらっしゃった。ごゆっくり滞在していってください」
「有難うございます」
「ああ本当に嬉しいですこと。遠方からわざわざ来て下さるなんて!長旅でお疲れでしょう?本日は良くお休みになって、落ち着いたらお話聞かせて下さいね?」
「……はい」
王と王妃から何か意味ありげな視線を感じた。
「ティア、リリアナさんに良くしてあげてね。お部屋はあなたの隣の部屋を用意させたから」
「ええ、勿論」
「……?」
他国のお城に来たのは初めてなので分からないがこういうものなのだろうか?
まるで何かを期待されているような歓迎のされ方をされた気がする。
謁見後に部屋に案内されてメイドさんにお茶を入れて貰い、ひと時ぼんやり寛いでからふと呟く。
「なんか変……分からないけど何か…?」
「…えっ?」
ティア姫は自室に戻った。
メイドのマリーが荷物の整理をしてくれている。マリーが戸惑う様にリリアナを見る。
「何か不手際が?」
「いいえ、そうじゃなくて…。そう、そもそも何で私はここにいるのだったかしら?」
「……ご交遊の為とお聞きしましたが?」
「交遊ならロレイアでティア様と十分遊んだわ。なのになぜここに招待されてしまったのかしら?それも私だけ?スティア皇子ではなくて…?」
「……それはきっとティア様がリリアナ様にも国とご家族を見てほしいと招待されたのでしょう?」
「王族とのお付き合いなんて余程の立場の持った人でないと考えられない。うちは大した貴族でもないし、ロレイアの王家とは親戚ではあるけどマルスにはあまり関係のない事でしょうし。何か確かな目的を持って招待されたのでなければあまりに不自然だわ。
今更来てしまってから考えるのも遅いけど、今落ち着いて冷静に考えるとおかしいわ」
「この国には様々な目的で訪問されるお客様が滞在なさっています。外交目的の大臣とか姫様方目当ての皇子様とか、どなたもきちんとした身元の方々ばかりですが。先日なども第二王女のご友人の貴族様が滞在しておられましたよ」
マリーはにこやかに説明する。
「それほど難しく考える事ではありませんよ。ティア様もあまり考えないでリリアナ様を招待されたのでしょう?」
「そうだったかしら……?」
サラ王妃は何だか嬉しそうだったが父は余りいい顔色ではなかった。なんだかしぶしぶ送り出した感じではあった。
「……そう言えばこの国、皇子様一人にお姫様が三人いらっしゃるのですよね」
「ええ、そうですよ。いま第二皇女が出かけていますが」
「皇子様のお相手は目下捜索中とティア様から聞きました」
「はいそれはもう、少しの手がかりから草の根をかき分けても自国他国に限らず捜しだすというそれはもう難解な作業をティア様自ら先陣を切って必死で行っておりました」
「……すごいですね。見つかったのですか?」
「さあそれは…。見つかるといいのですが」
「………」
「………」
ティア様付き侍女のマリーは手早く仕事を済ませてそそくさと部屋を出て行った。
怪しい、不穏だ。
しかしティア姫が是非にと自分を誘った理由が他に思いつかない。
だがここで姫を問い詰めて本当の事を聞いたとしても、今更国へ帰ることなど不可能、ここにいるしかない。
「…‥まあいいか」
折角来たのだからあまり深く考えずにここの生活を楽しみたい。
パラレウス皇子は特に意味もなく落ち着きなく室内中をうろうろしていた。
皇子の部屋に入ったティア姫はすぐに切れた。
「―――いい加減にしてよ!一体何がしたいのよ!うろついてないでさっさと用件を済ませてきてよ!全く仕事もしないで!しっかりしてよお兄様!」
「…ああ済まないね、ティア」
「ああいらいらする!アリシアお姉さまの気持ちが分かるわ。もう勝手にして!とにかく私はお客様をお連れしたと報告に来ただけだから。もう部屋へ戻るわ、いろいろ仕事を持ち帰っているから忙しいのよ」
「仕事?帰ってきたばかりであまり無理はいけないよティア。……それよりお客様の所へご挨拶に……」
「一人で行きなさい!」
「……」
姫はバンとドアを閉めて部屋を出て行った。
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