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第二十三話 ティア姫の帰還
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しおりを挟むそのころゾフィーは困っていた。
姫が持ち帰ってきた大量の書物。とりあえず空き部屋に入れたがこれをティア姫が調べるのかと思うとあまりいい気がしない。
もしこの中に魔女に連なる情報があればまた面倒になる。
「…折角あれを取り上げたのに何故またこんなに資料を…」
「ゾフィー殿、どうせそんなに貴重な情報はありませんから大丈夫ですよ。むしろ大人しく本を調べていてくれた方が護衛は楽ですし」
「ルウドさん…」
「ただ今帰りました。やっと肩の荷がおりましたのでしばらく二番隊は休みを貰いましたよ。時間が一杯あるなあ、何しようかな」
「お務め御苦労さまです。姫の護衛は大変でしたでしょう?まさか他国で横暴をしたとは思いませんが」
「…いえ、姫はどこへ行っても変わりませんでした」
「……それは大変でしたね」
「ええそれはもう。ところでロヴェリナ様を見ていませんか?」
「見ていませんが?」
「……そうですか、何度呼んでも中々出てきてくれないので」
「何かあったのですか?」
「……すこし、聞きたい事があったのですが答えたくないのか答えられないのか。ある時から出て来てくれなくなってしまったのです。知りたい事を諦めたら出て来てくれるのでしょうか?」
「ルウドさんはどうしたいのです?」
「必要でない事は忘れろと言われました。ですが知ってしまった事は忘れられない、どうしても追及したくなる。それが本来自分が知る筈であったことなら。なのにロヴェリナ様は教えてくれない」
「考え方はルウドさんと同じなのでしょう。危険な事に触らせたくないと」
「私はそんな子供ではないと言うのに。どうして信用されないのか…」
おそらくロヴェリナにとってはティア姫同様危なっかしい人としての認識があるに違いない。
「ゾフィー殿は例の記述書の翻訳は進んでいますか?」
「いいえそれはまだ。姫の協力なしでは簡単には進みませんね。ルウドさんが気になるのですか…?」
「姫には内緒ですが実はロレイアで禁書を見つけてしまって。歴史書ですがその内容に気になる事項が幾つかありまして。だからロヴェリナ様に聞きたいのですが」
「しかしあの方自体が禁書と同列の様なものですから何でも簡単に教えて下さるとは思えません。その情報が必要な時が来れば教えて貰えるのでは?」
「ロレイアでの禁書を教えてくれる時もかなり迷っていました。彼女が話してくれるのを待つよりも自分で探した方がいいかもしれない」
「記述書は古代文字。他で捜すと言っても方法がないでしょう?ロレイアの禁書は読めたのですか…?」
「読めないものがほとんどありました。ですが私が知りたいのは歴史書ですから。歴史の中の誰かの記録はどうやら読めるようなのです。それなら私でも捜せます。
そうだ、時間もあることですしもう一度城内の書庫を調べてみようかな。姫様の書庫はゾフィー殿の魔法があれば入れますし」
「…姫の書庫は本人の許可を取って下さいよ?私責められるのはいやですから」
「分かりました」
ルウドは宿舎へと帰って行った。
そして間もなくロヴェリナが現れた。
「ああ、久しぶりの我が家だわ」
「……ここはあなたの家じゃありませんよ?」
「やあねゾフィーったら。ここは魔法使いの塔。魔法使いのお城よ。この城ごと私の家でもあるんだから」
「そうですか。ルウドさんが捜していましたよ。ルウドさんの方へいったらどうですか?」
「まあ冷たい。折角帰ってきたのに」
「貴方の存在が余り宜しくない事が起こる兆候。私としてはさっさと消えて下さいと言いたいところです。ルウドさんは何を知ったのです?」
「歴史ね、その中に何を見つけたのかは知らないけど、何にしろ答えられない」
「答えられないのなら最初から教えなければいいのに」
「彼に関する手がかりを見つけるなんて思わなかったのよ」
「彼が求めればいつか暴かれるのではないですか?」
「それはそうなったら仕方ないわ。それにルウドなら大丈夫だと思うし。
でもそれはまだ先の可能性の話。重い物を背負わせずに済むならその方がいい」
「あなたが存在する事でそうなる可能性が出ていませんか?いない方が姫もルウドさんも捜し物をする事はなかったのでは?」
「あなたが言ったとおり、私の出現は良くない事が起こる兆候。だけどそれが何なのかはまだ分からない」
「随分長い事彷徨っておられますね」
「そもそもここ、私の国だもの。いいでしょう別に」
「……害がなければ構いませんが」
害は本当に起ってはいないのだろうか?
もしかすると見えないどこかで始まっているのかもしれない。
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